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海の王国
話しましょう?
しおりを挟む「ノワール、洗脳を解いてくれる?話がしたいの」
「いいのですか?洗脳が解ければ、素直に話すという保証は出来かねますが…」
「それでもいいの。本人の口から直接聞こうと思う」
「…かしこまりました。では解除致します」
ノワールは呪文を唱え、解除していく。洗脳の解除を間違うと廃人になる恐れがあるので、慎重に進めなければならない。
それにしても…この騒ぎの中でも起きないってディアルマ、どれだけ強い魔法をクラーケンにかけたんだろう…ちゃんと起きるよね…?
「大丈夫だ主、クラーケンはちゃんと起きる。ただ特殊な魔法を使ったから、俺が解除しない限り起きない」
「え…?私声に出してた?」
何も声に出していないと思っていたのだが…
「いや、声に出してはいない。俺達は主と契約で繋がっているから分かるだけだ。何も心配する必要はない」
ということは私が思ったことは伝わってしまうということか…下手なこと考えないようにしよう
「あ、ありがとう。じゃあ終わったらクラーケン起こしてあげてね?」
「了解した」
ディアルマが頷いてくれたので一安心だ。フェスルさんは眠っているとはいえ、クラーケン相手に警戒心を緩めることが出来ず、手に武器を持っている。
「主様、終わりました。解除は成功いたしましたので、すぐにでもお話しできますよ」
「分かった、ありがとう」
そう言ってノワールに近づく。洗脳のとれた黒の人魚は少しぼーとしている。
「あの…お名前はなんていうんですか?」
そう聞いて暫く、漸く黒の人魚が我に返った。
「わ、私は…なんてことを…!!こんな奴らに洗脳されるなんて…!!誰がお前に教えるものか!さっさと出て行け!!」
黒の人魚は暴れ回っている。まぁ教えてくれるとは思っていない。一応聞いてみただけだ。私は深呼吸して気持ちを落ち着かせる。さぁ、ここからが勝負。
「では聞き方を変えます。貴方の名前はシェアリルなのではありませんか?」
しっかりはっきり聞いていく。少しでも強気に聞こえるように。
「な…」
黒の人魚は言葉をなくした。どうやら当たっていたらしい。
「当たっていますよね?シェアリルさん」
「な、何を言っているのか分からないわ。私はシェアリルなんて名前じゃない。そもそもシェアリルって誰?」
彼女は、普通に聞いているつもりなのだろうが、震えている。顔色も悪い。
「シェアリルというのは、シェルラ王国の聖女様らしいですよ。何でも、皆の為に自分の命を使い果たした、とても素晴らしい方だそうです。その方の死した後には、虹色の宝珠が残ったそうです」
「へ、へぇ…」
ものすごく顔色が悪い。さっきも悪かったが、更に悪くなった。
「シェアリルさんが亡くなられた後、残された皆さんは悲しまれたそうです。そういえば…シェアリルさんは、生前虹色の鱗をしていたそうですが、魔物達と戦い死んだ時は黒く染まっていたらしいです。自らの身を投げ打てるなんて…」
「違う!!」
投げ打てるなんて素晴らしいと言おうとした時だった。黒の人魚が思わずといったように口を挟んできた。
「私は…あいつらに無理矢理戦わされたのよ!戦えば願いを叶えてやるって言われて。それなのに…!私は力を奪いとられた。そのせいで私は…こんな姿になって…本当に許さない!!」
思いっきり憎しみを叫ぶ。やっぱり黒の人魚はシェアリルという名前なんだろう。
「ちょっと待ってくれ!!」
更に質問をしようと思ったら、フェスルさんに邪魔された。
「こいつが…シェアリルだと?あの伝説の??ふっ笑わせるな!!こいつが聖女なはずないだろう!!」
フェスルさんは受け入れられないようだ。
「フェスルさん…少し静かにして頂けますか?」
「しかし!!」
「静かにしてくださいっ!」
私が大声をあげたのが意外だったのだろう、フェスルさんは、面食らったような表情で固まってしまう。
「物語と事実が違うなんてよくあることです。この黒の人魚さんに洗脳をかけて得た情報と、フェスルさんが話してくれた物語は酷似しています。それに…黒の人魚さんは嘘をついていません」
「な、何を根拠に!!」
「ノワールとディアルマです」
「ノワールとディアルマ…?」
「はい。彼らは嘘を見破ることが出来ます。そんな彼らが何も言ってこないのです。だから嘘ではないはずです」
私だって、黒の人魚のことを信じることはできない。でも、二人のことは信じられる。そんな二人が何も言わないのだ、嘘はないのだろう。確認するようにみれば、二人とも大きく頷く。やっぱり間違っていない。
「シェアリルさん。一緒に王国に行きましょう」
「「はぁっ!?」」
シェアリルさんとフェスルさんはあり得ないといった様子だ。
「あのね、私は王国が大嫌いなの。いっそ滅んでしまえばいいと思うくらいにね。だれがあんな所好き好んで行くものですか!」
「いくらセーレの提案とはいえ、頷くことなんて出来ない!!何故この魔女を国に入れなければならないのだ!!」
「そうしなくては前に進めないからです」
「「はぁ?」」
今度は訳がわからないといった様子だ。この二人意外と仲が良いのではないだろうか。
「私はシェルラ王国の女王陛下に会いに行って、こんなことをする原因を聞いてほしいと頼まれました。でも貴方は話してはくれても、また繰り返すのでしょう?それでは竪琴が貰えないかもしれません。だから、確実に事情を話して頂きます」
そう言って転移魔法を展開させた。勿論皆も一緒だ。フェスルさんとシェアリルさんも一緒。
「ま、待ちなさい!何をしているの!?」
「セーレ!戯れのつもりならやめてくれ!」
「大丈夫ですよ。戯れじゃないですから」
二人に笑いかけてから魔法を発動させる。目指す場所はシェルラ王国王城だ。
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