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怯えたсолдат(兵士)
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早朝に叩き起こされ上官の前に起立させられたロシア兵三人。
「◯◯地点の補給路に物資を運べ!いいな!」
「同志…中将、そこは補給部隊が壊滅した場所でその、上手く物資を届けられるかどうか…」
「俺の命令が聞けないのか?」
「いえ、そう言う訳では!ただ物資を安全に届け…」
「俺は行きたくない」
慎重に言葉を選んでいた兵士の隣りの兵士が叫んだ。続けてもう一人も言う。
「俺も危険を侵してまで物資を運びたくないです。他のルートを…」
そこまで聞いた上官は冷たい目で三人を見つめるなり
「小屋に行け…」
とだけ言った。
皆、青ざめ押し黙った。
通称「鶏小屋」に閉じ込められた三人は手榴弾を投げられ皆命を落とした。
その惨状を一部始終見ていた一人の兵士が一言いうと
「同志中将、そこまでしなくても…」
「聞き分けのないガキみたいな奴にはあれぐらいが丁度いいんだ…よっ」
「ふぐっ」
上官はその兵士の腹を手加減なしに殴った。
「ああなりたくないなら、任務を遂行をしろ」
上官は殴られ悶絶する兵士に目もくれなかった。聞き分けのない犬を蹴飛ばす飼い主のように。
腹の痛みに呻きながら兵士は思う。
(こんなところに来るんじゃなかった)と
「待て」
俺は集落の小屋の手前で仲間達に静止の合図を出した。
砲弾と瓦礫が散らばり、弾痕があちこちにあるような廃墟の建物。一昔前に流行った
ホラーゲームのような雰囲気の廃墟。
しん、と静まり返っていても何かがいる空気を確かに感じた。誰かがそこにいる
(3、2、1で行くぞ)
目配せと手の合図でそれを伝えると皆頷く
3
2
1
緊張のために銃を構える手が震える。
「出てこい!そこにいるのはわかってる!
抵抗しないなら殺さない!投降しろ!!」
声を張り上げ小屋に向かって叫ぶ
しばらく反応がないが微かな身じろぎする音を俺は聞き逃さなかった
「武器を捨てて出てこい!いるのはわかってるぞ!」
さっきよりも大きな声で叫ぶが、一向に相手は出てこない。くそ頑固なヤロウだ
「ち、仕方ない」
俺は手榴弾のピンを抜きためらうことなく小屋の中へ投げ込む数秒後、爆発音が響いた。
すると…怯えた目をした占領者が手を上げながらゆっくり小屋の中から出てきた。
見たところ武器は持っていない。
「手を上げたままこっちに来い!早く!」
ゼンマイ仕掛けの人形並みにゆっくり歩く奴をせかす。近くまできたロシア兵を後ろ手を縛り拘束し聞く
「お前は一人か?」
「一人だ」
(中を確認してくれ)
仲間が暗がりの小屋の中を小銃に取り付けたライトで照らしながら見る。
「誰もいない。トラップもなし」
「了解、ふう俺たちゃ隠れんぼしてるわけじゃないんだがな」
隠れ潜む占領者の仲間が他にいないことに安堵する。傍らにいるロシア兵は大人しくじっとしている。
「お前は一人でずっとここにいたのか?」
ロシア語で話しかけてみる
「そうだ…指揮官といざこざがあってここに置き去りにされた。その前に殴られて…
戦う気もなくしてしまった。
出てきたらドローンで狙われるかもしれないと思うと気が気じゃなくて出て来れなくなった」
「そうかい、そりゃ厄介なやつを上司に持っちまったな。だが安心しな!俺達はお前を理不尽な目に遭わせたりしない」
軍服からタバコを取り出し火をつける。
「吸うか?」
「ああ…だがいいのか」
驚いたように目を見開く男の拘束を解くと
タバコを与えてやった
「許してるわけじゃない。お前達のせいでウクライナはボロボロだ。だが、俺もお前も人間だ。生きたいなら助けるそれだけだよ」
それを聞くとロシア兵はうまそうにタバコを吸って、目を閉じた。今までの恐怖とプレッシャー全てから解き放たれたようにも見えた。
しかし、ロシア軍というのはやり方がまずい。暴力と恐怖で部下を従わせ、従わない者は切り捨てる。人権を無視したやり方は今の時代にはそぐわない。
敵と言えども人間であり、知性がある。
人間は犬や猫、家畜ではない。叩いたり脅したりして命令に従わせるなどあってはならない。まして命を取るなどなおさら
「作戦終了、撤収する」
報告をしていると
「なあ」
ロシア兵がまた話しかけてきた
「何かまだあるか?」
「Спасибо(ありがとう)」
「礼を言われるほどのことはしてねぇな
あとウクライナ語だとありがとうはдякую
って言うんだ」
「д…дякую」
どもりながら言うロシア兵を見て
俺はいつかウクライナとロシアがうまく付き合えるようになればいいと思った。
それはきっと1000年後かもしれないが
希望を持つことは自由だ。
おわり
「◯◯地点の補給路に物資を運べ!いいな!」
「同志…中将、そこは補給部隊が壊滅した場所でその、上手く物資を届けられるかどうか…」
「俺の命令が聞けないのか?」
「いえ、そう言う訳では!ただ物資を安全に届け…」
「俺は行きたくない」
慎重に言葉を選んでいた兵士の隣りの兵士が叫んだ。続けてもう一人も言う。
「俺も危険を侵してまで物資を運びたくないです。他のルートを…」
そこまで聞いた上官は冷たい目で三人を見つめるなり
「小屋に行け…」
とだけ言った。
皆、青ざめ押し黙った。
通称「鶏小屋」に閉じ込められた三人は手榴弾を投げられ皆命を落とした。
その惨状を一部始終見ていた一人の兵士が一言いうと
「同志中将、そこまでしなくても…」
「聞き分けのないガキみたいな奴にはあれぐらいが丁度いいんだ…よっ」
「ふぐっ」
上官はその兵士の腹を手加減なしに殴った。
「ああなりたくないなら、任務を遂行をしろ」
上官は殴られ悶絶する兵士に目もくれなかった。聞き分けのない犬を蹴飛ばす飼い主のように。
腹の痛みに呻きながら兵士は思う。
(こんなところに来るんじゃなかった)と
「待て」
俺は集落の小屋の手前で仲間達に静止の合図を出した。
砲弾と瓦礫が散らばり、弾痕があちこちにあるような廃墟の建物。一昔前に流行った
ホラーゲームのような雰囲気の廃墟。
しん、と静まり返っていても何かがいる空気を確かに感じた。誰かがそこにいる
(3、2、1で行くぞ)
目配せと手の合図でそれを伝えると皆頷く
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緊張のために銃を構える手が震える。
「出てこい!そこにいるのはわかってる!
抵抗しないなら殺さない!投降しろ!!」
声を張り上げ小屋に向かって叫ぶ
しばらく反応がないが微かな身じろぎする音を俺は聞き逃さなかった
「武器を捨てて出てこい!いるのはわかってるぞ!」
さっきよりも大きな声で叫ぶが、一向に相手は出てこない。くそ頑固なヤロウだ
「ち、仕方ない」
俺は手榴弾のピンを抜きためらうことなく小屋の中へ投げ込む数秒後、爆発音が響いた。
すると…怯えた目をした占領者が手を上げながらゆっくり小屋の中から出てきた。
見たところ武器は持っていない。
「手を上げたままこっちに来い!早く!」
ゼンマイ仕掛けの人形並みにゆっくり歩く奴をせかす。近くまできたロシア兵を後ろ手を縛り拘束し聞く
「お前は一人か?」
「一人だ」
(中を確認してくれ)
仲間が暗がりの小屋の中を小銃に取り付けたライトで照らしながら見る。
「誰もいない。トラップもなし」
「了解、ふう俺たちゃ隠れんぼしてるわけじゃないんだがな」
隠れ潜む占領者の仲間が他にいないことに安堵する。傍らにいるロシア兵は大人しくじっとしている。
「お前は一人でずっとここにいたのか?」
ロシア語で話しかけてみる
「そうだ…指揮官といざこざがあってここに置き去りにされた。その前に殴られて…
戦う気もなくしてしまった。
出てきたらドローンで狙われるかもしれないと思うと気が気じゃなくて出て来れなくなった」
「そうかい、そりゃ厄介なやつを上司に持っちまったな。だが安心しな!俺達はお前を理不尽な目に遭わせたりしない」
軍服からタバコを取り出し火をつける。
「吸うか?」
「ああ…だがいいのか」
驚いたように目を見開く男の拘束を解くと
タバコを与えてやった
「許してるわけじゃない。お前達のせいでウクライナはボロボロだ。だが、俺もお前も人間だ。生きたいなら助けるそれだけだよ」
それを聞くとロシア兵はうまそうにタバコを吸って、目を閉じた。今までの恐怖とプレッシャー全てから解き放たれたようにも見えた。
しかし、ロシア軍というのはやり方がまずい。暴力と恐怖で部下を従わせ、従わない者は切り捨てる。人権を無視したやり方は今の時代にはそぐわない。
敵と言えども人間であり、知性がある。
人間は犬や猫、家畜ではない。叩いたり脅したりして命令に従わせるなどあってはならない。まして命を取るなどなおさら
「作戦終了、撤収する」
報告をしていると
「なあ」
ロシア兵がまた話しかけてきた
「何かまだあるか?」
「Спасибо(ありがとう)」
「礼を言われるほどのことはしてねぇな
あとウクライナ語だとありがとうはдякую
って言うんだ」
「д…дякую」
どもりながら言うロシア兵を見て
俺はいつかウクライナとロシアがうまく付き合えるようになればいいと思った。
それはきっと1000年後かもしれないが
希望を持つことは自由だ。
おわり
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