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五、病弱の理由
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翌朝、目が覚めたわたしは庭をゆっくりと散歩をしていた。療養といっても寝ているばかりでは身体はよくならないのだとおじい様に教えられ、朝の過ごしやすい時間に毎日散歩をすることを勧められた。王都から北西に進んだ先にあるキルッカ家の領地は自然が多く空気も澄んでいるように感じる。朝露に濡れた花がキラキラと輝いていて、朝の散歩も楽しい。メーリに手を引かれ、花をひとつひとつ観察しながら歩いていく。後ろには、昨日の夜に紹介された護衛が二人付いている。
若手の中で有望株だという二人は、茶髪を短く刈り上げた明るい雰囲気のイーロと、金髪を後ろで一つに縛っている穏やかで落ち着いている雰囲気のユッカ。二人ともおじい様が率いる我が家の騎士団に所属しており、優秀なのはおじい様のお墨付きらしい。
「このお花きれいね」
白い花びらがふんわりと重なった花に目が留まる。そっと触れれば花が揺れ、朝露がこぼれ落ちた。ほうっと、息をもらしそのかわいい花をもう一度揺らす。
「こちらが気に入られたのですか?」
「うん。白くてふんわりしていてかわいいね」
ニコニコと花を見つめていれば、後で庭師に分けてもらえないか聞いておいてくれるそうだ。
「お嬢様、そろそろお部屋に戻りましょう」
メーリにうながされ、朝のお散歩はここで終わりにする。ユッカにそっと抱き上げられ、城内に戻ればそのままおばあ様の元まで運ばれる。
「おはよう、アマリア」
「おはようございます、おばあ様!」
元気に挨拶を返せば、おばあ様は嬉しそうにうなずいて椅子に座るように勧めてくれた。おばあ様は質問をしながら触診をしてわたしの状態をたしかめていく。回復術士のおばあ様は医療にもお詳しく、薬の知識も豊富だった。
わたしが病弱で熱で寝込むことが多いのには理由があった。
わたし達はみながひとりひとり違った魔力を持っており、その魔力は魂に宿っている。そこから肉体に魔力が送られるのだが、わたしの魔力量が膨大すぎて今の肉体では納めきれないらしい。普通は身体の成長と魔力コントロールで問題にはならないはずだが、わたしはそもそもの魔力量が多すぎた。身体の成長も遅く、双子のグロリアより、あきらかに小さかった。こういった場合には命を落としてしまうこともあり、わたしがこうやって生きていられるのは生存本能によって開花した『回復術』のおかげだそうだ。魔力があれば簡単な魔法は使える。ただ、稀にこういった術が開花しそれを極めることにより、おばあ様のような回復術士などの特別な職に就くが事ができる。そして、わたしが生きていられる理由がもうひとつある。
「ふふふっ、グロリアのおかげね。あの子はあなたが苦しむのが嫌で無意識に開花していたのよ。あなた達は本当に仲の良い双子の姉妹ね」
グロリアの術は『吸収』。その名のとおりにわたしの魔力を吸収して、自分の中に納めていた。グロリアはわたしと反対で魔力量が少なく、肉体はおじい様に似たらしく頑丈にできているそうだ。言われてみれば、二人はよく似ているような――。
お昼寝の時、わたしの夢の中には「ガハハッ!!」と豪快に笑う、おじい様とグロリアが並んで立っていた。それはとても楽しそうで、目が覚めてからもあまりの可笑しさに笑った。夕食の時、そのことをおじい様達に教えたら二人もまわりも楽しそうに聞いてくれて、おじい様はとても嬉しそうだった。
グロリアが来たら今以上に面白くなる。そんな日がくるのを楽しみに、わたしは明日から始める魔力コントロールの訓練を頑張ろうと決めた。
日課に決めた朝の散歩を終え、朝食前におばあ様の元に足を運ぶ。問診と触診の後に一緒にお茶を一杯いただく。これは、おばあ様がブレンドしたハーブティーだそうだ。爽やかさの中にほのかな甘みがあって飲みやすい。このハーブティーが気に入ったわたしは、いつか自分でもいれることができるようにハーブについての勉強もしようと思う。
朝食後は少し休憩し、グロリアに手紙を書く。お花の絵が描かれた可愛い便箋を用意してもらったので、さっそく何を書こうか考える。朝の散歩や庭の花、ここが大きなお城で一緒に探検をしたいこと、魔力コントロールにハーブティー。書きたいことがたくさんあってまとまらない。
「まずは、元気でいることを書かないといけないわ」
そうだ、あの暗号文字を使って書いてみよう。さっそく表を取り出して書いてみるが上手くいかず、結局は拙い文字で元気でいることを書いておいた。
手紙はメーリに渡して、王都の屋敷に送ってもらえるようにお願いした。手紙は魔道具さえあればすぐにでも簡単に送ることができる。『転移の門』の応用で作られた『転送箱』に入れれば、対で作られている『転送箱』に送られる。領地と王都の屋敷にはそれぞれ置いてあり、これで手紙のやり取りや書類などを送ったりもする。
「みんなも元気かしら?」
お父様やお母様、ユリアナお姉様にグロリア。きっとグロリアは元気いっぱいだと思うけど、またあの人が困らせていないといいな。グロリアを苦しめる『おねえさま』。どうしてグロリアだったのだろうか?わたしが代わってあげれたらいいのに。
あれから幾日かたっても、グロリアからの返事は来なかった。
若手の中で有望株だという二人は、茶髪を短く刈り上げた明るい雰囲気のイーロと、金髪を後ろで一つに縛っている穏やかで落ち着いている雰囲気のユッカ。二人ともおじい様が率いる我が家の騎士団に所属しており、優秀なのはおじい様のお墨付きらしい。
「このお花きれいね」
白い花びらがふんわりと重なった花に目が留まる。そっと触れれば花が揺れ、朝露がこぼれ落ちた。ほうっと、息をもらしそのかわいい花をもう一度揺らす。
「こちらが気に入られたのですか?」
「うん。白くてふんわりしていてかわいいね」
ニコニコと花を見つめていれば、後で庭師に分けてもらえないか聞いておいてくれるそうだ。
「お嬢様、そろそろお部屋に戻りましょう」
メーリにうながされ、朝のお散歩はここで終わりにする。ユッカにそっと抱き上げられ、城内に戻ればそのままおばあ様の元まで運ばれる。
「おはよう、アマリア」
「おはようございます、おばあ様!」
元気に挨拶を返せば、おばあ様は嬉しそうにうなずいて椅子に座るように勧めてくれた。おばあ様は質問をしながら触診をしてわたしの状態をたしかめていく。回復術士のおばあ様は医療にもお詳しく、薬の知識も豊富だった。
わたしが病弱で熱で寝込むことが多いのには理由があった。
わたし達はみながひとりひとり違った魔力を持っており、その魔力は魂に宿っている。そこから肉体に魔力が送られるのだが、わたしの魔力量が膨大すぎて今の肉体では納めきれないらしい。普通は身体の成長と魔力コントロールで問題にはならないはずだが、わたしはそもそもの魔力量が多すぎた。身体の成長も遅く、双子のグロリアより、あきらかに小さかった。こういった場合には命を落としてしまうこともあり、わたしがこうやって生きていられるのは生存本能によって開花した『回復術』のおかげだそうだ。魔力があれば簡単な魔法は使える。ただ、稀にこういった術が開花しそれを極めることにより、おばあ様のような回復術士などの特別な職に就くが事ができる。そして、わたしが生きていられる理由がもうひとつある。
「ふふふっ、グロリアのおかげね。あの子はあなたが苦しむのが嫌で無意識に開花していたのよ。あなた達は本当に仲の良い双子の姉妹ね」
グロリアの術は『吸収』。その名のとおりにわたしの魔力を吸収して、自分の中に納めていた。グロリアはわたしと反対で魔力量が少なく、肉体はおじい様に似たらしく頑丈にできているそうだ。言われてみれば、二人はよく似ているような――。
お昼寝の時、わたしの夢の中には「ガハハッ!!」と豪快に笑う、おじい様とグロリアが並んで立っていた。それはとても楽しそうで、目が覚めてからもあまりの可笑しさに笑った。夕食の時、そのことをおじい様達に教えたら二人もまわりも楽しそうに聞いてくれて、おじい様はとても嬉しそうだった。
グロリアが来たら今以上に面白くなる。そんな日がくるのを楽しみに、わたしは明日から始める魔力コントロールの訓練を頑張ろうと決めた。
日課に決めた朝の散歩を終え、朝食前におばあ様の元に足を運ぶ。問診と触診の後に一緒にお茶を一杯いただく。これは、おばあ様がブレンドしたハーブティーだそうだ。爽やかさの中にほのかな甘みがあって飲みやすい。このハーブティーが気に入ったわたしは、いつか自分でもいれることができるようにハーブについての勉強もしようと思う。
朝食後は少し休憩し、グロリアに手紙を書く。お花の絵が描かれた可愛い便箋を用意してもらったので、さっそく何を書こうか考える。朝の散歩や庭の花、ここが大きなお城で一緒に探検をしたいこと、魔力コントロールにハーブティー。書きたいことがたくさんあってまとまらない。
「まずは、元気でいることを書かないといけないわ」
そうだ、あの暗号文字を使って書いてみよう。さっそく表を取り出して書いてみるが上手くいかず、結局は拙い文字で元気でいることを書いておいた。
手紙はメーリに渡して、王都の屋敷に送ってもらえるようにお願いした。手紙は魔道具さえあればすぐにでも簡単に送ることができる。『転移の門』の応用で作られた『転送箱』に入れれば、対で作られている『転送箱』に送られる。領地と王都の屋敷にはそれぞれ置いてあり、これで手紙のやり取りや書類などを送ったりもする。
「みんなも元気かしら?」
お父様やお母様、ユリアナお姉様にグロリア。きっとグロリアは元気いっぱいだと思うけど、またあの人が困らせていないといいな。グロリアを苦しめる『おねえさま』。どうしてグロリアだったのだろうか?わたしが代わってあげれたらいいのに。
あれから幾日かたっても、グロリアからの返事は来なかった。
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