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皇都騒動
待つことにしました…
しおりを挟む「と、止まって!!」
私はディアルマに叫ぶ。背中に乗せてもらっているのだから、叫ぶ必要は全くないのだが、何故か叫んでしまった。
「どうした主?もうすぐで奴らのいる場所に着くぞ?」
私の方へ振り返りながら言う。尻尾で私の背中をポフポフ叩いて励ましてくれている…
「あの…ごめんなさい…や、やっぱり会いに行くのは怖いの…だから、この近くで待ってるから…呼んできてもらえないかな…?」
本当に申し訳ない…でもやっぱり怖いのだ。レンルナードさんだけならまだしも、知らない人が二人もいる。なんの用事がわからないのが、余計に私を不安にさせる。
俯いているしかできない私に、ポフポフ叩いている尻尾はそのままにしてディアルマが優しく声をかけてくれる。
「主、謝らなくていい。寧ろ言ってくれて有難う。俺が呼んでくるから、主はノワールと一緒にいてくれるか?この近くにも主の家程でないが、花畑があるんだ。野生の花だから大輪のものは少ないかもしれないが、充分綺麗だと思う。主は花が好きだろう?だからそこにいてくれないか?」
「そうですね。主様、私と一緒におりましょう。ディアルマなら大丈夫ですよ。花畑も美しい花が沢山咲いているはずです」
ノワールが手を差し出してくれる。どうやらこの手をとってディアルマから降り、花畑へ向かおうということらしい。
手をとってディアルマから降りる。本当に良いのかと顔を見れば頬を擦り寄せてくれる。
「主、そんな顔しなくていい。何も危ないことはないから」
そう言ってディアルマはその場に腰を下ろす。私が花畑に行くまで見送ってくれるつもりのようだ。ノワールも私が歩き出すのを待っている。
「ディアルマ、ありがとう。じゃあ…お願いね」
ディアルマに手を振って歩き出す。ノワールの案内の通りに進んでいるが…ディアルマ大丈夫かな…私はそれが気になって仕方なかった。
ーーーーディアルマside
「さて…行くか」
主を見送り、完全にその姿が見えなくなったところで、腰を上げる。主の頼みじゃなければ、絶対に人間を迎えになど行かない。
そもそも自分達の城で起きたことなのに、自分達の力で解決できないってどうなんだ?そんなに脆いのか…?帝国がこれだけ脆いなら、もっと小さい国など、最早国として機能していないのでは…?っと…そんなことより。
『まだ奴らは捜しているのか?』
木々に向かって念話を飛ばす。本来なら主とも出来るはずなのだが…もう少し主に魔力の使い方を習得してもらう必要がある。それまで主との念話はお預けだ。
『ハイ。サガシテイマス』
『ガンバッテイマスヨ』
『オオゴエデサケンデマス』
本当に面倒な奴らだな。諦めればいいものを。
『わかった。引き続き奴らを見張れ。頼んだぞ』
『オマカセクダサイ』
『ヤリトゲテミセマスヨ』
『ガンバリマス』
これでひとまず見失うことはなくなった。奴らは周りの木々に監視されるのだ。変なことをしようもんなら承知しない。
長時間主と離れたくないな…さっさと行って終わらせるか。俺は奴らのいる場所まで走った。
「セーレさん!!何処にいますか?セーレさん!!」
「おぉーい!!いたら返事をしてくれ~!!」
「あの…レンルナード様、確かに此方におられるのですよね?その魔法薬を作れるかもしれない方…」
「あぁ間違いない。確かにこの森だ。ただ…最深部で会ったから、この入り口付近にはいないかもしれない」
「…最深部?今最深部って仰いました?」
「言ったが?それがどうかしたか?」
「….どうかしたか?じゃありませんよ!!最深部ですよ!?我々だけではとても無理です!それにお話を聞く限り、その方は散歩に来ていらっしゃるのですよね?いつに来られるかもわからないのに、無茶ですよ!!」
「だがな、その無茶に縋るしかないだろう?俺達ではどうすることもできん。呪いなのか毒なのか、それすらも分からないのだ。確かにレンルナード様の仰っていることは無茶だ。だがやるしかないのだ」
「バロンの言う通りだ。俺の話に確実性が無いのも理解している。だが…ルーチェを救おうと思ったら、これしかないんだ。フィル、すまないが付き合ってくれ」
「はぁ……分かりました。分かりましたよ!此処まで来たんですから最後までお付き合い致します。
レンルナード様、その方の特徴は何かないのですか?あれば少しくらい捜し易くなるかと」
「特徴…真珠色の髪に、新緑のような緑の瞳が特徴的な、儚げな女性だった。歳は俺と、そう変わらないと思う。後は、常に従者を連れていたな。ノワールと呼ばれていた男と、後は喋る動物で確かディアルマと呼ばれていた」
「呼んだか?」
そう木の上から声をかけてやった。かなり近くまで来ているのに気づかないとは、余程鈍いらしい。
バロンと呼ばれていた男が剣を構える。反応は早いな。流石皇宮騎士団長の職に就くだけのことはあるのか。
フィルと呼ばれていた男は杖を取り出した。驚きはあるもののしっかりと俺を見据えている。いつでも魔法を使えるように小さく呪文を唱えているな。これも皇宮魔術師なだけあるということか。
まぁ俺には関係ない。
「久しいな、アキュリスタ帝国第二皇子。何故主を呼ぶ?」
「お久しぶりです。セーレさんにどうしてもお願いしたいことがあるんです。何処にいらっしゃいますか?」
「後ろの二人は?」
何故俺が問いに答えなければならない?しかも何処にいるかだと?簡単に教えるとでも思っていたのか。後ろの二人は俺が答えないことに苛立っているようだが…レンルナードはそうでもないらしい。簡単に教えてもらえるはずがないことは分かっていたようだ。
「城に仕えてくれている者達です。
二人とも武器を下ろせ。フォル、魔法を解除しろ」
その言葉に従い、武器を下ろしたか…上下関係ははっきりしているようだな。
「貴方が此方におられるということは、セーレさんもいらっしゃるんですよね?お願いします!合わせて下さい!」
「何故だ?」
「私の妹が…人形のようになってしまったんです。起きているのに何も反応がなく、目も合いません。食べ物も口の前に出されれば口にしますが、出さないと食べないんです。移動も手を引かれなければ動きません。この原因が知りたいんです!もし、魔法薬で治るのなら…治して頂きたいんです!お願いします!セーレさんに会わせて下さい」
人形のようか…それはきっと、主にしか治せないな。だが、主に危険がないとも限らない。ならば…
「主に会いたいのなら誓え。主に傷一つつけないと。破られれば、それ相応の報いを受けてもらう。勿論全員だ。どうだ?誓うか?」
俺がそう言うと今まで黙っていた奴らが反論してくる。
「レンルナード様!!そのようなこと誓ってはなりせん。お気づきでしょうが、彼は普通の獣とは違います。そんなものに誓うなど…!」
「俺もフォルに賛成だ。俺達はレンルナード様をお守りしなければならない。そんな誓い、もし何かあったら!
なぁ、俺達ではダメなのか?俺達が誓おう」
頼んできた分際で何を言うのか。それに、お前達が誓っても意味がない。全員でなければ。
俺が反応もせず黙っていると、レンルナードが声を上げる。
「フォル、バロン。俺の身を案じてくれるのは嬉しい。だが俺達は頼む立場だ。それに彼女に危害を加えなければいいだけだ。簡単だろう?」
「ほぉ?ならば誓うか?」
「はい。誓います。なのでセーレさんに会わせて下さい!」
「お前達は?」
反論した奴らを見る。言葉に詰まったようだが、自らの護衛対象が誓うと決めたのだ。誓わないわけにはいかないだろう。
「…俺は誓おう。レンルナード様が誓われたんだ、俺も誓わなければならない」
「私も誓いますよ…不本意ですが、主の為です」
「ならばよし!今誓いはなされた。その誓いの対価は主に会うこと。破った時は相応の報いを!!」
俺がそう言うと金色の光が現れる。ふわふわと浮いて奴らの体内に入り込んだ。これが誓いの証。破ればただではすまない。
「主の元に案内しよう。ついてこい」
後ろも振り返らずに主の元へ走る。何か言っているが気にもならない。それについてこれないならその程度だ。
何も気にせず、ただ主に会うことだけを目指して走った。
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