勇者の幼なじみに転生してしまった〜幼女並みのステータス?!絶対に生き抜いてやる!〜

白雲八鈴

文字の大きさ
49 / 121

49 支柱の陣

しおりを挟む
「大事ないか?」

 気がつけば、背中を支える手があった。
 クッ!コントかってぐらい足が滑った。ジュウロウザがいなかったら絶対に頭を打つコースだった。

「大丈夫」

 そう言って体を起こす。そうだ!雪の日の通勤のように足元に注意を払えばいいだけ。雪国にいたことはなかったけど、大雪の出勤は経験したことはある。····まともに電車が動かなくて、長時間駅で待った記憶しか出てこない。だけど、大丈夫のはず。

 慎重に左足を出すと、今度は足が後ろに滑る!

「モナ殿、怪我をしそうだから抱えて、中に入っていいか?」

 私はまともに歩くことすらできないのか!
 またしても、私はジュウロウザに支えられていた。

「お、お願いします」

 悔しいー!私を抱えたジュウロウザは凍った雪の上をスタスタ歩き、階段も難なく上っていく。その横には同じくカポカポと歩くベルーイ。まともに歩けないのは私だけ!幼児並みのステータスはこんなところまで反映しなくていい。

 階段を上がれば、建物の奥の方は闇に包まれ真っ暗だ。私が持っている魔道ランプでは奥の方まで見ることができない。
 ジュウロウザはそのまま建物の奥に入っていく。ん?何か引っかかる。何かがあったような。

「キトウさん、少し足を止めてもらえますか?」

「どうかしたか?」

 私の様子を伺うように顔を傾け、足を止めてくれた。だけど私は答えず、先が見えない暗闇に目を向ける。
 このまま先に進むと何かがあったのだ。だけど、何かとは思い出せない。ただ、HPが1になってしまったので、全回復したのが良かった、としか思い出せない。

 この暗さが駄目なのだ。何が先にあるかわからないこの暗さが。

 私は周りを見渡す。まだここは建物の入り口近くだ。天井の開いた穴からの光で微かに、周りの風景を確認することができた。外側の柱に何かが描かれている。まとわりついた雪のその下にだ。その下には大理石のような白いなめらかな石が柱として存在しているのが、視えた。

「キトウさん、すみません。少し戻って、外側の柱の近くに行ってもらえますか?」

 ジュウロウザは私がお願いしたとおりに、建物を支える一番外側にある支柱の一つに近寄ってくれた。支柱には青い色で見覚えのある陣が描かれていた。そう、私が今持っている魔道ランプの底に描かれている明かりを灯す陣だ。だけど、核となる魔石の存在が見当たらない。
 青い線は支柱に陣を刻んでいるが、その下にも線が続いている。床だ。白く凍った床に青い線が続いていた。床の線を目で追うと、床には複数の青い線が引かれているのに気がつく。どうやら、一箇所に集まっているようだ。

「ここから3本目の柱のところまでお願いします」

 その支柱は外側の柱の中心にある支柱だった。外側からでは気が付かなかったが、内側から見ると支柱の中ほどに六角形の形状に6つの何かをはめる穴が開いており、六角形のさらに内側には正方形に4つの穴が、一番中心点に一つの穴が開いていた。
 私はその部分に触れようと手を伸ばすが、その手は柱に届かず宙を切る。なぜならジュウロウザが一歩下がったからだ。

 どういう事だという意を込めて視線を向けると。

「モナ殿。素手で触ると手がくっついてしまう」

 はっ!ドライアイス!
 ってことは、外はドライアイス並には冷えているってこと?いや濡れた手だと氷もくっつくな。
 じゃ、これもベルーイの炎で、溶かしてもらうか。

「ベルーイの炎で、表面の凍った雪を溶かしてほしいです」

 私がそう言うと横から『キュキュ』っと鳴き声が聞こえ、青い炎が視界の端をかすめる。

 ん?ベルーイは私の言葉に反応した?

「ありがとう」

 ベルーイにお礼を言うと『キューン』と鳴き声が聞こえた。相変わらず見た目と鳴き声が合わない可愛らしい声だ。

 表面の雪が溶けた柱を見ると、10セルメルcmの厚さの雪の塊の下には私の眼で見た通りの紋様と窪みが刻まれていた。
 ここに動力源を入れればこの陣が起動するはず。

「キトウさん。降ろしてもらえますか?」

 私が持っている動力源は魔石だけど、これが合わなかったら、暗闇の中を進まなければならない。

 魔石が入った袋の中から大きさが合いそうな魔石を窪みの中に収めてみる。コトリとはまった。よし。また一つ、また一つと収めていく。あまり大きすぎない穴でよかった。外側の穴は直径3セルメルcmほどで内側の4つの穴は直径5セルメルcmほど。中央は一番大きく7セルメルcmほどだ。これが、20セルメルcmを超えると流石に手元にはなかった。
 いや、神殿を参る時に必要なら、手に入りやすい大きさにするのは当たり前か。

 うっ。上の方に行くと手が届かない。もう少し低いところに設置すべきじゃないの!

「手伝おう」

 そう言って、ジュウロウザが残りの魔石をはめてくれた。
 すると、青い線が光を発した。魔石をはめた支柱中心に光が広がっていく。全体的に広がった光る線が一瞬目が眩むほどの光を放った。
 眩しすぎて目が開けられない。

 瞼の裏に感じる光が収まったと目を開くと、そこは闇に満ちた神殿ではなく。床も支柱も天井も淡く光と放っていた。そして、その床も支柱も天井もバキッという音とともに一斉にヒビが入る。

 壊れる!そう思った瞬間。建物の全てを覆っていた凍りついた雪が舞い散った。
 建物を構築している光る石に照らされ、淡く消え去る雪がキラキラと輝いてみえる。幻想的だ。

 これが、神殿の本来の姿なのだ。全てが淡く光輝く神殿。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...