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28章 穢れと鬼
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「レベルにも問題なかろう。種族としても他の種族に力負けするものでもあるまい。そして、竜化を幼い頃から教育されると聞いている。何が問題なのか聞きたいものであるな」
イスラの言葉だけを聞けば、カイルが彼らを指導しても問題はないだろう。しかし、それ故に、確執が増すというもの。
「黒髪のお嬢さんの意見も同じようであるが、どうなのかのぅ」
カイルは答えないとふんだのか、イスラは陽子に尋ねた。答えを持つものだからこそ、陽子をわざわざ呼び出したということだろうか。
その陽子と言えば、カイルの背後に身を隠すように屈んでいる。
ハッキリ言ってダンジョンである裏庭では陽子は最強と言っていいはずなのだが、流石にダンジョンをぶち壊した者たちを目の前にして、ダンジョンマスターとして姿を現すことを警戒しているのだろう。
「陽子さんの感知と見ているものが、違うって気味が悪いのだけど」
いや、イスラの存在そのものを警戒しているようだ。
「陽子さん。こいつらは個として認識せずに種族として認識するのが定石だ。あと、何も存在していないように感じるが、生きている以上、周辺の魔素を消費している」
「わんこ君って、シュロス君並に直感型だよね。陽子さんそっちの方は苦手だよ」
なにか失礼な例えをしたが、クロードとしてはそのシュロスが誰か知らないためスルーをする。
「まぁ、陽子さんにもわからないのだけど、番という楔から解き放たれないかぎり無理な話だと思うよ」
「さて、それがわからぬのだが、聖女という役目を持つものを守るのに、争う意味などないであろう?」
「そう割り切れるものではないらしいよ」
世界が決めた番の楔。それは互いを縛り守るものであるが、ときにその楔が邪魔をすることもある。
「そもそも彼らに危機感が足りないのが問題なのだと思うのだよ」
以前言っていたことと同じことを陽子は口にする。危機感がない。それはアリスの予言のことだろう。
「陽子さんなら強くなれるっていうなら、どんな者にだって頭を下げるよ。でも陽子さんにはレベルがないからね。頭を下げて強くなれるわけじゃない」
「レベルがないだって!」
そこに食いついてきたのがクロードだった。
「精霊とかの類はレベルがないのか?」
「陽子さんは精霊じゃない。馬鹿わんこ」
何故か陽子のことを精霊だとクロードは思っているようだ。しかし、地面を自由に行き来できるとなれば、そう思われても仕方がないことなのかもしれない。
「これはおかしなものであるな。そなたは強い。わしなど赤子同然に捻り潰すことぐいらできるであろう?」
「陽子さんがどんな風に見えているのか知らなけど、陽子さんが力を奮える範囲は決まっているからね。そんな陽子さんが彼らを鍛えようとしたけど、領分が違うと一蹴されてしまったんだよね」
陽子はいじけるように屈んだまま地面にのの字を書き出した。ダンジョンマスターは挑戦者を受け入れるものであって、ダンジョン攻略を強制するものではないと。
「それで、竜人のお前はどうなんだ?さっきからだんまりだけど」
そしてクロードが、カイルに問いかける。己に頼るなと言いたいのだろう。
「黒狼と同じだ」
カイルはクロードと同じだと答えた。何が同じなのだろうか。
「そもそも育ってきた環境が違う。気を緩めれば死が垣間見える訓練だ。甘っちょろいやり方を、俺は知らない」
カイルは以前ルークに話していた『兄上に半殺しされる毎日だった』と。
だから、殺意をまとわない訓練などお遊びだと言いたいのだろう。
「それわかる!必死にならないと生き抜けなかった。若い兵士が訓練でキツイと言っている奴らをどれほどボコりたかったか」
「しかし、それでは下の者がついてはこぬ」
「こうやってイスラが言うものだから、甘っちょろいやり方も覚えるようになったな」
生きてきた環境が違う。そう一言で終わらせてしまったら、何も意味がない。
「それ、英雄と言われる人って、みんなそうなんじゃないの?だから陽子さんは危機感が足りないと言っているんだよ」
強くなるにはそれなりの理由がある。ただ、彼らの理由が軽いとも言えた。
強くなりたい。
だが、英雄と呼ばれた者たちには、それ以上に理由があった。
陽子のいう危機感とは強くなるための理由と言い換えられた。
猛将プラエフェクト将軍は神の声を聞けるという聖女の願いを叶えるべく、世界を統一しようとした。
レイアルティス王は番である聖女を手に入れるため、世界の王と戦った。
アマツは虐げられていた獣人たちの解放を願い。どのような者でも受け入れる国を造った。
そして、目の前のクロードは己に降りかかる理不尽と戦うため力を得たのだ。
誰しも強くなるための強い動機があったのだ。
「俺は殺していいというのであれば、剣を構えよう」
そしてカイルは今までの甘っちょろい訓練というものではなく死闘であれば、剣を抜くと言った。それも痛いほどの殺気を帯びながら。
「竜の兄ちゃん。本気すぎて陽子さん逆に怖いよ」
イスラの言葉だけを聞けば、カイルが彼らを指導しても問題はないだろう。しかし、それ故に、確執が増すというもの。
「黒髪のお嬢さんの意見も同じようであるが、どうなのかのぅ」
カイルは答えないとふんだのか、イスラは陽子に尋ねた。答えを持つものだからこそ、陽子をわざわざ呼び出したということだろうか。
その陽子と言えば、カイルの背後に身を隠すように屈んでいる。
ハッキリ言ってダンジョンである裏庭では陽子は最強と言っていいはずなのだが、流石にダンジョンをぶち壊した者たちを目の前にして、ダンジョンマスターとして姿を現すことを警戒しているのだろう。
「陽子さんの感知と見ているものが、違うって気味が悪いのだけど」
いや、イスラの存在そのものを警戒しているようだ。
「陽子さん。こいつらは個として認識せずに種族として認識するのが定石だ。あと、何も存在していないように感じるが、生きている以上、周辺の魔素を消費している」
「わんこ君って、シュロス君並に直感型だよね。陽子さんそっちの方は苦手だよ」
なにか失礼な例えをしたが、クロードとしてはそのシュロスが誰か知らないためスルーをする。
「まぁ、陽子さんにもわからないのだけど、番という楔から解き放たれないかぎり無理な話だと思うよ」
「さて、それがわからぬのだが、聖女という役目を持つものを守るのに、争う意味などないであろう?」
「そう割り切れるものではないらしいよ」
世界が決めた番の楔。それは互いを縛り守るものであるが、ときにその楔が邪魔をすることもある。
「そもそも彼らに危機感が足りないのが問題なのだと思うのだよ」
以前言っていたことと同じことを陽子は口にする。危機感がない。それはアリスの予言のことだろう。
「陽子さんなら強くなれるっていうなら、どんな者にだって頭を下げるよ。でも陽子さんにはレベルがないからね。頭を下げて強くなれるわけじゃない」
「レベルがないだって!」
そこに食いついてきたのがクロードだった。
「精霊とかの類はレベルがないのか?」
「陽子さんは精霊じゃない。馬鹿わんこ」
何故か陽子のことを精霊だとクロードは思っているようだ。しかし、地面を自由に行き来できるとなれば、そう思われても仕方がないことなのかもしれない。
「これはおかしなものであるな。そなたは強い。わしなど赤子同然に捻り潰すことぐいらできるであろう?」
「陽子さんがどんな風に見えているのか知らなけど、陽子さんが力を奮える範囲は決まっているからね。そんな陽子さんが彼らを鍛えようとしたけど、領分が違うと一蹴されてしまったんだよね」
陽子はいじけるように屈んだまま地面にのの字を書き出した。ダンジョンマスターは挑戦者を受け入れるものであって、ダンジョン攻略を強制するものではないと。
「それで、竜人のお前はどうなんだ?さっきからだんまりだけど」
そしてクロードが、カイルに問いかける。己に頼るなと言いたいのだろう。
「黒狼と同じだ」
カイルはクロードと同じだと答えた。何が同じなのだろうか。
「そもそも育ってきた環境が違う。気を緩めれば死が垣間見える訓練だ。甘っちょろいやり方を、俺は知らない」
カイルは以前ルークに話していた『兄上に半殺しされる毎日だった』と。
だから、殺意をまとわない訓練などお遊びだと言いたいのだろう。
「それわかる!必死にならないと生き抜けなかった。若い兵士が訓練でキツイと言っている奴らをどれほどボコりたかったか」
「しかし、それでは下の者がついてはこぬ」
「こうやってイスラが言うものだから、甘っちょろいやり方も覚えるようになったな」
生きてきた環境が違う。そう一言で終わらせてしまったら、何も意味がない。
「それ、英雄と言われる人って、みんなそうなんじゃないの?だから陽子さんは危機感が足りないと言っているんだよ」
強くなるにはそれなりの理由がある。ただ、彼らの理由が軽いとも言えた。
強くなりたい。
だが、英雄と呼ばれた者たちには、それ以上に理由があった。
陽子のいう危機感とは強くなるための理由と言い換えられた。
猛将プラエフェクト将軍は神の声を聞けるという聖女の願いを叶えるべく、世界を統一しようとした。
レイアルティス王は番である聖女を手に入れるため、世界の王と戦った。
アマツは虐げられていた獣人たちの解放を願い。どのような者でも受け入れる国を造った。
そして、目の前のクロードは己に降りかかる理不尽と戦うため力を得たのだ。
誰しも強くなるための強い動機があったのだ。
「俺は殺していいというのであれば、剣を構えよう」
そしてカイルは今までの甘っちょろい訓練というものではなく死闘であれば、剣を抜くと言った。それも痛いほどの殺気を帯びながら。
「竜の兄ちゃん。本気すぎて陽子さん逆に怖いよ」
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