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神の息吹
自然の復活。でも謎も…
しおりを挟むどれくらい弾き続けただろう。
「主、目を開けてくれ」
そう言われて閉じていた目を開ける。
「わぁ…!」
目を開けて、見た景色は緑のある草原になっていた。短い草が生えていて、毒の沼は見る影もない。もともとなかったようだ。
「緑が芽吹き始めた。ここまでくれば、後は自分の力で再生できるだろう。本当にありがとう主、貴方のおかげで、この場所は守られた」
そう言ってディアルマは頭を深く下げる。自然の力を持つ神獣として、守らないといけないのだろう。本当に深く感謝してくれているのが伝わってくる。
「いえいえ、大丈夫だよ。神の息吹を復活させるのは、私の仕事だしね。それにしても、本当に凄いねこの竪琴。弾いただけで、毒の沼がなくなっちゃった」
「それは毒の沼が発生した原因が、穢れだからだ。穢れが地面に溜まって浄化されず、蓄積されていった結果が、毒の沼になったんだ。後は…ダンタリオンの影響かもしれない」
「ダンタリオンさんの…?」
「奴は神の宝玉を持って逃亡している。だが、ダンタリオンは今堕ちてしまっているんだ。それで穢れ、つまり瘴気が発生しても不思議じゃない」
「そっか… でも、この土地はもう大丈夫なんだよね?」
「あぁ。おそらく大丈夫なはずだ。問題は、この土地の主はどうなったのか」
主…?
「この土地には神の息吹があった。ならこれを護る者がいるはずなんだ。でもいない。もう死したのか…それとも何か別の理由があるのか…」
そう言うとディアルマは考え込んだ。死んだ?神の息吹を護る存在が、そんな簡単に?いや、神の息吹に異常があったからこそ死んでしまったのか。
「主様、気づいたことがあるのですが…」
「うん?何??」
何に気づいたのかな?でも良いことではなさそうだ。顔が強張ってある。
「地中に何かいるようです。おそらくこの下には空洞があり、そこに…神の息吹を感じます。行ってみる価値はあるかと」
「え…?神の息吹を?い、行ってみよう…か。何か原因があるのかもしれない」
ディアルマを見るとまだ考え込んでいる。あまり邪魔はしたくないが、声をかけなきゃね。
「ディアルマ!この下に何かあるみたい。ノワールが教えてくれたの、行ってみよう?」
そう呼びかけるとディアルマが、顔を上げて私を見て頷いた。
「あぁ。行ってみよう。下には神の息吹がある。そこを見てみたい」
そう言って歩き出した。何処から地下に降りたらいいのか、私には分からないが彼には分かるようだ。迷いのない足取りで進んでいく。
「此処だ。此処から下に行ける」
そう言って止まったのは、大きな石の前だった。私の身長よりもずっと高い。3mは確実にある。えっと…?此処って石…だよね?
「石…?どうやって行くの?」
疑問に思うのは私だけらしい。ノワールも平然としている。
「俺たちなら開けられるんだ。神の眷属だからな。主、下がってほしい。危ないことはないと思うが、念のために」
そう言われて後ろに下がる。二人は私が下がったのを確認してから、岩の前に立った。すると、二人の体が金色に包まれ出した。どんどん強くなる金色の光。その光が矢のように、鋭く石に向かって飛んでいった。
ヒュンッ…ゴォォォォ
凄い音を立てて、石が二つに割れた。割れた先には階段があって、地下に続いている。
「す、凄い…」
「これは神の眷属にしか開けられない。だから、人間は知らないだろう。さぁ、先を急ごう」
ディアルマは階段を駆け下りて行った。普段私を待ってくれるディアルマが…きっと気になることがあるのだろう。私達は慌てて追いかけた…
「はぁ…はぁ…はぁ…ディアルマ…?どうしたの?」
走り続けていたディアルマの足が止まる。着いた先は、大きな広間のようだ。まだ中を見れていないので、全貌が分からない。ディアルマは固まったまま動かない。まるで、信じられないものを目にしたような反応で、私の問いかけにも応える余裕がない。
「ディアルマ?どうしたと言うんだ?」
そう言ってノワールが、ディアルマが立ち止まっている入り口まで足を進める。
「こ、れは…」
ノワールも固まってしまった。ショックな出来事があったみたいな反応で、一点を見つめたまま動かない。
「二人とも、どうした…の…」
私も中を見て、言葉を失った。私の顔色は最悪だろう。見なくても分かる。ノワールも顔色が悪く、ディアルマの表情は引きつっている。それはそうだ。私もそうなっていることだろう。
私達の見た光景。そこには、一頭の白馬が真っ黒の鎖で全身を縛られており、血だらけで倒れていた。真っ黒の鎖からは、黒い何かが出ている。モヤのようにも見えるが…とにかく禍々しい雰囲気を漂わせている。
一体…何が…
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