人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

文字の大きさ
37 / 99
皇都騒動

何で事件ばかり…

しおりを挟む

「さぁ主様、出来ましたよ」

「ありがとう!可愛い!ノワールは本当に上手だね」

「有り難き幸せ。主様、花冠がよくお似合いですよ」

 そう言って微笑んでくれる。花畑に到着した私達は遊んでいた。ディアルマを気にして上の空だった私に、ノワールが花冠を作りましょうと言ってくれたのだ。
 作り始めたのはいいのだが、私は下手くそ過ぎた。まん丸の輪どころか輪にすらならない。何故だ…見かねたノワールが私の花冠を作ってくれた。本当に綺麗な花冠だ。私の作った物が子供の工作なら、ノワールの作った物は売り物だ。

「凄いなノワール。こんなに綺麗な花冠、作ってもらっちゃって…本当にありがとう!」

「いえ、主様に喜んで頂けましたなら私も嬉しいです。主様、そろそろお客様がお見えにあるかと存じます。心の準備は宜しいですか?」

「…うん…頑張ります…」

 全然宜しくないが、頑張るしかない。せっかくディアルマが呼びに行ってくれたんだから。
 そんなことを思っていたらノワールが頭を撫でてくれた。花冠を着けているから軽くだったが、嬉しい。ノワールに頭を撫でられるのは好きなのだ。

「主様ならきっと上手くお話できますよ。さぁ、ディアルマが帰ってきたようです」




 ノワールがそう言った瞬間にディアルマが走ってきた。私は花畑の中心いるのだが、ディアルマは散らさないようにする為に浮いている。花からほんの少し浮くだけなので飛んだりはしていない。でもこれが飛んでいるように速い。空気抵抗などないかのようなスピードだ。私が乗っている時はいつも気遣って加減してくれる。だからこんなスピードで走っているディアルマは初めて見た。

「主、今戻ったぞ!あいつらは後から追いかけてくるから心配はいらない」

 そう言ったディアルマの顔は輝いていて、尻尾はピーンと立っており、何かを期待するように揺れている。褒めてほしいのだろう。本当にディアルマ可愛い…

「ありがとうディアルマ!皆さんを迎えに行ってくれて本当にありがとうね。凄く早くて驚いちゃった」

 ディアルマの頭を撫でると、尻尾がご機嫌に揺れて私の手に頭を擦り付けてくる。もっと撫でろと言わんばかりだ。
 ディアルマに癒され撫で続けていると足音が聞こえた。人だ。私が緊張で強張っているのがわかる。ドキドキしている固まっていると私を呼ぶ声がした。



「セーレさん…!」

 振り返ると息を切らし、髪も服も乱れているレンルナードさんの姿がそこにあった。よっぽど急いできたらしく、服の裾が破れていたりと割と悲惨だ。
 その後ろから男性が二人出てきた。ディアルマに聞いていた特徴からおそらくこの三人で来たのだろう。レンルナードさんと同じでなかなかに悲惨な状態だ。私を見て惚けた顔をしているが、何故だろう…?

「久しぶりだなセーレさん。元気にしていたか?」

 そう聞かれたので頷いて答える…声が出なかったのは許してほしい…

「そうか…なら良かった。後ろの二人を説明しても…?」

 もう一度頷く。

「ありがとう。こっちにいるクリーム色の髪にオレンジの瞳で、剣を持っているのはバロン。緑の髪に紺色の瞳、杖を持っているのがフォルだ。彼らは皇宮に仕えてくれている者なんだ。セーレさんに危害を加えることはないと保証する」

 説明された彼らは慌てて頭を下げているが…その瞳にあるのは不信感だ。私は思わずノワールの後ろに隠れる。
 そんな私を見てレンルナードさんが彼らに咎めるような視線を送れば直ぐに無くなった。上手く隠したといった方が正しいとは思うが、不信感丸出しの目で見られなくなったのでとりあえず話は聞けそうだ。

「お、お久しぶりです…レンルナード様…ど、どどどどうなさったのですか…?」

 よし!質問は出来たぞ!!

「実は…皇宮で困ったことが…俺の妹がまるで人形のようになってしまったんだ。起きているのに話すこともなく、目も合わない。ただ目が開いているだけ。食事も口の前に持っていかなければ口にしようともしない。移動も一人ではせず、手を引かれて漸く動き出す。明らかにおかしいのに原因がわからない。皇宮にいる者では分からなかったんだ。分かったのはもしかしたら、魔法薬で治るかもしれないということだけ。だからセーレさん!助けてほしい…!宜しく頼む…!」

 そう言って頭を下げる。レンルナードさんが頭を下げたからだろう。後ろの二人も頭を下げた。

 えっと…一つ言ってもいいですか…?
 なんでこんなに事件ばかり起きるんですか…??
 私…何かしました…??
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...