ディメオ~首切り魔術師は返り咲く~

わらべ

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第六話「追われる身」

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 館の中を必死に逃げ惑うジャック一行。

「追え! 逃がすな!」
「追えー! 追えー!」

 と、衛兵たちがその後を追う。

「もう! どうしてこんなことになるのよ!」

 シエラは声を荒げて不満をぶちまけた。
 今走っている長い廊下の先には、広い庭園へと続く扉がある。
 そして、庭園には隠れるのに適した場所が山ほどある。
 つまり、追っ手を撒くことだって難しくないのだ。
 となれば、全力疾走で庭園を目指すのみ! と、言いたいところだが……。
 フランクは激しく息を切らし、今にも倒れそうだった。

「はぁ、はぁ、これっていつまで走ればいいんだ……?」
「頑張ってください! あともうひと踏ん張りです!」

 ここで倒れられたら一巻の終わりだ。
 フランクには何としてでも耐えてもらわなければならない。
 だが、ジャックの励ましは儚いものとなった。

「はぁ、はぁ、もうダメ……」

 なんとその時、フランクが床にドサッと倒れ込んでしまった。
 ジャックとシエラは目を丸くし、すぐさま足を止めた。

「えぇ!?」
「お父さん!?」

 シエラは慌ててフランクに駆け寄った。

(まずい! こんなことをしていては……)

 ハッと周囲を見渡してみると、すっかり衛兵たちに取り囲まれていた。
 そして、大きな金属製の槍を突き付けられた。
 といっても、ただの槍ではない。
 その先端からは、じわじわと溢れ出てくる魔力が感じられた。
 錬金術を用いたのだろうか。
 とにかく、このまま攻撃魔術でも発動されれば間違いなく死ぬということは分かった。

「ったく、手間かけさせやがって。とっとと大人しくしておけばいいものを」

 一人の衛兵が鼻で笑いながら言い放った。
 シエラは恐怖のあまり、フランクに寄りすがって身をすくめた。

(クソッ! 一体どうすれば……)

 もはやここまでなのか。
 とその時、ふと自分の手の中に何かが握られていることに気づいた。
 それは、謁見の間から逃げる際に拾い上げた杖だった。

(しめた! これだ!)

 すると、ジャックは天井を見上げ、杖を力強く振り上げた。

「あ? 何をする気だ!?」

 ジャックの不可思議な行動に、衛兵たちが身構えた。
 シエラは不安げな顔でジャックを見つめている。
 そんな中、ジャックは不敵な笑みを浮かべていた。
 そして、何かの詠唱を始める。

「天空を貫き、地を揺るがす雷霆よ!
 雷神の司法を現出し、雷華の嵐を永劫に刻み付けん!
 無慈悲なる稲妻の翼を翻し、我が前に立ち塞がる全てを殲滅せよ!
 サンダーディストラクション!」

 と、ジャックが詠唱を終えた次の瞬間!
 辺り一面が猛烈な光に覆われ、視界が真っ白になった。
 さらに、とてつもない轟音や爆風が襲いかかってくる。

 ドガァァァァァァン!!

「「「ギャアァァァァァァ!!」」」

 途端に、断末魔の叫びが響き渡った。
 辺りには土埃が舞っており、ジャックは何が起きているのか分からずにいた。
 だが次第に騒ぎは収まっていき、やがて土埃も収まった。
 そうしてジャックの視界が開けた時、状況は明らかとなった。
 そこには、無残にも焼け焦げた衛兵たちが転がっていた。
 中には手足がもげているものもある。

「うっ……!」

 ひどい匂いに、ジャックは思わず鼻を覆った。
 だがその匂いをかき消すかのように、どこかから風が吹いてくる。
 てか先程から妙に風通しがいい。

(なんだ……?)

 ジャックはふと風向きの方を見てみた。
 すると驚いたことに、廊下の壁に大穴が開いていたのだ。
 この光景に、ジャックは言葉を失った。
 魔力のないジャックがこの状況を作り出したのだから、この魔石の力は凄いものである。
 だが、さすがにここまでくると恐怖さえ感じられた。

「あ……ああ……」

 シエラは今にも泣きだしそうな顔で呆然としていた。
 そりゃ大量の焼死体と壁の大穴を同時に見れば、誰でもそういう反応をするだろう。
 とその時、

「何事だ!?」

 と、遠くから誰かの声が聞こえてきた。

(まずい! 早く逃げないと!)

 途端に、ジャックは焦り始めた。
 そして、急いでシエラの元へ駆け寄った。

「じきに追手が来ます! 今すぐここから出ましょう!」
「…………」

 ジャックは必死に呼びかけたが、シエラは呆然としたままだった。
 目の当たりにした光景によほど衝撃を受けたのだろう。
 だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
 ジャックはシエラの体を大きく揺すった。

「シエラさん!?」
「……っ! え、ええ……」

 シエラはようやく我に返った。
 そして、二人は倒れ込むフランクに肩を貸して起き上がらせた。

「さぁ、こっちです!」

 と、壁の大穴へと誘導するジャック。
 三人はそこから外に抜け出し、急いでその場を後にした。
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