44 / 99
皇都騒動
ダンタリオン
しおりを挟む
ーーーーレンルナードside
帰って来られなくなる。そうバンに言われて驚いた。まさか知っていたとは思わなかった。痕跡を辿るといったが、厳密に言うと違う。今から使おうとしている魔法は、ここで起こったことを自分の意識を飛ばしてみる魔法だ。失敗すると帰り道をなくし、そのまま死ぬというリスクがある魔法。
「レンルナード様、知らないとでも思いましたか?これでも皇宮で働く者です。危険な魔法やらは勉強しましたよ。勉強したなかにあったんです。レンルナード様、私は貴方様を無事に陛下方の元に送り届けなければなりません」
バンの言うことも最もだ。確かに俺に何かあれば、一緒にいたバンが責任を取らされるかもしれない。お前がいたのに何をしていたと。
「バン。すまないが、俺のワガママを聞いてほしい。本当にすまない…バンの気持ちもわかる。それでも…頼む…!」
分かっているからこそ、頼みこむしかできない。俺は皇帝でもなんでもない。たまたま産まれた所が皇族だっただけだ。俺にできるのは誠心誠意頼むことだけ。
ずっと俺を見ていたバンがため息をついた。やれやれと言いたげな顔だ。
「わかりました。レンルナード様のお好きになさって下さい。ですが、一つだけお願いが御座います。絶対に無事に帰ってきて下さい」
「わかった、約束する。必ず帰ってくる」
「そのお言葉、確かに。お待ち致しております」
その言葉に頷いて、俺は魔法を発動させていく。
『我は願う。この地に起きた真実を見せよ。我は望む、この場の記憶を』
詠唱が終われば光に包まれる。眩しい光に目を眇めるとだんだん意識が遠くなってきた。必ず戻る。そう誓いながら俺は意識を手放した。
ーーーー過去
墓に一羽の鳥が止まる。
『オマエハマンゾクカ?』
嗄れた声が響く。周りには誰もいない。鳥は墓に向かって話しかける。
『オマエヲコロシタモノヲ ニククハオモワナイカ?』
『オマエハコウテイトシテ タダシイコトヲシテイタノニ』
『リカイサレズ ショケイサレタ』
『フクシュウシタイトハ オモワナイカ?』
返事が返ってくるはずもない。なのに話し続ける。まるで何かを言わせたがっているかのようだ。
『モシ オマエガフクシュウヲノゾムナラ テヲカソウ』
『ワタシニハ ソレダケノチカラガアル』
『イキカエルツモリハナイカ?』
鳥が喋るたびに黒いモヤが発生している。そのモヤがどんどん渦を巻いていく。
『アンデットトナリ ワタシニノテアシトナレルナラ イキカエラレセテヤロウ』
『シューベル・アキュリスタ!アンデットトナレ!!』
その言葉が合図だったのか、黒いモヤが墓に吸い込まれていく。
ガタッガタガタガタッ
墓石が揺れている。まるで中から出たがっているかのようだ。鳥がニヤリと笑う。鳥が笑える筈がないのに、その鳥は笑ったのだ。
『アンデットトナルカ!!イイダロウ サァイキカエレ!!!』
鳥が叫ぶ。
ガタガタガタガタッドゴォォォォッ
墓石が壊れた。中からアンデットとなってしまったシューベルが出てくる。その姿は白骨ではなく、生前の姿のままなのだろう。赤い髪に赤い瞳だが、髪は汚れ、瞳は淀んでいる。シューベルは満足そうに笑い、跪いだ。
『あぁ…いい気分だ…!!これで復讐ができる!感謝する、名前を聞いても?』
『ワガナハ ダンタリオン。オマエノアルジノナダ』
『シューベル、オマエノノゾムガママ二 フクシュウヲスルトイイ』
『なんと…!有り難き御言葉!ではまず、現皇帝を呪おう。次はそいつが大切にしている者だ…!!』
『クククッスバラシイフノマリョクダ キニイッタゾ!!オマエ二シメイヲアタエヨウ』
『使命?何ですか?』
かつては誰よりも傲慢な皇帝であったはずなのに、今はすっかり鳥の下僕に落ちたようだ。使命と聞いてウキウキしている。
『オマエタチガシノモリトヨブバショへイケ。ソコニイルオンナヲコロスンダ…!!』
『女…?どんな奴です?特徴は?』
『ダークウェルザローズヲツレテイルハズダ。ソイツヲカナラズコロセ。シッパイスレバオマエヲコロス!」
『ひぃっわ、わかりました!必ず殺して参ります!!』
『オマエノフクシュウヲ トゲタアトデカマワヌ。ハヤクイケ…!!!』
鳥が叫ぶとシューベルは消えていた。誰もいなくなった場所で鳥…ダンタリオンは嗤う。
『フフフッオマエノスベテヲ ウバウヒガタノシミダ。ルトラスヨ…マッテイロヨ…』
そう言い残して飛び立っていった。ダンタリオンがいなくなった後、破壊されていた墓石は元通りになり、静けさを取り戻していた…
ーーーーレンルナードside
「う…ん」
「レンルナード様…!お目覚めですか!?何処か変な所はありませんか!?」
バンが必死に話しかけてくる。まだぼーっとする頭でバンの方を見る。
「レンルナード様…?何を見たのですか?」
何を見たか…鳥が喋ってシューベルをアンデットにして…それからダンタリオンだと名乗って…
「セーレ!!」
そうだ…彼奴はダークウェルザローズを連れた者を殺せと言った。それが何かはわからないが、あの森にいる女なんてセーレしかいないだろう。
気づけば走り出していた。
「レンルナード様!?どちらに行かれるのですか!?お戻り下さい!!」
バンが引き止めてくるが、聞こえないフリをする。ダンタリオンが誰なのかは知らないが、やばい奴なのは間違いない。
どうか無事でいてくれ…!
帰って来られなくなる。そうバンに言われて驚いた。まさか知っていたとは思わなかった。痕跡を辿るといったが、厳密に言うと違う。今から使おうとしている魔法は、ここで起こったことを自分の意識を飛ばしてみる魔法だ。失敗すると帰り道をなくし、そのまま死ぬというリスクがある魔法。
「レンルナード様、知らないとでも思いましたか?これでも皇宮で働く者です。危険な魔法やらは勉強しましたよ。勉強したなかにあったんです。レンルナード様、私は貴方様を無事に陛下方の元に送り届けなければなりません」
バンの言うことも最もだ。確かに俺に何かあれば、一緒にいたバンが責任を取らされるかもしれない。お前がいたのに何をしていたと。
「バン。すまないが、俺のワガママを聞いてほしい。本当にすまない…バンの気持ちもわかる。それでも…頼む…!」
分かっているからこそ、頼みこむしかできない。俺は皇帝でもなんでもない。たまたま産まれた所が皇族だっただけだ。俺にできるのは誠心誠意頼むことだけ。
ずっと俺を見ていたバンがため息をついた。やれやれと言いたげな顔だ。
「わかりました。レンルナード様のお好きになさって下さい。ですが、一つだけお願いが御座います。絶対に無事に帰ってきて下さい」
「わかった、約束する。必ず帰ってくる」
「そのお言葉、確かに。お待ち致しております」
その言葉に頷いて、俺は魔法を発動させていく。
『我は願う。この地に起きた真実を見せよ。我は望む、この場の記憶を』
詠唱が終われば光に包まれる。眩しい光に目を眇めるとだんだん意識が遠くなってきた。必ず戻る。そう誓いながら俺は意識を手放した。
ーーーー過去
墓に一羽の鳥が止まる。
『オマエハマンゾクカ?』
嗄れた声が響く。周りには誰もいない。鳥は墓に向かって話しかける。
『オマエヲコロシタモノヲ ニククハオモワナイカ?』
『オマエハコウテイトシテ タダシイコトヲシテイタノニ』
『リカイサレズ ショケイサレタ』
『フクシュウシタイトハ オモワナイカ?』
返事が返ってくるはずもない。なのに話し続ける。まるで何かを言わせたがっているかのようだ。
『モシ オマエガフクシュウヲノゾムナラ テヲカソウ』
『ワタシニハ ソレダケノチカラガアル』
『イキカエルツモリハナイカ?』
鳥が喋るたびに黒いモヤが発生している。そのモヤがどんどん渦を巻いていく。
『アンデットトナリ ワタシニノテアシトナレルナラ イキカエラレセテヤロウ』
『シューベル・アキュリスタ!アンデットトナレ!!』
その言葉が合図だったのか、黒いモヤが墓に吸い込まれていく。
ガタッガタガタガタッ
墓石が揺れている。まるで中から出たがっているかのようだ。鳥がニヤリと笑う。鳥が笑える筈がないのに、その鳥は笑ったのだ。
『アンデットトナルカ!!イイダロウ サァイキカエレ!!!』
鳥が叫ぶ。
ガタガタガタガタッドゴォォォォッ
墓石が壊れた。中からアンデットとなってしまったシューベルが出てくる。その姿は白骨ではなく、生前の姿のままなのだろう。赤い髪に赤い瞳だが、髪は汚れ、瞳は淀んでいる。シューベルは満足そうに笑い、跪いだ。
『あぁ…いい気分だ…!!これで復讐ができる!感謝する、名前を聞いても?』
『ワガナハ ダンタリオン。オマエノアルジノナダ』
『シューベル、オマエノノゾムガママ二 フクシュウヲスルトイイ』
『なんと…!有り難き御言葉!ではまず、現皇帝を呪おう。次はそいつが大切にしている者だ…!!』
『クククッスバラシイフノマリョクダ キニイッタゾ!!オマエ二シメイヲアタエヨウ』
『使命?何ですか?』
かつては誰よりも傲慢な皇帝であったはずなのに、今はすっかり鳥の下僕に落ちたようだ。使命と聞いてウキウキしている。
『オマエタチガシノモリトヨブバショへイケ。ソコニイルオンナヲコロスンダ…!!』
『女…?どんな奴です?特徴は?』
『ダークウェルザローズヲツレテイルハズダ。ソイツヲカナラズコロセ。シッパイスレバオマエヲコロス!」
『ひぃっわ、わかりました!必ず殺して参ります!!』
『オマエノフクシュウヲ トゲタアトデカマワヌ。ハヤクイケ…!!!』
鳥が叫ぶとシューベルは消えていた。誰もいなくなった場所で鳥…ダンタリオンは嗤う。
『フフフッオマエノスベテヲ ウバウヒガタノシミダ。ルトラスヨ…マッテイロヨ…』
そう言い残して飛び立っていった。ダンタリオンがいなくなった後、破壊されていた墓石は元通りになり、静けさを取り戻していた…
ーーーーレンルナードside
「う…ん」
「レンルナード様…!お目覚めですか!?何処か変な所はありませんか!?」
バンが必死に話しかけてくる。まだぼーっとする頭でバンの方を見る。
「レンルナード様…?何を見たのですか?」
何を見たか…鳥が喋ってシューベルをアンデットにして…それからダンタリオンだと名乗って…
「セーレ!!」
そうだ…彼奴はダークウェルザローズを連れた者を殺せと言った。それが何かはわからないが、あの森にいる女なんてセーレしかいないだろう。
気づけば走り出していた。
「レンルナード様!?どちらに行かれるのですか!?お戻り下さい!!」
バンが引き止めてくるが、聞こえないフリをする。ダンタリオンが誰なのかは知らないが、やばい奴なのは間違いない。
どうか無事でいてくれ…!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
47
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる