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太陽の章 王族
ネックレス紛失(一)
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***クリビア
私がまだバハルマの王宮で暮らしていた数か月前。
朝早く、まだ寝ていた時になおざりに扉を叩く音がした。
すると返事をする間もなくたくさんのメイドがずかずかと部屋に入って来た。
あまりの無礼さに呆気にとられていると、メイド長の合図とともにクローゼットやタンスを勝手に開けてなにやら物色し始めたのでびっくりして飛び起きた。
「ちょっと、何しているの! すぐやめなさい!」
「陛下のご命令です」
「なんですって?」
陛下がいったい何のために?
そこにアナスタシアが血相を変えてやって来た。
「王妃様、大丈夫ですか!」
「アナスタシア、これは一体どういうことなの?」
「おそらくネックレスを探しているのかと」
「ネックレスって?」
「バーバラのなくなったネックレスです」
「どうして私の部屋を探すのよ」
「あの……ネックレスの事をいつお聞きになりましたか?」
「一週間くらい前だったかしら」
「私と父たちが聞いたのは三日ほど前なんです」
「それがどうしたって言うの」
「その時父は犯人を捜すにあたってこのことを広めないようにと仰いました。そして他に知っている人はいるかとバーバラに聞いたんです。そしたらバーバラは今初めて言うからここにいる人以外誰も知らないって言いました」
「ちょっと待って。私は確かに彼女から聞いたのよ」
だから私は昨日の夕食時にもうネックレスは見つかったかとバーバラに聞いた。
みんなが一瞬固まって雰囲気がおかしくなったのを感じはしたが、その時は気のせいかと思った。
「昨日の夕食後、王妃様が部屋に下がってから、バーバラが王妃様には話していないって父に泣きそうな顔をして言ったんです」
ああそういうことか。私は嵌められたのだ。
バーバラもとんだ役者だ。
あんなこと聞かなきゃよかった。親切心で聞いてしまって馬鹿みたいだ。
聞かなかったとしても、そのうちみんなの部屋をあらためるように彼女は持っていって、そしてこの部屋からネックレスが見つかるというわけね。
そうなるとどんなに否定しても誰も信じてくれないのが容易に想像できる。
「アナスタシア、私は誓ってネックレスを盗んでいないわ」
「わかっています!」
でもバーバラはどうしてそんなことを……。
こぶしをギュッと握り締めた。
部屋の中はもうぐちゃぐちゃで、アナスタシアはオロオロしている。私は見ていることしかできない。
一人のメイドが声を上げた。
「ありました!」
***ヴァルコフ国王 この日の前日の夜。
ネックレスをクリビアが盗むはずがない。
おそらくバーバラが仕組んだのだ。
全く何を考えているのか。
バーバラがなくしたネックレスは故王妃があげた物。
私が心の底から愛した女。
よりによってそれを利用してクリビアを陥れるとは。
厳しい罰を与えてくれと言っているのと同じだ。
バルコニーの窓を開けると涼しい風が入って来た。
深く息を吸って外の暗い景色を見ながらボーっとしていたらいいことを思いついた。
バーバラの企みにかこつけて彼女を王宮から出してしまおう。
普段は自分の目に入らない所に置いて、公式な場でのみ役目を果たさせる。
移動場所は没風宮にするか。
没風宮は歴代王の怒りを買い寵愛を失った王妃や側室が死ぬまで暮らすことになった宮殿だ。
長年放置され掃除もされておらずボロボロなためメイドたちの間では幽霊屋敷と言われている。
嫁ぎ先で盗みを働く手癖の悪い王妃というレッテルを貼って王宮から追い出せば、後々王妃に子どもができないことで煩く言ってくる貴族もいないだろうし、追い出した事に対するシタール国王への名分もできる。
彼女が処女でなかった事は家族と医師、側近しか知らないから私の面目も立つ。
国王の正妻になる女が処女でないことなどこの国の歴史上未だかつてないことで、この怒りは未だくすぶり続けている。
追い出すことで少しは気も収まるかもしれない。
相手がカラスティアの王子だということはすぐに分かった。
私が若かった頃は婚約期間中に関係を持つなどもっての外で、考えられない事だったからうっかりしていた。
シタール国王も知らなかったのだろう。
バレたら外交問題に発展することをするわけがない。
クリビアを送り返してもよかったが、それでは諸外国に私がコケにされたことが知れ渡ってしまうだろうし、それは嫌だった。
せっかく手に入れた美しい王妃を手放すのも惜しいというのもあり……。
だからといって、いまさら初夜の儀式を行う気はない。
こんな宙ぶらりん状態、全く頭の痛い事だ。
私がまだバハルマの王宮で暮らしていた数か月前。
朝早く、まだ寝ていた時になおざりに扉を叩く音がした。
すると返事をする間もなくたくさんのメイドがずかずかと部屋に入って来た。
あまりの無礼さに呆気にとられていると、メイド長の合図とともにクローゼットやタンスを勝手に開けてなにやら物色し始めたのでびっくりして飛び起きた。
「ちょっと、何しているの! すぐやめなさい!」
「陛下のご命令です」
「なんですって?」
陛下がいったい何のために?
そこにアナスタシアが血相を変えてやって来た。
「王妃様、大丈夫ですか!」
「アナスタシア、これは一体どういうことなの?」
「おそらくネックレスを探しているのかと」
「ネックレスって?」
「バーバラのなくなったネックレスです」
「どうして私の部屋を探すのよ」
「あの……ネックレスの事をいつお聞きになりましたか?」
「一週間くらい前だったかしら」
「私と父たちが聞いたのは三日ほど前なんです」
「それがどうしたって言うの」
「その時父は犯人を捜すにあたってこのことを広めないようにと仰いました。そして他に知っている人はいるかとバーバラに聞いたんです。そしたらバーバラは今初めて言うからここにいる人以外誰も知らないって言いました」
「ちょっと待って。私は確かに彼女から聞いたのよ」
だから私は昨日の夕食時にもうネックレスは見つかったかとバーバラに聞いた。
みんなが一瞬固まって雰囲気がおかしくなったのを感じはしたが、その時は気のせいかと思った。
「昨日の夕食後、王妃様が部屋に下がってから、バーバラが王妃様には話していないって父に泣きそうな顔をして言ったんです」
ああそういうことか。私は嵌められたのだ。
バーバラもとんだ役者だ。
あんなこと聞かなきゃよかった。親切心で聞いてしまって馬鹿みたいだ。
聞かなかったとしても、そのうちみんなの部屋をあらためるように彼女は持っていって、そしてこの部屋からネックレスが見つかるというわけね。
そうなるとどんなに否定しても誰も信じてくれないのが容易に想像できる。
「アナスタシア、私は誓ってネックレスを盗んでいないわ」
「わかっています!」
でもバーバラはどうしてそんなことを……。
こぶしをギュッと握り締めた。
部屋の中はもうぐちゃぐちゃで、アナスタシアはオロオロしている。私は見ていることしかできない。
一人のメイドが声を上げた。
「ありました!」
***ヴァルコフ国王 この日の前日の夜。
ネックレスをクリビアが盗むはずがない。
おそらくバーバラが仕組んだのだ。
全く何を考えているのか。
バーバラがなくしたネックレスは故王妃があげた物。
私が心の底から愛した女。
よりによってそれを利用してクリビアを陥れるとは。
厳しい罰を与えてくれと言っているのと同じだ。
バルコニーの窓を開けると涼しい風が入って来た。
深く息を吸って外の暗い景色を見ながらボーっとしていたらいいことを思いついた。
バーバラの企みにかこつけて彼女を王宮から出してしまおう。
普段は自分の目に入らない所に置いて、公式な場でのみ役目を果たさせる。
移動場所は没風宮にするか。
没風宮は歴代王の怒りを買い寵愛を失った王妃や側室が死ぬまで暮らすことになった宮殿だ。
長年放置され掃除もされておらずボロボロなためメイドたちの間では幽霊屋敷と言われている。
嫁ぎ先で盗みを働く手癖の悪い王妃というレッテルを貼って王宮から追い出せば、後々王妃に子どもができないことで煩く言ってくる貴族もいないだろうし、追い出した事に対するシタール国王への名分もできる。
彼女が処女でなかった事は家族と医師、側近しか知らないから私の面目も立つ。
国王の正妻になる女が処女でないことなどこの国の歴史上未だかつてないことで、この怒りは未だくすぶり続けている。
追い出すことで少しは気も収まるかもしれない。
相手がカラスティアの王子だということはすぐに分かった。
私が若かった頃は婚約期間中に関係を持つなどもっての外で、考えられない事だったからうっかりしていた。
シタール国王も知らなかったのだろう。
バレたら外交問題に発展することをするわけがない。
クリビアを送り返してもよかったが、それでは諸外国に私がコケにされたことが知れ渡ってしまうだろうし、それは嫌だった。
せっかく手に入れた美しい王妃を手放すのも惜しいというのもあり……。
だからといって、いまさら初夜の儀式を行う気はない。
こんな宙ぶらりん状態、全く頭の痛い事だ。
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