人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく

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神の息吹

そんな…

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「何…これ?何があったの…?それに…この禍々しい鎖は…」

 なんとか衝撃から立ち直った。この光景は、異常としか言いようがない。神の眷属である二人の案内に従って来たのだから、きっとあの馬も神の眷属で、神の息吹を護っているのだろう。そんな存在が…何故…

「分かりません…あの馬は、この土地の神の息吹を護る聖獣だと思われます。聖獣が何故…」

「理由なんて考えている場合じゃないぞ!早くしないと、あの聖獣は死ぬ!あの鎖は瘴気で作られている。そんな物が巻きついていたら…堕ちるのも時間の問題だ!!」

「瘴気で鎖を?そんなこと出来るの…!?それに、堕ちるって?堕ちたらどうなるの!?」

 私がそう聞いたら、二人とも顔を逸らしてしまった。どうやら、私には聞かせたくないことらしい。でも、私は聞きたいのだ。これから先も、神の息吹を復活させていくつもりだからこそ。今後もこういったことが、あるかもしれないから。
 二人を見続けている私に折れたのだろう、ディアルマは話し始めた。

「俺達神の眷属は、聖なる力を持っている。それは聖獣であろうと同じ。だが…瘴気などの穢れには弱いんだ。俺や、ノワール程になると、自分の力で浄化できるから平気なんだが、神の息吹を護っている聖獣では、浄化するにも限界がある。浄化しきれなかった瘴気は、体を蝕んでいく。そして…聖なる気が完全に蝕まれてしまうと、存在が保てなくなって、死ぬんだ。このことを堕ちると言っている」

「そんな…どうしたらいいの?どうしたら治せるの?」

「この鎖をどうにかしないことには…尋常じゃない瘴気を感じる。それを全て浄化して、回復魔法をかければ治るはずだ。ただ…これはそう簡単には、浄化できないだろう。浄化するのだけでもかなり大変だ。その間に、あれは死んでしまう…」

「もうかなり体を蝕まれているようです。主様、一刻も早く竪琴を弾いてください。神の息吹を復活させ、聖獣の力を取り戻して下さい!」

「は、はい!」

 私は慌てて竪琴を取り出す。ふぅ…と息をして、竪琴を奏でる。さっきと同じ曲だ。これで治るといいんだけど…

 
   ポロロン…ポロロン…ポロロン

 
 私が竪琴を弾くたび、金色の光があたりに広がっていく。まるで水面に雫を一滴落としたように、穏やかに広がっていくのだ。その光は、白馬の下へと届く。白馬を縛り付けている鎖へ向かい、その光に当たった鎖は徐々に色が変わっていく。真っ黒だったのが灰色に、灰色だったのが白色にと変化し、禍々しい気配は消えていく。やがて鎖にヒビが入り始めた。あんなに固そうだったものが、まるで砂のように崩れ去る。鎖が完全に消え、縛られていた白馬が解放された。

「主っ!! 早く回復魔法をかけてやってくれっ!!」

「うんっ!」

 竪琴を小脇に抱え、両手を白馬の前に突き出して、回復魔法を使う。いちいち詠唱などしていられない。無詠唱で、白馬が治るまで治療を続けた。魔法薬を使えばいいのでは?と二人に聞いたが、ダメらしい。普段ならともかく、弱っている時には使わない方がいいらしい。体に負担がかかってしまうんだとか。本当に治って…お願いだから…






「主様、魔法を止めてください。もう怪我は全て治りました。後は…この聖獣次第です。神の息吹は完全とはいきませんが、復活しましたし、怪我は治したんです。もう聖獣が持つ回復力に祈るしか…」

「そっ…か…分かった!もう暫く此処にいてもいいかな?」

「あぁ。二人は此処にいて。俺は、地中に煌く海の宝石を探してくる」

 そう言い残してディアルマは探しにいってくれた。私とノワールは此処に残り、白馬を診ている。もう大丈夫らしいが、目覚めないことには安心できない。


    早く起きて…

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