人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

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海の王国

帰りましょう

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「良かったですね!主様、おめでとうございます!」

「やっとスタートラインだな…本当におめでとう」

「うん!二人のお陰だよ!本当にありがとう!」

 二人とも嬉しそうだ。本当に良かった…ダンタリオンさんが天国で大切な人と再会するには、まだまだ先は長いと思うけど、一歩前進だ。

「皆さんはこれからどうするんですか?」

 セルスティーナ様は穏やかな声で聞いてくる。

「どうする…ですか」

「えぇ。帰られるのならお送りできる所まではお送り致しますし、もし海の世界をもう少し見たいならご案内致しますよ」

「そうですね…」

 確かに、海の中を見て回るのも面白そうだ。この王国に来る前にも散々見たが、その時は必死だった。用事も終わった今ならゆっくり楽しめるだろう。

「海の世界を見て廻られるなら、この王宮に泊まられますか?海は広いですし、それに地上はもう夜が近いです。今日はゆっくりと見て、明日の朝帰られては?」

 どうしようかな…悩んでいると

「主様、お言葉に甘えては?折角そう言ってもらえているのですから。観光してみたいのでしょう?」

「うん」

 ノワールが耳打ちして提案してくれたそれに頷く。

「でしたら、なさったら宜しいではありませんか。先を急いでいるわけではありませんし」

「そうだね…じゃあお願いしようかな」

 私達の話し合いを辛抱強く待っていてくれたセルスティーナ様に向き直る。

「では…宜しくお願い致します。もう少しお世話になります」

「えぇ。どうぞ楽しんで行って下さいね」

 そう言って下さっているので、甘えることにしよう。どんな所があるのだろうか、とっても楽しみだ。

「では、ご案内致しますね」

 そう言ってフェスルさんが前に出る。フェスルさんに着いていけばいいようだ。たくさん楽しいことがあるといいな…!!





「もうお帰りになられるのですね…少し寂しいです」

 翌朝、セルスティーナ様がそう言って少し悲しそうな表情をした。

「わ、私もです。この国には楽しいことが沢山ありましたから…」

 フェスルさんに案内してもらって行った場所も、全て素敵だった。歌う貝や、踊る魚。輝いている海の中の鍾乳洞も見せてもらった。どれも地上にはないものばかりで、本当に綺麗だった。

「セーレ、もう行ってしまうのね…またいつでも遊びに来て?また会いたいわ」

 そう言ってくれるのはシェアリルさんだ。彼女とも一緒に過ごして沢山のことを教えてもらった。海の美味しい物や、危険な物から宝石まで。本当に知らないことばかりだった。後、回復薬の材料も手に入った。お陰で作れるものの幅が広がりそうだ。

「また機会があれば是非!では…そろそろ失礼しますね」

 私がそういえば、後の二人も一斉に立ち出した。基本的に二人はあまり会話に入ってこず、ずっと私の傍にいてくれた。

「本当に有難う御座いました。貴方達のお陰で、この海の世界はより繁栄していけますわ。近くまでお送りしますので、少しお待ちくださいな」

「ま、待ってください!!」

 セルスティーナ様が人を呼ぼうとしたのを慌てて止める。止められたセルスティーナ様は不思議そうだ。

「あの…此処で大丈夫です。私達は帰れますから。お世話になりました。フェスルさんにも宜しくお伝えください」

「待って下さい」

 次はセルスティーナ様が、帰ろうとした私達を引き止めた。

「本当に宜しいのですか?此方にも慣れていらっしゃらないでしょうし、お送り致しますよ?」

「そうよ。送ってもらった方が良いんじゃないかしら?」

 お二人とも心配してくれている。だけど…

「いえ、本当に大丈夫です。このまますぐに帰れますから。では、お元気で!!」

 そういうや否やすぐに転移魔法を発動させた。送られると困るのだ。主にルトラス様関連で。竪琴を手に入れたことを、ノワールに報告してもらったら、迎えに行くと言ってくれた。いらないと言ったのだが、本人が行く気満々で断れなかったのだ。主神様を見られるわけにはいかないだろう。そういうわけで逃げるように立ち去った。こなくていいと言ったのに…と思いながら。





「やっほ~っ☆セーレ達!竪琴を手に入れられたんだってね?見せて見せてっ☆」

 転移した先に待っていたのはルトラス様だった。いや早すぎません…?私達が転移してきたのは、この海に来た時に最初にいた場所だ。そこに行ったらテンションの高いルトラス様がいた。

「こちらです」

 そう言って竪琴を差し出す。差し出された竪琴を受け取ったルトラス様は、嬉しそうに竪琴を撫でている。

「おぉ~!!お帰り~!落としてしまってごめんね~今度からは落とされないと思うから、安心してねっ☆」

 竪琴を撫で回して話しかける姿は不審者だ。知っている人?でなければ絶対に声などかけない。

「はいセーレ☆大事にしてあげてね?」

「はい。落としたりなんてしませんよ」

「あははははっ☆」

 嫌味を言ったつもりだったのに笑われて終わった。本当にこの神様は…
 
「ところでセーレ」

「何ですか?」

 急に真剣な顔をして呼ばれた。あのゆるい雰囲気が嘘のようだ。私も背筋を伸ばしてルトラス様を見る。ノワールとディアルマも、背筋を伸ばしている。
 私達の顔を見渡したルトラス様は重々しい口調で呟いた。



「アキュリスタ帝国の皇都で、魔法薬屋をやってみない?」



 ………はい??




 
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