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38 ソートワの町
私は、近づいてきたジュウロウザに『クリーン』の生活魔術を使う。これで、怪しげな汚れが取れた。
「以前から気にはなっていたが、その魔術は何だ?」
「ん?普通の『クリーン』だけど?」
おかしな事を聞かれるな。『クリーン』に違いなんてないだろうに。
「いや、その『クリーン』という魔術を今まで見たことがなかったから」
『クリーン』を見たことがない?リアンもソフィーもばぁちゃんも使っている····いや、私がお風呂に入れないからと言って使い始めたのは最初だ。その後から、母さんが『それ便利!』とか言って村中に広めたのだった。もしかして、私『クリーン』という魔術を作り出したってこと?
「あ、えーっと。汚れを取る魔術かな?」
言われてみれば、ゲームは戦いに必要な攻撃魔術と補助魔術しかなかった。生活に使う魔術は確かに無かった。言われるまで気が付かなかったけど、私って色々やらかしている?
「それで、穴の中はどうなっていました?」
話題を変えるために、穴の状況を聞いてみた。
「ああ、低級な魔物が犇めき合っていたな」
低級!あの大きな手のモノが低級!
「ダンジョンというより、魔物のたまり場という感じだ。階層もなかったしな」
そうか、まだ、階層は出来ていなかったのか。まぁ、スタンピードが起こった後でも10階層までだったから、今の時点じゃ階層も存在しないのだろう。
「あの、ダンジョンコア的な何かありませんでしたか?」
「ダンジョンコア?」
そう言って、ジュウロウザは首を傾げる。ダンジョンの核というべきコアが見える場所にあるとは限らないよね。
そして、ジュウロウザは袂をゴソゴソしだして、私に何かを差し出した。
「この様な物ならあったが?」
丸い球状の水晶玉が半分に割れた物がジュウロウザから差し出された。ダンジョンコアが割れている!!
「そ、それですが····割れていますね」
「割れていると問題なのか?穴から出る時に何処かにぶつかったのか、割れたようだ」
ああ、ダンジョンの外に出したから割れたのか。まぁ、そうだよね。ダンジョンの核だからね。
問題は特にないかな?ダンジョンコアがあれば壊すつもりだったから。
「問題はありません。村に被害が出ないように壊すつもりでしたから。さぁ、日も傾いてきましたから、ソートワの町に行きましょう」
そうして、私達がダンジョンだった穴に背を向けて進みだすと、背後から火柱が上がる。
ビクッとして何があったのか、確認しようとも、ジュウロウザが邪魔で見えない。
「モナ殿が死んだ魔物をそのままにするのはどうかと言っていたから、穴の中に『獄炎』を投下した。これで、燃え尽きるだろう」
「『獄炎』!!」
それは、ジュウロウザの使える魔術の一つで全体攻撃の上に3ターンの間は燃え続けるという、凶悪な技だ。
「次からは『爆炎』ぐらいに留めてください」
そう言うと、ジュウロウザが目を細めニヤリと笑った。そして、私の頭を撫ぜる。
え?なに?何か、また言ってはいけないことでも言ってしまった?
ソートワの町はトーリアの町と同じく田舎の長閑な町だった。こんなところが魔物の大群に襲われれば、対処のしようがないだろう。蹂躙されるしか、選択肢はない。
今は夕刻の時間だ。仕事を終え足早に家に帰る人。仕事終わりに外で一杯飲もうと店に向かう人。その人達が足を止めてある方向を見ている横を通り過ぎる。
そう、森から火柱が上がったことで、人々が何があったのかと騒ぎだしているのだ。
「キトウさん。やっぱり『獄炎』はやりすぎですよね」
「え?いつもこんな感じだが?」
ジュウロウザの普通の基準がおかしかった。いや、ボスクラス級の魔物と戦っていく日々で普通という概念が歪んでしまったのだろう。
ジュウロウザ曰くあと1時間ほどで消えるらしい。それにあの炎は森の木々には燃え広がらず、魔物のみを燃やすということだ。
だからといって、あの禍々しい炎の柱は人々に恐怖心を植え付けると思うけど?
「ここか」
そう言って、人々が騒然となっている中、一軒の宿屋の門の中に馬竜を引いて入っていくジュウロウザ。私も続いて門を潜る。問題の馬竜であるベルーイを預かってくれそうな所がここしかないと町の門番が教えてくれたのだ。
通された部屋は、王都の宿屋と違って、広かった。リビングに簡易的なキッチン、水回りも部屋に備えつけられており、3部屋も寝室があった。
パーティを組んだ長期滞在する冒険者用らしい。
キッチンが付いているなら、自分で料理ができそうだ。食材を拡張収納鞄から取り出し、何の料理を作ろうかと頭を悩ませていると、ジュウロウザから声を掛けられた。
「あのダンジョンは手を出さなかったらどうなる未来があったのだ?」
「以前から気にはなっていたが、その魔術は何だ?」
「ん?普通の『クリーン』だけど?」
おかしな事を聞かれるな。『クリーン』に違いなんてないだろうに。
「いや、その『クリーン』という魔術を今まで見たことがなかったから」
『クリーン』を見たことがない?リアンもソフィーもばぁちゃんも使っている····いや、私がお風呂に入れないからと言って使い始めたのは最初だ。その後から、母さんが『それ便利!』とか言って村中に広めたのだった。もしかして、私『クリーン』という魔術を作り出したってこと?
「あ、えーっと。汚れを取る魔術かな?」
言われてみれば、ゲームは戦いに必要な攻撃魔術と補助魔術しかなかった。生活に使う魔術は確かに無かった。言われるまで気が付かなかったけど、私って色々やらかしている?
「それで、穴の中はどうなっていました?」
話題を変えるために、穴の状況を聞いてみた。
「ああ、低級な魔物が犇めき合っていたな」
低級!あの大きな手のモノが低級!
「ダンジョンというより、魔物のたまり場という感じだ。階層もなかったしな」
そうか、まだ、階層は出来ていなかったのか。まぁ、スタンピードが起こった後でも10階層までだったから、今の時点じゃ階層も存在しないのだろう。
「あの、ダンジョンコア的な何かありませんでしたか?」
「ダンジョンコア?」
そう言って、ジュウロウザは首を傾げる。ダンジョンの核というべきコアが見える場所にあるとは限らないよね。
そして、ジュウロウザは袂をゴソゴソしだして、私に何かを差し出した。
「この様な物ならあったが?」
丸い球状の水晶玉が半分に割れた物がジュウロウザから差し出された。ダンジョンコアが割れている!!
「そ、それですが····割れていますね」
「割れていると問題なのか?穴から出る時に何処かにぶつかったのか、割れたようだ」
ああ、ダンジョンの外に出したから割れたのか。まぁ、そうだよね。ダンジョンの核だからね。
問題は特にないかな?ダンジョンコアがあれば壊すつもりだったから。
「問題はありません。村に被害が出ないように壊すつもりでしたから。さぁ、日も傾いてきましたから、ソートワの町に行きましょう」
そうして、私達がダンジョンだった穴に背を向けて進みだすと、背後から火柱が上がる。
ビクッとして何があったのか、確認しようとも、ジュウロウザが邪魔で見えない。
「モナ殿が死んだ魔物をそのままにするのはどうかと言っていたから、穴の中に『獄炎』を投下した。これで、燃え尽きるだろう」
「『獄炎』!!」
それは、ジュウロウザの使える魔術の一つで全体攻撃の上に3ターンの間は燃え続けるという、凶悪な技だ。
「次からは『爆炎』ぐらいに留めてください」
そう言うと、ジュウロウザが目を細めニヤリと笑った。そして、私の頭を撫ぜる。
え?なに?何か、また言ってはいけないことでも言ってしまった?
ソートワの町はトーリアの町と同じく田舎の長閑な町だった。こんなところが魔物の大群に襲われれば、対処のしようがないだろう。蹂躙されるしか、選択肢はない。
今は夕刻の時間だ。仕事を終え足早に家に帰る人。仕事終わりに外で一杯飲もうと店に向かう人。その人達が足を止めてある方向を見ている横を通り過ぎる。
そう、森から火柱が上がったことで、人々が何があったのかと騒ぎだしているのだ。
「キトウさん。やっぱり『獄炎』はやりすぎですよね」
「え?いつもこんな感じだが?」
ジュウロウザの普通の基準がおかしかった。いや、ボスクラス級の魔物と戦っていく日々で普通という概念が歪んでしまったのだろう。
ジュウロウザ曰くあと1時間ほどで消えるらしい。それにあの炎は森の木々には燃え広がらず、魔物のみを燃やすということだ。
だからといって、あの禍々しい炎の柱は人々に恐怖心を植え付けると思うけど?
「ここか」
そう言って、人々が騒然となっている中、一軒の宿屋の門の中に馬竜を引いて入っていくジュウロウザ。私も続いて門を潜る。問題の馬竜であるベルーイを預かってくれそうな所がここしかないと町の門番が教えてくれたのだ。
通された部屋は、王都の宿屋と違って、広かった。リビングに簡易的なキッチン、水回りも部屋に備えつけられており、3部屋も寝室があった。
パーティを組んだ長期滞在する冒険者用らしい。
キッチンが付いているなら、自分で料理ができそうだ。食材を拡張収納鞄から取り出し、何の料理を作ろうかと頭を悩ませていると、ジュウロウザから声を掛けられた。
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