人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

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海の王国

遂に!

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「え、えぇと…力は完全に戻ったんですか?」

「えぇもうすっかり。完全に戻ったわ」

 そう言って麗しく微笑まれる。もう眩しすぎて目が潰れる…
 

「力が戻ったようで何よりです。少し話をしても?」


 セルスティーナ様が声をかけてくる。シェアリルさんは
、その声に応えるようにクルリと向き直り、微笑んだ。

「勿論ですわ。なんなりと」

 優雅にお辞儀をしている。もう…あの黒の人魚だった面影が見当たらない。力が奪われるとこうなるんですね…

「ありがとうございます。一体誰に奪われたのです?どうやら力だけでなく、他にも色々と奪われていたようですが…」

 やはりセルスティーナ様も気になるらしい。こんなけ色々変わればそうなりますよね…
 誰に奪われのかと聞かれたシェアリルさんは、顔を顰める。どうやら思い出したくもないらしい。苦々しげな顔で口を開く。

「今からずっと昔の大臣です。あいつは…私の妹を人質にとりました。妹を殺されたくなれば魔物を殺せと。私は抵抗できなかった。妹を救いたい一心で魔物と戦い、辛くも勝利しました。そして…疲れ果てて動けなかった私に、あいつは宝珠を近づけたのです」

「宝珠を…?それはこれですか?」

 そう言ってご自分の膝に置かれている宝珠を指す。虹色だった宝珠だが、シェアリルさんの力が戻ったことによって透明になっている。光も放っていない。

「はい。それは力を吸収する宝珠なのです。それで私の残っていた力を、根こそぎ吸い取ろうとしました。ですが、私が抵抗したことによって力の大半は吸い取られましたが、少し残ったのです。抵抗したが為に、若さも、理性も吸い取られましたが…」

「そうだったのですね…我が国の者が大変失礼なことを致しました。心よりお詫び申し上げます」

 セルスティーナ様は深く頭を下げる。フェスルさんも一緒になって頭を下げているが、下げられているシェアリルさんは不思議そうだ。

「何故貴方が謝るの…?貴方はその時産まれていなかったのに…」

「確かに私は産まれておりませんでした。ですが、そうとも知らず宝珠の力を使い続けた私も、その大臣と同罪なのです。もっと早く物語に疑問を持っておかなければなりませんでした。本当に申し訳ありません」

「私も…ろくに事情を知ろうともせず貴方を悪者だと決めつけてしまった。貴方に事情があるなんて考えもしませんでした。貴方に守られていたのに…本当に申し訳ありません」

 二人とも深々と頭を下げる。それをじっと見ていたシェアリルさんはクスリと笑った。

「お二人とも、頭を上げて下さい」

 そう言われ二人とも顔を上げる。そんな二人を優しい表情で見つめているシェアリルさんは、なんだか嬉しそうだ。

「良かった。この国はこんなに良い国になっていたんですね。私がいた頃は、あまり良い国とは言えませんでした。暴力もありましたし…でもこんな良い国になっていたなら、私も守っていた価値があります」

「そう言って頂けて光栄です。これからもより良くしていきます」

 セルスティーナ様は嬉しそうだ。国を褒められるのは嬉しいのだろう。フェスルさん笑顔で幸せそう。




「それで…皆さんはどうやって国を守っていくんです?もう結界は使い物になりませんが…」

 シェアリルさんが言いにくそうに告げる。そうか、この国の結界は虹色の宝珠によって作られていた。だから、元がなくなると、結界が使い物にならなくなる。というか造れない。

「それは大丈夫です。我が国には優秀な騎士達や兵士達がおりますし、国民もいます。なんとかなりますわ」

「はい。我らで国をお守り致します」

「そうですか…」

 シェアリルさんは、考え込んでいる。暫く考え込んで、名案が浮かんだのかパッと顔を輝かせた。

「私もこの国付近に引っ越そうかと思います!クラーケンもいますから、国の中は無理ですが…今いる洞窟は遠いですし。何かあれば力になりたいんです!」

 シェアリルさんの案は、王国側にとっても良いものだったようだ。お二人の顔が目に見えて明るくなった。

「そうして頂けるなら嬉しいわ。住処はご自分で良いと思える場所を探すのでしょう?」

「えぇ。自分で探したいです。やっぱり気に入った所に住みたいですから」

「分かりました。決まったら教えて下さいね。さて…セーレさん」

「は、はい!」

 急に呼びかけられて驚いた…セルスティーナ様は手招きをしている。呼ばれているので、近づかなければ…

「お、お呼びでしょうか?」

 すぐ前まで近づいていく。するとセルスティーナ様は麗しい笑みを私に向けた。

「セーレさん、本当にありがとう。貴方がいなければ、こんな良い結果にはなっていなかったはずです。貴方が求めているのは、神の竪琴ですね?」

「はい。そうです」

「では、差し上げましょう。両手を出してください」

 私は両手を出す。遂に、遂に貰える…!!




 セルスティーナ様が何か呪文のようなものを唱えた。すると私の両手に泡が集まってくる。今私が入っているシャボン玉に似ている。泡が消えてなくなると、竪琴が出現きた。それを両手で持つ。
 白い木で出来た竪琴だ。弦の部分は白金で、木の部分には葉っぱや花、鳥などの動物が彫られている。本当に綺麗…

「それは貴方の物です。どうか役に立ててあげて下さいね?ずっと飾られているだけでしたから」

「はいっ!有難う御座います!女王陛下!」

 私はノワール達と一緒に深くお辞儀をする。そんな私た達を見て、女王陛下は美しく微笑んでくれた。


 やっと、やっと!!竪琴を手に入れることが出来た!!な、長かった……

 
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