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最終章 命を救う魔剣
最終回
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***ロータス
シナバスとの戦い以降、平和なカラスティア帝国にダキアの出番はない。
魔鉱石もバハルマを支配下に置いてからは出現しておらず、異世界への道は閉ざされている。
「なぁエリノー。俺とクリビアの息子は本当に立派だと思わないか。男らしくも美しく、頭もいいときている。傲慢に聞こえるかもしれんが、俺は彼女を妊娠させたことを後悔していない」
「今となってはそう言えますねぇ。そういえばクリーヴ皇帝陛下にもそろそろ皇后が必要じゃないでしょうか。これまであまりにも国民のことばかり考えていて、そっちのほうは全く疎かでしたから。その点だけは陛下の息子とは思えないですねぇ」
「ふん。まだ本当に愛する者と出会っていないだけだろう」
「身分に釣りあう女性ならいいですね」
「俺はな、あいつには本当に愛する者と一緒になってもらいたい。貴族じゃなくてもいいんだ。国を想う賢い女性であれば……。クリビアもそうなるはずだった」
「こども塾は彼女の発案ですからねぇ。考えてみればクリビアさんとランス医師からは我が帝国も随分と恩恵を受けていますね」
医療の分野では、これまでランス医師が各国を訪問して医学の講義を行っていたが、帝国になったことで各国のを医師をカラスティアの中央に集めて講義ができるようになった。
そのため効率的に大陸の隅々までランス医師の知識を行き渡らせることができたのだ。
「彼のお陰で病気や怪我での死亡率もグンと減ったしな」
「そうですねぇ。色々平和だし、魔剣が必要になることもこの先当分ありそうにないですね」
「魔剣と言えば、お前はまだ命を救う魔剣として使えるよな」
「私は使うつもりはありません。何百年も生きるわけじゃないし、何事も運命として受け入れるつもりです」
「そうだな。しかもたった一度だけなんて、難し過ぎる」
「確かに。でも我々の代で魔法鍛冶職人集団の世界に行くことになったのは、なんらかの神の計らいなんじゃないかと思うんですよねぇ」
これまで何代にもわたって魔鉱石は出現していなかったことを考えるとエリノーの言葉にも頷ける。
俺は目の前の魔剣を一撫でした。
「俺がベルナルドではなくクリビアを魔剣で救ったのも意味があったか?」
「その通りです。クリビアさんが生きておられたからこその現在の皇帝陛下です。皇帝陛下はクリビア様の影響を強く受けておられますからね。ベルナルド様はきっともうどこかの素晴らしい両親のもとに生まれ変わって幸せになっておられるでしょう」
「……生まれ変わったら今度こそクリビアと一緒になりたいものだ」
「陛下……。ちょっとしつこいんじゃありませんかねぇ……」
「次こそは浮気などしないぞ」
「はいはい」
俺たち二人は見納めをするかのように魔法の武具をぐるっと見回してから、保管室を出て行った。
これを最後に俺たちがこの保管室に入ることは二度と無かった。
***クリビア
冷たい冬の風が吹き始めた秋の終わりの夕暮れ時、バルコニーで椅子に座って海を見ていた。
高台にある邸は眼下にたくさんの民家と小さな森が見え、その先に海が広がっている。
――「君が『アスター王子のプライベートビーチは秘密の楽園の様だった』って言っていただろう? だから海が見える邸を買ったんだ。本当はプライベートビーチ付きが良かったけど、王侯貴族しか持てないから……」
海面には夕陽からキラキラと美しい光の道ができていて、まだ明るさの残る空には一番星が輝いている。
彼と肩を並べてこの景色を眺めるのが好きだった。好きな人と暮らせるならどこでも構わない。
――「なんだか魂が宇宙に溶けてなくなるまでの幸せを全て使い切ってしまったようだ。ははは」
陽が落ちて暗くなるとあなたはいつも「幸せだなぁ」って呟いた。
そうして私の手をギュッと握り締めるの。
流れ星には何を願っていたのかしら。
あなたのことだから、きっと家族の幸せとかそういうことだったのかもしれないけど。
私は今日も無事に過ごさせていただきありがとうございましたって、そう思っていたわ。
全然ロマンティックじゃないわね。ふふふ。
深呼吸して波の音に耳を傾け目を瞑った。
するといつか聞いたことのある声が頭の中に響いてきた。
《クリビア》
(ガルシア神様?)
《お前の決断で世界が平和に繁栄していく道を歩み始めた》
(……私はただクリーヴを手放しただけです)
《自分一人の有り余る幸せを選ばなかったお前は不幸だったか》
(とんでもありません。クリーヴの活躍が耳に入る度に幸せな気持ちになっていました。私には愛する夫ランス、ラミアとアベリア、仕事仲間がいました。衣食住に困らない普通の生活ができました。それ以上何を望むことがあるでしょう)
《そして自分の使命も果たすことができた》
(私がしたことなど、こども園くらいです。それもみんなの協力なくしてはできませんでした)
《クリーヴはロータスとランス、そしてお前からたくさんの愛情を受けてそれを民へ還元した こども園は市井に生きる人々の社会資源となり彼はそれを大陸中へ広めたのだ》
私の使命とはそういうことだったのか……。
特に意識してはいなかった。
愛するのは当然の事。
こども園は前世の経験を生かして作った施設だから。
(あの子の役に立てて良かったと思っています……それだけで十分です……)
私の精神は深い安堵に満たされた。
憂いていることなど何一つない。
穏やかで心地よい時間が過ぎて行く。
《さあ そろそろお前を愛する者のもとへ連れて行ってあげよう》
光の道がカーペットのように伸びて、そして夕陽に帰っていく。
ピンクの瞳の小さな女の子が金髪のツインテールを揺らしながらバルコニーに走ってきた。
「おばあちゃん、見て見て! この貝がら、きれいでしょう? ラミアおばちゃんと取りに行ったの」
「」
「おばあちゃん? ……ハックション!」
「」
「ママー! おばあちゃんが起きないのー! かぜ引いちゃうよー!」
fin
シナバスとの戦い以降、平和なカラスティア帝国にダキアの出番はない。
魔鉱石もバハルマを支配下に置いてからは出現しておらず、異世界への道は閉ざされている。
「なぁエリノー。俺とクリビアの息子は本当に立派だと思わないか。男らしくも美しく、頭もいいときている。傲慢に聞こえるかもしれんが、俺は彼女を妊娠させたことを後悔していない」
「今となってはそう言えますねぇ。そういえばクリーヴ皇帝陛下にもそろそろ皇后が必要じゃないでしょうか。これまであまりにも国民のことばかり考えていて、そっちのほうは全く疎かでしたから。その点だけは陛下の息子とは思えないですねぇ」
「ふん。まだ本当に愛する者と出会っていないだけだろう」
「身分に釣りあう女性ならいいですね」
「俺はな、あいつには本当に愛する者と一緒になってもらいたい。貴族じゃなくてもいいんだ。国を想う賢い女性であれば……。クリビアもそうなるはずだった」
「こども塾は彼女の発案ですからねぇ。考えてみればクリビアさんとランス医師からは我が帝国も随分と恩恵を受けていますね」
医療の分野では、これまでランス医師が各国を訪問して医学の講義を行っていたが、帝国になったことで各国のを医師をカラスティアの中央に集めて講義ができるようになった。
そのため効率的に大陸の隅々までランス医師の知識を行き渡らせることができたのだ。
「彼のお陰で病気や怪我での死亡率もグンと減ったしな」
「そうですねぇ。色々平和だし、魔剣が必要になることもこの先当分ありそうにないですね」
「魔剣と言えば、お前はまだ命を救う魔剣として使えるよな」
「私は使うつもりはありません。何百年も生きるわけじゃないし、何事も運命として受け入れるつもりです」
「そうだな。しかもたった一度だけなんて、難し過ぎる」
「確かに。でも我々の代で魔法鍛冶職人集団の世界に行くことになったのは、なんらかの神の計らいなんじゃないかと思うんですよねぇ」
これまで何代にもわたって魔鉱石は出現していなかったことを考えるとエリノーの言葉にも頷ける。
俺は目の前の魔剣を一撫でした。
「俺がベルナルドではなくクリビアを魔剣で救ったのも意味があったか?」
「その通りです。クリビアさんが生きておられたからこその現在の皇帝陛下です。皇帝陛下はクリビア様の影響を強く受けておられますからね。ベルナルド様はきっともうどこかの素晴らしい両親のもとに生まれ変わって幸せになっておられるでしょう」
「……生まれ変わったら今度こそクリビアと一緒になりたいものだ」
「陛下……。ちょっとしつこいんじゃありませんかねぇ……」
「次こそは浮気などしないぞ」
「はいはい」
俺たち二人は見納めをするかのように魔法の武具をぐるっと見回してから、保管室を出て行った。
これを最後に俺たちがこの保管室に入ることは二度と無かった。
***クリビア
冷たい冬の風が吹き始めた秋の終わりの夕暮れ時、バルコニーで椅子に座って海を見ていた。
高台にある邸は眼下にたくさんの民家と小さな森が見え、その先に海が広がっている。
――「君が『アスター王子のプライベートビーチは秘密の楽園の様だった』って言っていただろう? だから海が見える邸を買ったんだ。本当はプライベートビーチ付きが良かったけど、王侯貴族しか持てないから……」
海面には夕陽からキラキラと美しい光の道ができていて、まだ明るさの残る空には一番星が輝いている。
彼と肩を並べてこの景色を眺めるのが好きだった。好きな人と暮らせるならどこでも構わない。
――「なんだか魂が宇宙に溶けてなくなるまでの幸せを全て使い切ってしまったようだ。ははは」
陽が落ちて暗くなるとあなたはいつも「幸せだなぁ」って呟いた。
そうして私の手をギュッと握り締めるの。
流れ星には何を願っていたのかしら。
あなたのことだから、きっと家族の幸せとかそういうことだったのかもしれないけど。
私は今日も無事に過ごさせていただきありがとうございましたって、そう思っていたわ。
全然ロマンティックじゃないわね。ふふふ。
深呼吸して波の音に耳を傾け目を瞑った。
するといつか聞いたことのある声が頭の中に響いてきた。
《クリビア》
(ガルシア神様?)
《お前の決断で世界が平和に繁栄していく道を歩み始めた》
(……私はただクリーヴを手放しただけです)
《自分一人の有り余る幸せを選ばなかったお前は不幸だったか》
(とんでもありません。クリーヴの活躍が耳に入る度に幸せな気持ちになっていました。私には愛する夫ランス、ラミアとアベリア、仕事仲間がいました。衣食住に困らない普通の生活ができました。それ以上何を望むことがあるでしょう)
《そして自分の使命も果たすことができた》
(私がしたことなど、こども園くらいです。それもみんなの協力なくしてはできませんでした)
《クリーヴはロータスとランス、そしてお前からたくさんの愛情を受けてそれを民へ還元した こども園は市井に生きる人々の社会資源となり彼はそれを大陸中へ広めたのだ》
私の使命とはそういうことだったのか……。
特に意識してはいなかった。
愛するのは当然の事。
こども園は前世の経験を生かして作った施設だから。
(あの子の役に立てて良かったと思っています……それだけで十分です……)
私の精神は深い安堵に満たされた。
憂いていることなど何一つない。
穏やかで心地よい時間が過ぎて行く。
《さあ そろそろお前を愛する者のもとへ連れて行ってあげよう》
光の道がカーペットのように伸びて、そして夕陽に帰っていく。
ピンクの瞳の小さな女の子が金髪のツインテールを揺らしながらバルコニーに走ってきた。
「おばあちゃん、見て見て! この貝がら、きれいでしょう? ラミアおばちゃんと取りに行ったの」
「」
「おばあちゃん? ……ハックション!」
「」
「ママー! おばあちゃんが起きないのー! かぜ引いちゃうよー!」
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