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ルーアの町
飛んで行った先に待つ人達
しおりを挟むーーーーノワールside
「どうやら成功したようです。もうすぐ飛んでくるかと思われます」
「そうか!お嬢さんはやってくれたか!!」
「本当に凄いな…あの巨体をここまで飛ばせるのか。これは一度魔法談義をしたいな」
「イヴの魔法談義は長いですからね、セーレさんが良いと仰らなければダメですよ?さて、僕たちも戦う準備をしなくては」
「うん…せっかく…セーレが飛ばしてくれたんだから…必ず倒さないと…」
そう言って準備を始めるが、はっきり言ってこいつらは弱い。人間の中では強いのだろう、だが私からすれば弱い。たかだかバロール相手にここまでしなければ勝てないなど、飽きれるを通り越して笑えてくる。
しかも、こいつらはここまでしてもまだ苦戦を強いられるかもしれないと言っているのだ。主様にはお伝えしていないが、冒険者にはランクがある。1番下がE、1番上がSだ。こいつらはSランクパーティー、ということは全員がSランクでなくてはならない。つまり、人間の中でも相当な実力者揃いのはずだ。それなのにこの程度の実力しかないのか…本当に人間は脆弱だ。私一人ならバロールなど一瞬で消せるのに、こいつらと共に戦わなければならない所為で、時間がかかるのも気にくわない。主様の前だったから引き受けたが、普段なら絶対に引き受けない。
「しかしノワール、お前はあのお嬢さんのもとから離れないと思っていた!いやぁ~意外だった!」
気安く話しかけてくるな、鬱陶しい。
「そうですね。確かに主から離れたくはありませんでしたが、この方が主に危険が少ないので」
本当に面倒だ。主様に伝わると困るからこうして喋っているが、本当は今すぐ口を塞ぎたい。そもそも無駄口を叩くほどの余裕などお前たちには全くないぞ。何故そんなこともわからない?
「ノワール、一度お前の主と魔法談義をしたいんだが間を取り持ってはくれないか?勿論ノワールも同席してくれて構わない」
そんなこと誰がするか。
「いやいや、私など間を取り持つには役不足ですよ。私は主の望まれることしか致しませんから」
そもそも主様と魔法談義などしても、こいつにはなんの役にも立たないだろう。主様の魔法は、地球で培われたイメージをする力によって発動している。アルライトの人間よりもイメージする力が強いのだ。だから詠唱もいらない。そんなイメージする力を求められる魔法を、生粋のアルライトの人間であるこいつが使えるわけがない。ちっぽけなプライドを、更に小さく粉々にされて終わりだ。何故己が傷つくことをする?
「来ました!!!」
そうこいつが告げる。確か名前はニヨルだったか。来たと聞いて、先程主様と魔法談義がしたいとぬかした奴が、魔法を展開する。だが、これでは受け止められない。不完全に受け取れられると逆に危ないのだ。私はバロールの下敷きにはなりなくない。
だから補助する形で私も魔法を展開する。奴は何故か上から下へ風を吹かせて、墜落させようという魂胆のようだが、そんなことをしたら下敷きになるだけだろう。こいつらが倒してきた、普通のバロールならその方法でもいけた。しかし、こいつは普通のバロールではない。キングバロールの子供、プリンスバロールだ。その名の通り王の子なのだ。そんじょそこらのバロールとは、重さも攻撃力も体力も知能も違う。普通のバロールと、同じ戦い方をしていたようでは倒せない。
バロールの周りに風の膜をつくる。こうすることで私たちも安全だ。主様が岩の鎖で戒めているから、ないとは思うがバロールの逃亡も防げる。
私がサポートしているのは気つけるようだ。驚いたようにこちらを見ている。見る暇があったら魔法の制度をあげろと言いたい。私たちが風で落としている途中に、豪傑のメンバーが攻撃をしかけている。やっぱり攻撃力も弱いが、バロールの急所をつけているからまぁ及第点だろう。
そこそこダメージを与えることに成功している。血が降り注いでくるが、それも気にくわん。魔法で血を消していく。こうでもしなければ汚れてしまう。汚れた手で、主様に触れることなどできない。なんとしてでも血の汚れはつけない。
やっとバロールを落とせた。時間がかかり過ぎだ。だかまぁある程度体力は削れたからよしとするか。
「よっしゃ~!!さぁ攻撃を開始するぞ!さっさと倒す!!」
「だな!さっさと倒してお嬢様にフファ作ってやろうっと!」
「有難う御座います。主もきっと喜ばれます」
正直言ってこいつに作ってもらうの癪だ。まぁこいつに任せるのが1番確実だから任せるが。
こいつらは接近して戦う者と後方から戦う者がわかれている。それぞれが役割を理解して戦っているからプリンスバロール相手にそこそこ渡り合えているだろう。だが、私はこの戦いを長引かせるつもりはない。主様がこちらにいらっしゃるまでに終わらせる。
「皆さん、下がってください。一気に倒します」
退避したのを見計らって魔力を高める。私は神の眷属だ。キングバロールだろうが、プリンスバロールだろうが関係ない。魔物ごときには負けはしない。血が飛び散ると汚れる。かといって跡形が残らないほどの火力で燃やすのもダメだ。倒したという証拠が残らなければ。
ならば、倒したという証拠を残して燃やそう。そうすれば主様に死体を見せずにすむ。バロールはなんとか岩の鎖を外そうと攻撃をされながらも、もがいているがそんなことは無意味だ。高めた魔力を一気に解放する。といっても私からすればそれは微々たる量だが。限界まで高められた魔力は、龍の形をした炎になってバロールに襲いかかる。奴は逃げるようともがくが、主様の岩の鎖がそれを許さない。やがて炎の龍はバロールを飲み込んだ。断末魔の叫びをあげているが煩くてかなわん。魔法で音を遮断しよう。こうすれば、こちらに向かっている主様のお耳が守られる。
豪傑の奴らは呆けた間抜け面をしている。これしきのことも出来ず、よくSランクパーティーを名乗り、他の町を警護しようとしたな。いっそ感心する。何か話しかけようとしてくるが、無視だ。もうすぐ主様が来られる。ディアルマもいるから滅多なことはないと思うが、一応念のためだ治癒術も展開しておこう。これで擦り傷でもなんでも治せる。
あぁ、主様に会うのが待ち遠しい…早くお会いしたいものだ。
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