28 / 99
ルーアの町
忍者ですか…?
しおりを挟む「…はい…?連れ去られた…?」
え…?アルライトはそんな物騒なの…?以前は、呪われた父王を助ける為に、死の森と呼ばれるいかにもやばそうな名前の森に、一人でやってきた王子様。今回は町を助ける為にバロールを討伐しようとするSランクパーティーを連れ去った何者か。物騒過ぎませんか?それとも私がアルライトに馴染めていないだけ…?
「いや主、こんな事件は頻繁に起きていない。確かに地球に比べて、命の危機は魔物がいたりする分、身近にある。あるが、だからといってこんな事件はあまりないからな」
なるほど…じゃあ私は巻き込まれ過ぎだということか…?何故だ、私は自分の家と森を行き来する生活をしているのになんでですか…
「それよりも主様、如何致しましょう?」
「何が…?」
「助けに行かれますか?豪傑の皆さんの居場所なら掴んでおりますので助けに行かれるならすぐに出発できますよ」
…助けにか…行きたい、行きたいが怖い…だって、連れ去られたということは、連れ去った人がいるはずだ。Sランクパーティーを連れ去れるんだ、強いに決まっている。そんな人に勝てるだろうか…で、でも…
「た、助けに行きたい…ノワール、私を連れて行って!」
「かしこまりました。少し距離が御座いますので、ディアルマにお乗り下さい」
「うん。ディアルマ、お願いしてもいいかな…?疲れてない?」
「あぁ!疲れていないから大丈夫だ。さぁ乗ってくれ」
そう言ってディアルマが伏せてくれた。私が乗ったのを確認すると風のように走り出した。
ノワールは置き去り!?と後ろを振り返ろうとしたらなんと横にいた。風のように走っているディアルマの横に並走しているのだ。凄過ぎませんか…?見た目ユキヒョウのディアルマと、見た目人のノワールが並走しているところは違和感しかない。
走り続けてしばらく、草原を抜けて更に森を抜けて洞窟にたどり着いた。いかにもな雰囲気が漂っている。
「ノワール、ここなの…?」
「はい。間違い御座いません。あの強い光の魔法が使われた時、豪傑の皆さんを見失わないように追尾の魔法をかけたのです。その魔法が此処を示しています。なので確実に皆さんこちらにおられます」
じゃあ間違いはないだろう。来たはいいもののここからどうするべきか…
「さて、ノワール準備はいいか?」
「いつでもいける。私はこの洞窟内の構造を調べる」
「じゃあ俺は人だな。豪傑の奴らも、そいつらを連れ去った奴らも、皆調べよう」
「え…?何をするの?」
「大丈夫ですよ主様。私たちに全てお任せ下さい」
そう言って二人とも魔法を使っていく。じんわりと洞窟にむかって魔力が広がっていき、広がっていった魔力が戻ってくる。コウモリの超音波みたく洞窟内を探っているのだろうか?
暫くして二人同時に私の方を見る。どうやら終わったらしい。
「待たせたな主、終わったぞ。これで比較的安全に、洞窟内を進ることができる。豪傑の奴らは同じ所にいる。連れ去った奴らだが、人数は10人。5人は同じ所にいるが、2人は豪傑の奴らの見張り、3人はこの洞窟内の見回りをしているようだ」
「洞窟内部ですが、かなり入り組んでいるようです。豪傑の皆さんが捕われている場所は、最奥で御座います。この最奥に行く為には、連れ去った加害者5人が集まっている部屋を通らなければなりません。ですので戦闘を回避するのは厳しいかと」
「そんな…あっ!ノワールが使っていた地中に潜る魔法を使って一気に豪傑の皆さんの所まで行けば…!」
戦闘が回避できるのでは?と期待を持ったが、ノワールに首を横に振られてしまう。
「確かに、そうすれば戦闘は回避できます。ですが、この魔法は、私たちにしか使うことができないのです。故に、豪傑の皆さんのもとに行くことは可能ですが、助け出すことは不可能です」
「主、1番確実な方法は、このまま洞窟内部に忍び込むことだ。内部はわかっているし、人が近づいてきたらわかる。だから隠れながら進まないか?戦闘も俺たちがやる。主はサポートしてくれればそれでいいから。何も殺したりはしない」
「そうですよ主様、不安なら認識阻害の魔法を使っていきましょう?それに戦闘といっても、正面からやりあう必要性は全くないのです。認識阻害の魔法をかけて、気づかれていない間に気絶させてしまえばいいのです。ですから主様参りましょう?」
そう言って手を引かれる。ノワールとディアルマの説明を聞いたら、確かにそれが1番確実なのだろうと思える。後は私の気持ち一つだ。知り合いを見殺しにしたくない。ならばとるべき行動は一つだけ。私は認識阻害の魔法をかけた。勿論ノワールとディアルマにも。透明人間をイメージすればいいからこの魔法は得意だ。
認識阻害の魔法もかけた。ノワールとディアルマもいる。魔法薬だって持っている。ルーアの町で治療した時に使ったが、それでもまだ残っている。なにせ大量に持ってきたのだ。
「ノワール、ディアルマ。行きましょう!」
とは言うものの足は生まれたての小鹿状態だし、顔色も真っ青だろう。それでも精一杯の強がりで笑ってみせる。二人が一緒なんだから、頑張ろう。
私達は洞窟内へと歩き出した。
洞窟内を歩いているが、やはり薄暗い。ほのかに発光しているキノコが唯一の光源だ。流石異世界。ファンタジーである。こうでも思わないとやってられないくらい怖い。
現実逃避をしつつ歩いていると、先頭を歩いてくれているディアルマが足を止めた。
「主、ここから100m先に敵がいる。数は3人だ。どうやら見回りしている奴ららしい。こっちに向かってくる」
「えっ!?ど、どうすれば…」
「主様、こちらです!さぁお急ぎ下さい!」
ノワールに手を掴まれながら小走りで走り出す。なるべく足音をたてないようにしつつ、急がなきゃいけないのだが、かなり難しい。
きた道を少し戻り、敵から死角になる位置に身を隠す。窪んでおり私達が余裕で隠れられる大きさだ。光るキノコもないので真っ暗で余計に敵からは見えないだろう。
「主様、敵が来たら気絶させます。そのまま奥に隠れていて下さいね」
「わかった。でも大丈夫?ノワールに危険はないの?」
「はい。私は大丈夫ですよ。一瞬で気絶させますから」
そう言ってノワールは懐から何かを取り出す。筒状の物と、矢印に似た先端が尖った物。
私は、それをよく知っている。日本人なら一度は聞いたことがあるだろう、吹矢だ。あの忍者が使っていたらしいやつ。そのままの吹矢がノワールの懐から出てきた。なんでもらっているんだ。
そうツッコミをしようとした時、足音が聞こえてきた。いうまでもなく敵の足音だ。一気に心拍数が上がる。変な汗も出てきた。敵が何やら話しながら歩いているが、何を言っているのかわからないくらい緊張している。ディアルマが、擦り寄ってくれているからなんとか保てているが、一人だったら恐怖で泣いていたと思う。
敵が吹矢の射程範囲内に入ったのだろう。ノワールが吹矢を構える。そして狙いを定めて放った。
「うっ……」 ドサッ
「お、おい!どうした!?何があっ……」 ドサッ
「これはヤバイ急いで仲間にれんら……」ドサッ
……1番ヤバイのは敵ではなくノワールなのかもしれない。おそるおそる隠れていた場所から出て敵を見る。3人とも男だったが、どれも無頼漢そのもののような見た目をしている。そして…3人の首を見るとノワールが放った吹矢が見事に刺さっていた。寸分の狂いもなく同じ場所に刺さっている。私がやられたわけでもないのに、首がゾワッとした。
ノワールはというと何処からか縄を取り出して男達を縛り始めた。それも普通の縛り方じゃない。忍者がより、敵を逃げられないよう拘束する為にと発達した亀甲縛りだ。
それを簡単そうにやっている。呆気にとられて見ていると完成したようだ。何処をどう解けばいいか、検討もつかない。ディアルマも引いている。
そして私達の方を向いて穏やかに笑って言うのだ。
「お待たせ致しました主様。ご安心を、死んではおりません。眠られただけで御座います。ささっ次に参りましょう」
……訂正させて頂く。1番ヤバイのは敵ではなくノワールだ。断言する。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる