人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

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ルーアの町

 こんなことってありますか…?

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 こちらセーレです。只今、草原へ向かっています。ディアルマがすっごい急いでくれてる。背中に乗っているだけなのだが、めっちゃ怖い。それはもうすっごく怖い。景色があっという間に後ろに流れていく。ジェットコースターなど比ではないくらい怖い。ディアルマが大丈夫かと気遣ってくれているが、大丈夫じゃない。私はジェットコースターが、かなり苦手なのだ。その昔一度だけ行ったことがあるがジェットコースターに乗って泣いた。それもう盛大に。故に私は今も半泣きだ。もう早く着くように祈るしかない。




 私の祈りが天に届いたのか思ったよりも早く草原に到着したらしい。ディアルマの速度がゆっくりになった。歩いてくれているので、やっと落ち着いて乗れる。あぁ怖かった。今までも乗らしてもらってはいたが、ここまで速度を出されたのは初めてだ。

「主、大丈夫か…?すまない今度からもっとゆっくり走るようにする…」

 あぁ…ディアルマの耳が思いっきり垂れてしまっている。ヒゲも下がりきってしまってシュン…としてしまっている。

「ディアルマは何も悪くないよ。私が怖がり過ぎなだけだからね。連れてきてくれてありがとう。疲れてない?大丈夫?」

 そう言ってディアルマの頭を撫でる。彼は耳の横を撫でられるのが好きらしく、そこを撫でると喜んでくれるのだ。今も思いっきり垂れてしまっていた耳が、徐々に上がり始め、ヒゲももとに戻りかけていた。本当に可愛い。モフモフと相まってとてつもなく可愛い。

「あぁ疲れていない。ありがとう主。さて、ノワールを探そう。多分この辺りにいるはずなんだが…」

「うん…全然音もしないね…」





 先ほどから、戦っている音もしなければ姿も見えない。ここは草原で見晴らしもいい。背の高い木々もあるが、まばらだ。決して見にくいことはない。
 なのに、いないのだ。豪傑の皆さんもノワールもいない。私達のいる場所が悪いのかと思って移動しているが、やっぱりいない。それに何故か胸騒ぎがする。私はいてもたってもいられなくて、大声でノワールを読んだ。

「ノワール!何処なの?聞こえる?ノワール!!」

 いくら待っても返事は返ってこない。何故…?何があったというのだろう。ノワール達に何かあったのだろうか…?青ざめて震える私にディアルマは擦り寄って必死に慰めてくれる。

「大丈夫だ主。ノワールはダークウェルザローズだ。あいつが負けるわけがない。大丈夫だ」

「うん…そう…だよね。きっとノワールは大丈夫だよね。じゃあ…豪傑の皆さんは?皆さんはどうしたの…?」

「それは…わからない。だが、あいつらだってSランクパーティーだ。並のやつよりは強いはずだ。とにかく今はノワールを探そう。ノワールなら何があったか知ってるだろう。主、もう一度ノワールを呼んでくれないか?主の声ならノワールにきっと届く」

 一度届かなかったのに…?そんな思いを込めてディアルマを見るが、彼は自信満々に頷いてみせる。まるでノワールが返事をしないなどありえないという風に。信じろといわんばかりに。
 対する私はまるで自信がなかった。でも…いつもノワールは私を気にしてくれている。この世界に来て初めて私と喋ってくれた。私と一緒にいてくれた大切な存在。彼がいてくれたから、私にはもう一人大切な存在ができた。ディアルマが、自信満々に信じろと行動で示してくれるなら、私も少し自信が出てくる。そうだ、ノワールに何かあるなどあり得ない。彼は神を守る力を持つのだ。彼を信じなくてどうする。頑張れ私、私を信じることはできなくてもノワールとディアルマを信じるんだ。

 


「ノワールーーー!!いたら返事をして下さーーい!!」




「はい。お呼びでしょうか主様」

「ぎゃあぁぁーー!」

 ノワールがすぐ横に出てきた。首から下を地面に埋めて。全く体が見えないから生首みたいだ。誰だって探していた人が生首状態で急に出てきたら驚くだろう。本当にびっくりした本気で悲鳴をあげてしまった。女子としてぎゃあってどうなんだろう…ディアルマも毛を逆立てて驚いている…いやあれはドン引きしている。そりゃそうだ、私も全力で同意する。 って話が逸れてしまった…

「ノワール!!無事なの?大丈夫?体は!?」

「私は無傷で御座います。体は少々問題が発生しまして地中に逃げておりました影響で御座います。今出ますので少しお待ち下さいませ」

 そう言ってもぞもぞと動いている。何をしているのだろう…思わずガン見していたら、スポンッと音がしそうな勢いで地面から出てきた。これは夢かと思ったが、先ほどまでノワールが埋まっていた穴がバッチリ現実だということを示している。貴方は野菜ですか。

「無事だったか。まぁ、ノワールがどうにかなることなどないと思っていたが。それで?他の奴らはどうした?」

「当たり前だ。私がバロールに遅れをとるはずがない。主様、他の豪傑のメンバーの皆さんのことなのですが、少々問題が発生しました」

 問題…もうここまできたら問題がない方がおかしい。よし、覚悟は決まった。

「問題って…?」

「はい。バロール討伐には成功致しました。ですが、主様をお待ちしている最中に、突然目が眩む程の強い光が辺りを照らしたのです。魔法の気配を感じました。これはマズいと思い、私は地中に逃げていたのです。深く潜っておりましたので、主様のお声が聞こえてすぐに駆けつけることができませんでした…誠に申し訳ありません」

 そう言って頭を下げる。魔法…?ノワールが地中にいた経緯はわかった。では、他の皆は…?

「来てくれたから大丈夫、謝らなくていいよ。ノワール、豪傑の皆さんは…?」




「そこが問題なのですが…


     何者かに連れ去られたようです」

 
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