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海の王国
話を聞きましょう
しおりを挟む「まずは質問だ。何故、王国を狙う?」
ディアルマが聞くと、黒の人魚は不適に笑った。
「それを聞いてどうするの?海に生きていないお前に一体何ができるというの?」
「何ができるか?できるもなにも別に何もする気はない」
「……え?」
何ができるのかと聞いたのに、何もする気はないと言われた黒の人魚は目が点だ。呆気にとられている。
「此処に来たのは、王国の女王に言われたからだ。黒の人魚に会いに行って何故こんなことをするのかを聞け…とな。俺達はこの海に探し物をしに来た。その探し物が、王国の国宝になっていたから、それを貰い受ける為の条件としてお前に会うことを命じられたんだ」
「セルスティーナが…?ふ、ふふふふ…やっぱり何も知らないのね…」
「何も知らないだと?どういう意味だ?」
「ふふふふふ…教えるわけないでしょう?」
そう言われたディアルマの目が細くなった。睨んでいるみたいな目だ。さっきから何も言わないノワールも、黒の人魚をじっと見ている。
「ん……」
「あっフェスルさん…!だ、大丈夫ですか…?」
回復薬を飲まして安静にさせていたフェスルさんが目覚めた。まだ意識がはっきりしないのだろう、ぼーとしている。
「おや、目覚めましたか」
いつの間にかノワールが近くに来ていた。
「うん。まだ本調子ではないと思うけど、目は覚めたから大丈夫だと思う」
「そうですか。それは良かったですね。ところで主様、あの黒の人魚なのですが、少々厄介です」
「厄介…?」
何がどう厄介なんだろう?
「あの黒の人魚は大切な物を王国に奪われたようです。それを取り返したくて襲撃を繰り返したのだと思われます」
「え?あの黒の人魚が教えてくれたの?」
「いえ、私達神の眷属にだけ使える手段があるのですが、今回はそれを用いました。ですので間違いないでしょう」
「そんなのがあるんだ…でもそれを使ってくれたのなら間違いないね」
「えぇ。ですが、やはり彼女の口から聞いた方が宜しいかと存じます。その方が確実に神の竪琴をもらうことができますから」
「だね…どうしようか…」
「本人に聞いてみましょうか。何を奪われたのですかと」
「それは…」
どうなんだろう?本人に聞いていいものだろうか?
私が悩んでいると
「貴方は何を奪われたのです?」
ノワールが聞いてしまった…いやあの…そんなこと急に言ってもいいの…?案の定黒の人魚は面食らってるし…
「きゅ、急に何を言うの?私は何も奪われてなんかない!!」
「すみませんが、私達に嘘は通用しません。貴方が何か大切な物を王国に奪われたことは分かっているのです。早く話して下さい。あまり手荒な手段はとりたくありませんから」
「とれるものならとってごらんなさい?どうせ大したことは出来ないのだから…ね?」
…黒の人魚さん凄い。ノワール相手に一歩も引いていない。でも…ノワール相手にそれはまずかったかもしれない。ノワールはもうイラッとしてしまっている。
「分かりました。手荒な手段がお望みなんですね。それならそうと早く言って下さいよ。時間の無駄です」
「なっ無駄ってどういうことよ!?このっ覚えてなさい!!これが解けばお前な…んて…」
黒の人魚の態度に、我慢の限界を迎えたノワールは、実力行使に出たようだ。まだ怒っていたのに、そんなことは関係ないと、ノワールは魔法を使う。
彼が使ったのは洗脳の魔法らしい。黒の人魚の怒りに燃えていた瞳が鎮まり、焦点が合わなくなった。ノワールは洗脳や、精神に影響を及ぼす魔法が得意だ。ダークウェルザローズの得意分野らしい。そんなノワールの洗脳魔法を受けたのだ。抵抗もできない。なす術もなく洗脳されるしかないのだ。
「問おう。お前は何故あの王国を狙う?」
「…恨みがある…から」
本心に帰れば絶対に答えてくれない。でも、洗脳をかけられれば、かけられた相手はかけた相手に従うしかない。ノワールの口調によって、更に洗脳は深くなっている。だから、黒の人魚さんは絶対にノワールに逆らえなくなった。故に隠したいことも隠せない。
「何故恨みがある?」
「奪われ…たから」
「何を?」
「わ…たしの…若さを…」
え??若さを奪われた??え~と…若さって奪えるもの…でしたっけ…?
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