人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

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ルーアの町

 忍者ですか…?

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「…はい…?連れ去られた…?」

 え…?アルライトはそんな物騒なの…?以前は、呪われた父王を助ける為に、死の森と呼ばれるいかにもやばそうな名前の森に、一人でやってきた王子様。今回は町を助ける為にバロールを討伐しようとするSランクパーティーを連れ去った何者か。物騒過ぎませんか?それとも私がアルライトに馴染めていないだけ…?

「いや主、こんな事件は頻繁に起きていない。確かに地球に比べて、命の危機は魔物がいたりする分、身近にある。あるが、だからといってこんな事件はあまりないからな」

 なるほど…じゃあ私は巻き込まれ過ぎだということか…?何故だ、私は自分の家と森を行き来する生活をしているのになんでですか…

「それよりも主様、如何致しましょう?」

「何が…?」

「助けに行かれますか?豪傑の皆さんの居場所なら掴んでおりますので助けに行かれるならすぐに出発できますよ」

…助けにか…行きたい、行きたいが怖い…だって、連れ去られたということは、連れ去った人がいるはずだ。Sランクパーティーを連れ去れるんだ、強いに決まっている。そんな人に勝てるだろうか…で、でも…

「た、助けに行きたい…ノワール、私を連れて行って!」

「かしこまりました。少し距離が御座いますので、ディアルマにお乗り下さい」

「うん。ディアルマ、お願いしてもいいかな…?疲れてない?」

「あぁ!疲れていないから大丈夫だ。さぁ乗ってくれ」

 そう言ってディアルマが伏せてくれた。私が乗ったのを確認すると風のように走り出した。
 ノワールは置き去り!?と後ろを振り返ろうとしたらなんと横にいた。風のように走っているディアルマの横に並走しているのだ。凄過ぎませんか…?見た目ユキヒョウのディアルマと、見た目人のノワールが並走しているところは違和感しかない。





 走り続けてしばらく、草原を抜けて更に森を抜けて洞窟にたどり着いた。いかにもな雰囲気が漂っている。

「ノワール、ここなの…?」

「はい。間違い御座いません。あの強い光の魔法が使われた時、豪傑の皆さんを見失わないように追尾の魔法をかけたのです。その魔法が此処を示しています。なので確実に皆さんこちらにおられます」

 じゃあ間違いはないだろう。来たはいいもののここからどうするべきか…

「さて、ノワール準備はいいか?」

「いつでもいける。私はこの洞窟内の構造を調べる」

「じゃあ俺は人だな。豪傑の奴らも、そいつらを連れ去った奴らも、皆調べよう」

「え…?何をするの?」

「大丈夫ですよ主様。私たちに全てお任せ下さい」

 そう言って二人とも魔法を使っていく。じんわりと洞窟にむかって魔力が広がっていき、広がっていった魔力が戻ってくる。コウモリの超音波みたく洞窟内を探っているのだろうか?
 暫くして二人同時に私の方を見る。どうやら終わったらしい。

「待たせたな主、終わったぞ。これで比較的安全に、洞窟内を進ることができる。豪傑の奴らは同じ所にいる。連れ去った奴らだが、人数は10人。5人は同じ所にいるが、2人は豪傑の奴らの見張り、3人はこの洞窟内の見回りをしているようだ」

「洞窟内部ですが、かなり入り組んでいるようです。豪傑の皆さんが捕われている場所は、最奥で御座います。この最奥に行く為には、連れ去った加害者5人が集まっている部屋を通らなければなりません。ですので戦闘を回避するのは厳しいかと」

「そんな…あっ!ノワールが使っていた地中に潜る魔法を使って一気に豪傑の皆さんの所まで行けば…!」

 戦闘が回避できるのでは?と期待を持ったが、ノワールに首を横に振られてしまう。

「確かに、そうすれば戦闘は回避できます。ですが、この魔法は、私たちにしか使うことができないのです。故に、豪傑の皆さんのもとに行くことは可能ですが、助け出すことは不可能です」

「主、1番確実な方法は、このまま洞窟内部に忍び込むことだ。内部はわかっているし、人が近づいてきたらわかる。だから隠れながら進まないか?戦闘も俺たちがやる。主はサポートしてくれればそれでいいから。何も殺したりはしない」


「そうですよ主様、不安なら認識阻害の魔法を使っていきましょう?それに戦闘といっても、正面からやりあう必要性は全くないのです。認識阻害の魔法をかけて、気づかれていない間に気絶させてしまえばいいのです。ですから主様参りましょう?」

 そう言って手を引かれる。ノワールとディアルマの説明を聞いたら、確かにそれが1番確実なのだろうと思える。後は私の気持ち一つだ。知り合いを見殺しにしたくない。ならばとるべき行動は一つだけ。私は認識阻害の魔法をかけた。勿論ノワールとディアルマにも。透明人間をイメージすればいいからこの魔法は得意だ。
 認識阻害の魔法もかけた。ノワールとディアルマもいる。魔法薬だって持っている。ルーアの町で治療した時に使ったが、それでもまだ残っている。なにせ大量に持ってきたのだ。

「ノワール、ディアルマ。行きましょう!」

 とは言うものの足は生まれたての小鹿状態だし、顔色も真っ青だろう。それでも精一杯の強がりで笑ってみせる。二人が一緒なんだから、頑張ろう。
 私達は洞窟内へと歩き出した。




 

 洞窟内を歩いているが、やはり薄暗い。ほのかに発光しているキノコが唯一の光源だ。流石異世界。ファンタジーである。こうでも思わないとやってられないくらい怖い。 
 現実逃避をしつつ歩いていると、先頭を歩いてくれているディアルマが足を止めた。

「主、ここから100m先に敵がいる。数は3人だ。どうやら見回りしている奴ららしい。こっちに向かってくる」

「えっ!?ど、どうすれば…」

「主様、こちらです!さぁお急ぎ下さい!」

 ノワールに手を掴まれながら小走りで走り出す。なるべく足音をたてないようにしつつ、急がなきゃいけないのだが、かなり難しい。
 きた道を少し戻り、敵から死角になる位置に身を隠す。窪んでおり私達が余裕で隠れられる大きさだ。光るキノコもないので真っ暗で余計に敵からは見えないだろう。

「主様、敵が来たら気絶させます。そのまま奥に隠れていて下さいね」

「わかった。でも大丈夫?ノワールに危険はないの?」

「はい。私は大丈夫ですよ。一瞬で気絶させますから」

 そう言ってノワールは懐から何かを取り出す。筒状の物と、矢印に似た先端が尖った物。
 私は、それをよく知っている。日本人なら一度は聞いたことがあるだろう、吹矢だ。あの忍者が使っていたらしいやつ。そのままの吹矢がノワールの懐から出てきた。なんでもらっているんだ。 
 そうツッコミをしようとした時、足音が聞こえてきた。いうまでもなく敵の足音だ。一気に心拍数が上がる。変な汗も出てきた。敵が何やら話しながら歩いているが、何を言っているのかわからないくらい緊張している。ディアルマが、擦り寄ってくれているからなんとか保てているが、一人だったら恐怖で泣いていたと思う。




 敵が吹矢の射程範囲内に入ったのだろう。ノワールが吹矢を構える。そして狙いを定めて放った。

「うっ……」 ドサッ

「お、おい!どうした!?何があっ……」 ドサッ

「これはヤバイ急いで仲間にれんら……」ドサッ

……1番ヤバイのは敵ではなくノワールなのかもしれない。おそるおそる隠れていた場所から出て敵を見る。3人とも男だったが、どれも無頼漢そのもののような見た目をしている。そして…3人の首を見るとノワールが放った吹矢が見事に刺さっていた。寸分の狂いもなく同じ場所に刺さっている。私がやられたわけでもないのに、首がゾワッとした。
 ノワールはというと何処からか縄を取り出して男達を縛り始めた。それも普通の縛り方じゃない。忍者がより、敵を逃げられないよう拘束する為にと発達した亀甲縛りだ。
それを簡単そうにやっている。呆気にとられて見ていると完成したようだ。何処をどう解けばいいか、検討もつかない。ディアルマも引いている。
 そして私達の方を向いて穏やかに笑って言うのだ。


「お待たせ致しました主様。ご安心を、死んではおりません。眠られただけで御座います。ささっ次に参りましょう」



……訂正させて頂く。1番ヤバイのは敵ではなくノワールだ。断言する。






 
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