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太陽の章 王族
新たな一歩
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***ロータス
ジュリアナがバハルマから戻って来た。
疲れたーと言ってベッドに横になる姿は普段と何ら変わりはない。
一休みして落ち着いた彼女は寝室から出てきてバハルマでの出来事を話し出した。
普段より饒舌なのは嘘を覆い隠すためなのだろう。
「王妃様が急にお亡くなりになってしまったの。国王陛下と王女殿下がそれはそれは悲しんでおられてお気の毒だったわ」
「アルマ医師の腕でも無理だったのか」
「ええ。もう手遅れだったんでしょうね。ネベラウ枢機卿猊下の祈りも神には届かなかったし。一年は喪に服すみたいで、街には黒い国旗が掲げられたの。猊下は国葬の準備があるからバハルマに残って、私とアルマ医師だけ先に戻って来たのよ」
「そうか」
息を吐くように嘘を吐く。
その理由を聞くつもりはない。
今となっては不信感があるのみ。
結局俺は言い訳を言う機会を与えるほど彼女を好きではなかったのだ。
「お疲れ様」と言って貼りつけた笑みを彼女に向けた。
三日後。
「どうしてこんな急に!? 何の相談もなく!」
「どうして君に相談しないといけないんだ。俺が出て行かなければいけない事は知っていただろう? 離してくれ」
荷物をまとめて出て行こうとしたら取り乱したジュリアナに必死に縋りつかれた。
これでは歩けない。
振り払うとその拍子に彼女はテーブルに体をぶつけて床に倒れてしまった。
一瞬起こそうと手が伸びる。
しかしここで情をかけたらいけないと思いその手を引っ込めて玄関を開けると、後ろから彼女が泣き叫んだ。
そんな元気があるなら打ち所も悪くは無かったのだろう。
少し安心した。
「連れて行ってくれるって言ったじゃない!」
「そんなことは言っていない」
「嘘つき!」
「……今まで世話になった。ありがとう」
「うっ、ロータス様!」
外には近所の人がわらわらと出てきていた。
非難するような目、哀れんだ目、興味津々な目。
おせっかいそうなおばさんが寄って来たのでそれとなく離れて、俺はカラスティアのトマシス鉱山へ足早に出発した。
そこが魔鉱石のある鉱山だ。
そういえばジュリアナはことあるごとに魔鉱石の話を振っていたなぁと、歩きながら思い出した。
あれは魔鉱石のある場所を聞き出す為だったのかもしれない。
バハルマのヴァルコフ国王の間諜……。
だとしたら俺はまんまと誘惑に負けた大ばか者ってことだ。
じゃあネベラウ枢機卿もヴァルコフ国王とグルなのだろうか。
だから俺を助けた?
いや、彼はクリビアに助けを求められたから助けたんだよな……。
そんなことを考えていると、誰かが後をつけていることに気付いた。
町角を曲がったと同時に急いで走り、隠れて様子を窺うと、顔に傷のある男がキョロキョロ辺りを探るように見回しながら通り過ぎて行った。
シタール、若しくはバハルマの差し金か?
これからはシタールだけでなくバハルマにも注意しなければと思うと頭が痛い。
怪しい男をかわして国境沿いの町に入った。
そこで髪を染める染粉と食料を調達して国境の山中で銀髪を黒髪に染めた。
――ロータスの銀髪はさらさらで本当に綺麗ね。青い瞳と色がマッチしていてとてもかっこいいわ。
染めながら、昔クリビアが俺の銀髪を褒めてくれたのを思い出す。
今も彼女が監禁されていると思うと胸が痛い。
野宿をしながら二日後、カラスティアに足を踏み入れて鉱山労働者が集まる近くの酒場に入った。
誰も俺がロータスだと気付かない。髪を黒く染めたのは正解だった。
彼らにどこまで魔鉱石の探索が進んでいるのか聞いてみると、シタールの手が入っている鉱山は五つで、まだ魔鉱石は見つかっていないと教えてくれた。
その中にトマシス鉱山は入っていなかった。
ならば奴らが魔鉱石に辿り着くのはまだまだ先だ。
見当違いの所を探しているシタールに思わず冷笑する。
ある労働者が愚痴をこぼした。
「元貴族が足手まといなんでさあ。探索するのも掘り進めるのものろくて、そんなんじゃいつまでたっても俺らの仕事は終わらねぇ」
「弱っちいからな。すぐ怪我するしよぉ」
カラスティア王国では鉱山労働者が怪我したら病院に収容していたが、シタール国王はどうするのだろうと気になった。
「怪我した人間はどうなるんだ?」
「そういう奴らを収容する施設に連れて行かれるんだ」
「病院か?」
「それはすぐに働ける奴が行く所だ」
ということはシタールにとってカラスティアの貴族は大怪我を負ったら見殺しにする使い捨ての奴隷ということか。
その収容施設の場所を聞いた後、俺はクソみたいな気持ちでトマシス鉱山へ向かった。
辻馬車を乗り継いで丸一日、寂れた田舎町に到着。
鉱山はそこから五キロほど歩いた所にある。
以前、俺はこの鉱山の洞窟内で魔法石を見つけたのだ。
洞窟の入り口は草木で塞がれているが、一度来ているので容易に辿り着くことができた。
中は真冬並みに寒く、震えながら奥へ進むと玉虫色の魔鉱石の林立する場所に突き当たる。
そこは異世界への入口でもあるのだ。
ジュリアナがバハルマから戻って来た。
疲れたーと言ってベッドに横になる姿は普段と何ら変わりはない。
一休みして落ち着いた彼女は寝室から出てきてバハルマでの出来事を話し出した。
普段より饒舌なのは嘘を覆い隠すためなのだろう。
「王妃様が急にお亡くなりになってしまったの。国王陛下と王女殿下がそれはそれは悲しんでおられてお気の毒だったわ」
「アルマ医師の腕でも無理だったのか」
「ええ。もう手遅れだったんでしょうね。ネベラウ枢機卿猊下の祈りも神には届かなかったし。一年は喪に服すみたいで、街には黒い国旗が掲げられたの。猊下は国葬の準備があるからバハルマに残って、私とアルマ医師だけ先に戻って来たのよ」
「そうか」
息を吐くように嘘を吐く。
その理由を聞くつもりはない。
今となっては不信感があるのみ。
結局俺は言い訳を言う機会を与えるほど彼女を好きではなかったのだ。
「お疲れ様」と言って貼りつけた笑みを彼女に向けた。
三日後。
「どうしてこんな急に!? 何の相談もなく!」
「どうして君に相談しないといけないんだ。俺が出て行かなければいけない事は知っていただろう? 離してくれ」
荷物をまとめて出て行こうとしたら取り乱したジュリアナに必死に縋りつかれた。
これでは歩けない。
振り払うとその拍子に彼女はテーブルに体をぶつけて床に倒れてしまった。
一瞬起こそうと手が伸びる。
しかしここで情をかけたらいけないと思いその手を引っ込めて玄関を開けると、後ろから彼女が泣き叫んだ。
そんな元気があるなら打ち所も悪くは無かったのだろう。
少し安心した。
「連れて行ってくれるって言ったじゃない!」
「そんなことは言っていない」
「嘘つき!」
「……今まで世話になった。ありがとう」
「うっ、ロータス様!」
外には近所の人がわらわらと出てきていた。
非難するような目、哀れんだ目、興味津々な目。
おせっかいそうなおばさんが寄って来たのでそれとなく離れて、俺はカラスティアのトマシス鉱山へ足早に出発した。
そこが魔鉱石のある鉱山だ。
そういえばジュリアナはことあるごとに魔鉱石の話を振っていたなぁと、歩きながら思い出した。
あれは魔鉱石のある場所を聞き出す為だったのかもしれない。
バハルマのヴァルコフ国王の間諜……。
だとしたら俺はまんまと誘惑に負けた大ばか者ってことだ。
じゃあネベラウ枢機卿もヴァルコフ国王とグルなのだろうか。
だから俺を助けた?
いや、彼はクリビアに助けを求められたから助けたんだよな……。
そんなことを考えていると、誰かが後をつけていることに気付いた。
町角を曲がったと同時に急いで走り、隠れて様子を窺うと、顔に傷のある男がキョロキョロ辺りを探るように見回しながら通り過ぎて行った。
シタール、若しくはバハルマの差し金か?
これからはシタールだけでなくバハルマにも注意しなければと思うと頭が痛い。
怪しい男をかわして国境沿いの町に入った。
そこで髪を染める染粉と食料を調達して国境の山中で銀髪を黒髪に染めた。
――ロータスの銀髪はさらさらで本当に綺麗ね。青い瞳と色がマッチしていてとてもかっこいいわ。
染めながら、昔クリビアが俺の銀髪を褒めてくれたのを思い出す。
今も彼女が監禁されていると思うと胸が痛い。
野宿をしながら二日後、カラスティアに足を踏み入れて鉱山労働者が集まる近くの酒場に入った。
誰も俺がロータスだと気付かない。髪を黒く染めたのは正解だった。
彼らにどこまで魔鉱石の探索が進んでいるのか聞いてみると、シタールの手が入っている鉱山は五つで、まだ魔鉱石は見つかっていないと教えてくれた。
その中にトマシス鉱山は入っていなかった。
ならば奴らが魔鉱石に辿り着くのはまだまだ先だ。
見当違いの所を探しているシタールに思わず冷笑する。
ある労働者が愚痴をこぼした。
「元貴族が足手まといなんでさあ。探索するのも掘り進めるのものろくて、そんなんじゃいつまでたっても俺らの仕事は終わらねぇ」
「弱っちいからな。すぐ怪我するしよぉ」
カラスティア王国では鉱山労働者が怪我したら病院に収容していたが、シタール国王はどうするのだろうと気になった。
「怪我した人間はどうなるんだ?」
「そういう奴らを収容する施設に連れて行かれるんだ」
「病院か?」
「それはすぐに働ける奴が行く所だ」
ということはシタールにとってカラスティアの貴族は大怪我を負ったら見殺しにする使い捨ての奴隷ということか。
その収容施設の場所を聞いた後、俺はクソみたいな気持ちでトマシス鉱山へ向かった。
辻馬車を乗り継いで丸一日、寂れた田舎町に到着。
鉱山はそこから五キロほど歩いた所にある。
以前、俺はこの鉱山の洞窟内で魔法石を見つけたのだ。
洞窟の入り口は草木で塞がれているが、一度来ているので容易に辿り着くことができた。
中は真冬並みに寒く、震えながら奥へ進むと玉虫色の魔鉱石の林立する場所に突き当たる。
そこは異世界への入口でもあるのだ。
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