人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

〜異世界に慣れるまで〜

説明をしてもらう私

　お便りだと？　絶対に大事なことが書いてあるに決まっている。
それなのに、ノワールは不思議そうに花を傾けている。首を傾げているつもりなのだろうか。
　いいから寄越せと言わんばかりに、私は両手を突き出す。それを見たノワールは此方に向けて蔓を伸ばした。なんだろうと思って見ていたら、まるで手品かのように手紙が出てきた。　一体どういう理屈なんだろう…何もない所から手紙が出てくるなんで不思議である。
　それはさておき、私はノワールから手紙を受け取った。「ありがとう」とお礼を言って手紙を開ける。その手紙は金色で色々な意味でキラキラと眩しかった。流石神様である。私はドキドキしながら手紙を読み始めた。



『やぁやぁ☆ 僕だよっ！　何の説明もなしに送っちゃってごめんね～ここからは真面目に、詳しく説明するからちゃんと最後まで見るんだよ～☆
 
　まず、君が今いる世界の名前はね
【アルライト】っていうんだ。魔法があって魔物もいる。3つの大陸と、小さな島々が浮かぶ沢山の種族が生きる世界なんだ。
　君の世界では電気を使って日々生活していただろう？でも、アルライトには電気はない。その代わりに魔力と呼ばれるものがあって、知恵ある生き物はその力で生活しているんだ。　
　
　1番大きな大陸の名前は
【レオート大陸】気候が比較的安定しているから、3つある大陸でも1番住みやすい。主に人が暮らしているよ。ちなみに、君が今いる大陸もこのレオート大陸だからね。

　2番目に大きな大陸は
【ガルラドン大陸】　ここはマグマ地帯や氷山地帯、そして砂漠など厳しい自然環境が広がっているよ。厳しすぎて人は暮らせないから、ドワーフや獣人、魔族といった環境に対応できる頑丈な種族が暮らしている。　

　1番小さな大陸は
【フォレスター大陸】　その大地の殆どを森林が占めているんだ。エルフや小人族、妖精が暮らしている。行く為には、いつも大荒れの海を越えて行かなければいけないから気をつけるんだよ？

  次に魔法についての話をしようか。気になるでしょ？　魔法はね、この世界に生きる者ならみんな使えるんだ。勿論、その力が弱いとか強いとかの個人差はあるけどね。
　魔法は世界を巡っている魔素を体内に取り込んで、自分の中にある魔力と混ぜ合わせることで初めて魔法を使うことができるんだよ。
その世界に生きる者達は、何故か魔法を使う時に詠唱が必要だと思っているようだけど、必要ないからね。大切なのはイメージする力。それができれば詠唱なんて必要ない。
　属性は　火　水　地　風　光　闇　治癒　全部で7つの属性がある。これも個人差で使える属性が決まるんだ。稀に全てを使いこなす者もいるけど、大抵は1つ～3つかな。　　何度も言うけれど、魔法はイメージだからね。それを忘れないで。

　そしてもう一つ大事なのが［スキル］
これは、生まれ持ったものから自分で努力して習得できるものまで色々ある。
スキルを得るとね、いいことが沢山あるんだ。　例えば、［剣術］というスキルを習得したとするでしょ？　剣は、スキルがなくても使うことが出来るけど、スキルを持っていると持っていない人に比べて格段に剣を使っている時に疲れにくくなったり、普通より強い力を発揮することが出来る。持っていないと使えない特別な技もあったりするかな。
　スキルに関してもう一点。さっきの剣とは違って、そのスキルを持っていなければできないものがある。色々あるんだけど、代表的なのは魔法薬。名前の通り魔法を込めて作る薬のことなんだけど、これは［魔法薬調合］っていうスキルを持っていなければ作ることが出来ない。努力しても習得できないし、生まれ持った人だけが持つスキルなんだ。このようにスキルにも沢山種類があるから、色々勉強してね？

　最後に、君について。
無理矢理地球からアルラルトに連れてきてしまったね。申し訳ないけど、もう帰れないんだ。君の家族、友達についてはあの空間で話した通り、君を忘れてもらうことにした。その理由はいつか必ず話す。だから君にはこの世界で楽しんでほしい。黒い薔薇もいるだろう？彼は、君を裏切らないから頼るといいよ。わからないことも教えてもらうといいからね。
　今から君の名前はセーレ・ホルピス。僕がつけたんだ。可愛いよね？　容姿も変えたから、また見ておくといいよ。自分のスキルを確認したい時には、アンロックって言ってごらん？そうすれば自分のスキルが全て見れるから、この手紙を読み終わった後にでも見てみるといい。
　あ、そうそう。君の家も用意したんだ！場所は薔薇に聞いてね。家はまた今度詳しく薔薇が説明するから、楽しみにしててね！


　今、君に話さないといけないことはこれで終わり！　どうだった？最初は戸惑うと思うけど、徐々に慣れていってくれたらいいからね。
　セーレ、アルライトで好きなことをして楽しんで生きてね。人と関わりたくないのなら、関わらなければいい。本当にセーレの好きなことをしていいんだ。僕は君をいつも見守っているよ。頑張ってね
　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　主神ルトラスより』




　神様…ルトラス様からの手紙を読み終えた時、私は泣いていた。悲しかった。私の大切な人達が私を忘れるなんて、もう地球には帰れないなんて本当に嫌だった。久しぶりに声をあげて泣いた。泣きじゃくる私の頭をノワールは蔓で撫でてくれる。何も言わない彼の優しさが、今の私にはひどくありがたかった。