上 下
2 / 2

プロローグ

しおりを挟む
立て付けの悪いドアを開け、玄関に散乱した薄汚れたスニーカーやサンダルを蹴散らしながら室内に入る。

入るとすぐに台所があって、そこには油でベトベトになったガスコンロ。そして、流し台には山積みになった洗い物。残飯も山盛りになって悪臭を放っている。

そこにある冷蔵庫や電子レンジなどの家電もリサイクルショップなどで格安で購入した10年以上前の骨董品だ。

安っぽい板張りの床には髪の毛やホコリが散らばっている。

人並みの生活をしている、いわゆる中流階級のやつらがこの光景を見ればきっとゾッとして鳥肌が立つだろう。

オレも好きでこんな酷い生活をしてるわけじゃない。

仕事はしたい気持ちはあるが、学歴もスキルもない中年男には土方みたいな肉体労働しかない。セックス以外で汗をかくなんてオレには絶対に無理だ。

「おいババア弁当買ってきたぞ」

母親の部屋の前に弁当の入った袋を無造作に置いてオレは自分の部屋に入る。

蛍光灯をつけると、年中ずっと敷きっぱなしのボロ布団が真っ先に視界に入る。その周りを囲むようにチューハイの空き缶や弁当の空容器が転がっている。

机の上に山積みになった未開封の封筒はすべてクレジット会社からの督促状だ。

借金だらけのブサメン中年ニート。まさにクズの見本だ。

しかし、こんなオレでも女にはまったく不自由していない。しかもみんな若い子ばかりだ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...