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〜異世界に慣れるまで 3〜
魔法を使ってみましたが予想外の事態になりました…
しおりを挟む次の日朝、私は早起きしていた。まだ朝日が登り始めたばかりの時間だ。身支度を整えた私は、朝食とお弁当を作っている。まずサラダを作ろうと畑に向かう。どれも元気に育っていて収穫できそうだ。栽培のスキルの効果なのか、なんとなく食べ頃がわかるようになっておりとても便利だ。
今回はトマトとレタス、きゅうりを収穫することにしよう。朝食ではサラダにして、お弁当はサンドイッチにするので多めに収穫することにする。キッチンに戻った私は早速調理を始めた。フレンチトーストとトマトスープ、それとサラダ。これで朝食は完成だ。
残すはお弁当。サンドイッチも1種類では飽きるかなと思ったので2種類作ることにする。一つは収穫した野菜を使ったサンドイッチ。もう一つは焼いた牛肉を挟んだボリュームのあるサンドイッチにした。ちなみにお肉は冷蔵庫に沢山あった。それはもう食べきれないのでは?と思わざるを得ない程の量だ。昨日ノワールがルトラス様から山のように食材をもらったと言っていたが何事にも限度があるだろう。今度ルトラス様に会えたらそこら辺もきちんと言いたい。そんなことを考えていたらノワールが起きてきた。
「おはよう御座います主様。朝食の準備誠に有難う御座います。とても美味しそうですね」
「おはよう御座いますノワール。もうできましたから一緒に食べましょう?ノワール程上手くはできなかったかもしれませんが…頑張って作りました!お弁当も作ったんですよ?」
そう言ってノワールの前にお弁当を差し出す。するとノワールは嬉しそうに「有難う御座います」と言ってくれた。
「いただきます」と言って、2人で朝食を食べる。やっぱり誰かと食べると美味しさが倍増するような気がする。
「主様、とても美味しゅう御座いました。誠に有難う御座います」
「いえいえ、こちらこそ食べていただいて有難う御座います。ところでノワール。何処で魔法を教えてくれるんですか?できれば家の周りは避けたいのですが…」
この家の周りは基本的に花が咲き誇っている。ここで魔法を使ったら花が散ってしまうだろう。それは悲しいので別の場所が良いとお願いしてみる。
「大丈夫ですよ主様。ここでは魔法は使用しません。一昨日主様が降り立った森で行います。ご準備ができ次第森へ向かおうと思うのですが、ご準備の程は如何ですか?」
「私は準備できてます!いつでも行けますよ!」
汚れが目立たない黒のワンピースにして髪もお団子にしたし、お弁当も持った。一応念のために体力回復薬と魔力回復薬も持った。準備満タンである。
一つ一つ準備した物を見せる私にノワールは穏やかに微笑んだ。
「かしこまりました主様。では参りましょう」
私の手を取り、エスコートしてくれる。外に出て桜並木に繋がる白い木の扉の前に立つとノワールが足を止めた。
「主様、申し訳御座いません。お伝えし忘れていたことが御座います。ルトラス様の加護の効果についてなのですが、ご自宅の周りを結界で囲い絶対的な安全をもたらすのが、ルトラス様の加護だということはご説明申し上げたかと存じます。問題はその範囲なのですが、この先にあります桜並木までがルトラス様の加護の力が及ぶ範疇で御座います。あの桜並木はアルライトとこの空間を結ぶ言わば玄関のようなものでして、主様のご自宅の敷地内という扱いです。ですのでそこを出られた際は、結界スキルをご使用下さいませ。スキル結界 と仰れば発動致します」
そう言われて初めて説明してもらっていなかったことに気がついた。ノワールは申し訳なさそうにしている。けれど私も忘れていたのだ、お互い様だろう。
「ノワール、私も貴方に言われるまで忘れてしまっていました。お互い様ですので気にしないで下さい!さぁ、早く行きましょう!」
私は扉に手をかけて開いた。そこには初めて見た時と、全く変わらない桜並木がある。本当に綺麗だ。何度見ても惚れ惚れする。私は桜並木を楽しみながら気を失って目覚めた場所に立った。あれからまだ2日目しか経っていないのに、随分昔のことのような気がする。後ろからついてきたノワールが私に説明を始めた。本当に説明ばかりさせてしまって申し訳ない…
「主様、そのままそちらにお立ちになったまま私と手を繋ぎましょう。前は落ちましたが、今度は浮遊してあの大きな木の扉まで向かいます。かなりのスピードが御座いますので怖ければ目を閉じて頂いてもかまいませんよ」
…浮遊?今浮遊と言った?それにかなりスピードがでる?自慢ではないが私はジェットコースターがかなり苦手だ。話を聞く限りジェットコースターのようだとしか思えない。私は慌ててノワールと手を繋ぎ、目を閉じた。本当に怖い、何故わざわざ浮遊してしかもスピードがでる仕様にしたんだ。普通に階段とかでもいいだろう。どうしよう心の整理がつかない。
そんな私に構わずノワールはさっさと何やら準備をしている。ガサゴソと音がしたかと思うと金色の光に包まれる。そして体を浮遊感が襲った。あの内臓を持ち上げられているような何とも言えない不快感。それが今私を襲っている。そしてもの凄いスピードがでている。耳元でビュービューと音がするのだ。もう怖くて目を開けることができない。
恐怖の浮遊感地獄門からどれくらい経っただろうか気づけば以前ノワールに落とされた時に見た木の穴が見えた。その木に空いた穴をくぐり抜けると、そこに広がっていたのは私がこの世界に来て最初にいた森だった。なんだか懐かしく思っているとノワールが声をかけてきた。
「さぁ主様、結界スキルをご使用下さいませ。その後魔法を使っていきましょう」
私は急いでスキルを使うべく声をあげる
「スキル結界」
空気が張り詰めた気がした。自分とノワールの周りに、何か盾のようなものが現れたかと思えばそれは一瞬で消えていった。
「主様お見事で御座います! それでは始めましょうか。まず、魔法というのはですねルトラス様の手紙にも書いてあった通り、世界を巡る魔素と自分の持っている魔力とを混ぜ合わせることによって初めて使うことが可能です。これが上手くできないと魔法の威力が弱まり、使いこなすことができません。この世界に生きるものは、魔法を様々な形で使用します。例えば魔物と戦う術として、又生活をする上で欠かせないものとしてなど人によって捉え方は様々でしょう。主様はとりあえず生活を楽にするのと、ご自分の身を守る為と捉えて下さい。
普通は魔素を自分の魔力と混ぜ合わせることがまず第一関門となるのですが、主様の場合無意識の内にできておりますのでこれは飛ばしましょう。
主様の場合の関門は、イメージだと思われます。ですのでまずは初級からイメージしてみましょう」
こんな風にとノワールがやってみせてくれたのは小さな水の塊りだった。丸い形をしており掌サイズだ。私はノワールのを真似するようにして同じものを出すことができた。ひとまずできてほっとする。
「上出来ですよ主様! 次に火を出してみましょう。火は攻撃に使用されることが多く、初級でも火傷など怪我をする危険が御座います。慎重に私の真似をしてみて下さい」
ノワールが出したのは人差し指に乗る程度の小さな火だ。ライター程度のサイズの火。それをそのままイメージしたのに何故かできない。水の時と同じ要領でしたはずなのに…困り果ててノワールをみる。するとノワールも難しい顔をしていた。
「主様、火は後回しにして残り5つの属性を試してみましょう」
それから残り5つ全て試したがどれもノワールと同じようにできた。初級ではあったけども火のように全くできないなんてことはなかった。火を重点的に練習した結果、なんとかライターサイズの火を出すことができるようになったが…何故だかかなり疲れるのだ、今も肩で息をしている。するとノワールが
「主様、主様は適性は御座いますがどうやら火の属性が不得意なようですね。もう少し詳しく調べてみないと何とも言えませんが…もしかしたら攻撃系統が不得意なのかもしれません…」
と難しい顔をしていう。
え??私って全属性使えるはずなのでは…?
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