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プリエール
自分には常に優しいジェラールが飛ばした怒号にエルネストの浮かれ気分はいっぺんに吹き飛んだ。
「……すみませんでした」
「陛下、仕方ないですよ。それだけの美しさなのですから」
アランはエルネストを慰めるために言っているつもりだろうが、彼も婚約者がいるにも拘わらずプリエールに懸想しているのが見え見えだ。
ジェラールは呆れてものが言えない。
「そんなことより港湾と海上の警備の件はどうなった」
「はい。人数を増やし自警団の他、兵士も導入して見回りも強化しました。出入国の際も厳しいチェック体制をとるよう管轄の部署に指示しました」
皇帝になってから港湾の警備はテコ入れしたつもりが誘拐犯を入国させてしまっていたことがわかってジェラールは直ちに人員増強と警備体制の強化、誘拐犯の捜査を命令した。
プリエールに出会わなかったら隙があるままだった。
そして数週間後、港町で誘拐犯一味が捕まった。
今回彼らを捕まえたことで、誘拐された者を貴族が購入していたことが発覚する。
ガイアマーレ帝国は当初から奴隷制度はなく、労働の中でも一番危険な鉱山労働者には高賃金を支払うことが国で決められている。
それをケチりたい鉱山所有の貴族が労働力として若い男を外国から誘拐してくるよう依頼し、購入していたというのだから驚きだ。
それまでは帝国内の孤児や浮浪者などを誘拐して強制的に労働させていたが、ジェラール皇帝になってそういう者たちの数が減り、また警備も厳しくなったため、外国から誘拐してくるという形に変えたらしい。
その貴族はすぐに爵位をはく奪され、財産と領地を全て没収、そして禁固刑となった。
プリエールの誘拐には貴族の関わりは無く、誘拐犯一味が娼館に売るためだった。
ジェラールは胸を撫で下ろした。
彼らを捕まえることができなければ、決して立派に帝国を治めることができたとはいえず神に認められなかっただろう。
それを思うとプリエールには感謝してもしきれない。
なぜなら犯人の顔を覚えていると言って彼女が捜査の協力を申し出でてから、あっという間に捕まえることが出来たからだ。
彼女は変装して危険な現場にも潜入してくれた、今回の捜査での一番の功労者だ。
※※※
「君のお陰で誘拐犯一味を捕まえることが出来た。感謝する」
「いいえ、自警団や兵士の皆さまのお力があってこそです」
「彼らは仕事だから当然の事。君はいわば客人だ。協力してくれたお礼に褒美をやろうと思う。何でも言いたまえ」
「欲しい物など何もありません。私自身、誘拐犯を捕まえてくれたことに感謝している次第です」
お金や宝石も頑なに固辞するので、結局帝国への自由な入国許可証だけが与えられることになった。
全く欲のないプリエールは周りにいた皇族や貴族たちから賞賛され拍手が起こる。
皇帝からの感謝の言葉が終わり解散となると、貴族たちが一斉に彼女のもとへ集まった。
彼女はみんなと親しげに会話して楽しそうだ。
ジェラールは壇上の玉座からその光景を見ている。
「アラン、彼女は随分人気者なんだな」
「そうなんですよ。みんな自分たちのパーティーに招待して交流があるみたいですよ」
「そうか。俺は一度も彼女と食事やお茶をしたことない。特にしたいとも思わないが」
「そういうところは陛下らしいですね。でも多くの貴族は彼女が皇后になるのではと思っていますよ。私もそうなったら嬉しく思います」
アランはエルネストとは違ってジェラールがあと少しで神の世界へ行ってしまうことを知らない。
エレンに関しては人間の世界で暮らせない体になったことは聞いたので、彼女を忘れるためにも政務に鬼のように励んでいるのだと思っている。
だからジェラールがプリエールを宮殿に連れ帰ったのを知った時は完全にエレンの事は吹っ切れたのだと思って安心したのだが、彼女が来てからもう三か月。
なかなか進展しない二人の関係がまどろっこしく、早く二人が恋仲になってくれればいいのにと思っている。
「あのな、そんなことには絶対ならない」
「でも彼女、美しいだけでなく欲も無いなんて、まさに陛下の好みじゃないですか?」
「馬鹿を言え。彼女はもういつでもこの国に来られるんだから早く国に帰した方がいい。家族も心配しているはずだ。引きとめないようにと皆には言っておけ」
ジェラールはアランにそう言うと玉座から立ち去った。
「……すみませんでした」
「陛下、仕方ないですよ。それだけの美しさなのですから」
アランはエルネストを慰めるために言っているつもりだろうが、彼も婚約者がいるにも拘わらずプリエールに懸想しているのが見え見えだ。
ジェラールは呆れてものが言えない。
「そんなことより港湾と海上の警備の件はどうなった」
「はい。人数を増やし自警団の他、兵士も導入して見回りも強化しました。出入国の際も厳しいチェック体制をとるよう管轄の部署に指示しました」
皇帝になってから港湾の警備はテコ入れしたつもりが誘拐犯を入国させてしまっていたことがわかってジェラールは直ちに人員増強と警備体制の強化、誘拐犯の捜査を命令した。
プリエールに出会わなかったら隙があるままだった。
そして数週間後、港町で誘拐犯一味が捕まった。
今回彼らを捕まえたことで、誘拐された者を貴族が購入していたことが発覚する。
ガイアマーレ帝国は当初から奴隷制度はなく、労働の中でも一番危険な鉱山労働者には高賃金を支払うことが国で決められている。
それをケチりたい鉱山所有の貴族が労働力として若い男を外国から誘拐してくるよう依頼し、購入していたというのだから驚きだ。
それまでは帝国内の孤児や浮浪者などを誘拐して強制的に労働させていたが、ジェラール皇帝になってそういう者たちの数が減り、また警備も厳しくなったため、外国から誘拐してくるという形に変えたらしい。
その貴族はすぐに爵位をはく奪され、財産と領地を全て没収、そして禁固刑となった。
プリエールの誘拐には貴族の関わりは無く、誘拐犯一味が娼館に売るためだった。
ジェラールは胸を撫で下ろした。
彼らを捕まえることができなければ、決して立派に帝国を治めることができたとはいえず神に認められなかっただろう。
それを思うとプリエールには感謝してもしきれない。
なぜなら犯人の顔を覚えていると言って彼女が捜査の協力を申し出でてから、あっという間に捕まえることが出来たからだ。
彼女は変装して危険な現場にも潜入してくれた、今回の捜査での一番の功労者だ。
※※※
「君のお陰で誘拐犯一味を捕まえることが出来た。感謝する」
「いいえ、自警団や兵士の皆さまのお力があってこそです」
「彼らは仕事だから当然の事。君はいわば客人だ。協力してくれたお礼に褒美をやろうと思う。何でも言いたまえ」
「欲しい物など何もありません。私自身、誘拐犯を捕まえてくれたことに感謝している次第です」
お金や宝石も頑なに固辞するので、結局帝国への自由な入国許可証だけが与えられることになった。
全く欲のないプリエールは周りにいた皇族や貴族たちから賞賛され拍手が起こる。
皇帝からの感謝の言葉が終わり解散となると、貴族たちが一斉に彼女のもとへ集まった。
彼女はみんなと親しげに会話して楽しそうだ。
ジェラールは壇上の玉座からその光景を見ている。
「アラン、彼女は随分人気者なんだな」
「そうなんですよ。みんな自分たちのパーティーに招待して交流があるみたいですよ」
「そうか。俺は一度も彼女と食事やお茶をしたことない。特にしたいとも思わないが」
「そういうところは陛下らしいですね。でも多くの貴族は彼女が皇后になるのではと思っていますよ。私もそうなったら嬉しく思います」
アランはエルネストとは違ってジェラールがあと少しで神の世界へ行ってしまうことを知らない。
エレンに関しては人間の世界で暮らせない体になったことは聞いたので、彼女を忘れるためにも政務に鬼のように励んでいるのだと思っている。
だからジェラールがプリエールを宮殿に連れ帰ったのを知った時は完全にエレンの事は吹っ切れたのだと思って安心したのだが、彼女が来てからもう三か月。
なかなか進展しない二人の関係がまどろっこしく、早く二人が恋仲になってくれればいいのにと思っている。
「あのな、そんなことには絶対ならない」
「でも彼女、美しいだけでなく欲も無いなんて、まさに陛下の好みじゃないですか?」
「馬鹿を言え。彼女はもういつでもこの国に来られるんだから早く国に帰した方がいい。家族も心配しているはずだ。引きとめないようにと皆には言っておけ」
ジェラールはアランにそう言うと玉座から立ち去った。
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