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神の息吹
言い逃げならぬ与え逃げです。
しおりを挟む「あ、貴方!何してるんですか!?人の飲み物をしていない薬を与えるなんて…!!相手は弱っている人ですよ!?」
診てくれていた人が、ノワールに詰め寄っている。そりゃそうだ。病人にあんなやばい色の飲み物を、飲ませるなんて正気じゃない。
「大丈夫ですよ。主様が作られた魔法薬です。ちゃんと効きますよ、ちゃんと診ていて下さい。治ってきますから」
ノワールはめんどくさそうだ。私が作った魔法薬と聞いた診てくれていた人…彼でいいか。彼は私をガン見する。
「あ、あの…ちゃんと効きますから、ご安心下さい。この魔法薬をご存知なかったのも、無理はありません。ですが、きちんとした魔法薬ですから」
「何故ですか…?私は、冒険者ギルドに所属する医師として、沢山の薬も魔法薬も勉強しました。それに、これはなかった!!なのに何故!?」
かなり取り乱している。この人は、沢山の人を助けるために努力してきたんだろう。なのに、見つけられなかった。こうなっても仕方がない。
「材料が珍しい物ばかりなんです。シュワシュワの水と、虹色蝶々の羽、叫ぶ木の根、光の結晶、それから地中に煌く海の宝石が必要です。だから、作れる人が限られてしまっていて、流通することはなかったんでしょう」
私がそう言うと、彼は目を見開いた。ガルドさんも見開いている。
「そんな珍しい材料を、使っているのか…それはなかなか出回らない筈だ。本当にすまない…必ず返す。いつまでかかるか分からないが、材料は集めて返すと誓う。本当にありがとう…これであいつらは救われる…!!」
ガルドさんは涙目だ。いや、もう泣いている。
「大丈夫ですよ!無くなったわけじゃありませんから。では、私達はこれで。元気になったらミラージュファーマシーに来てくださいね。それでは」
そう言って去っていこうとした時だった。
「待って下さい!!私も、そのお店で働かせてもらえませんか!?お給料は要りません。お願いします、勉強したいんです…!!」
彼が必死に頭を下げてくる。その熱意は素晴らしいと思うが…
「それは無理です」
ノワールがスパッと断ってくれた。
「何故ですか!?そもそも店長は貴方じゃない筈です!」
「確かに私ではありません。ですが、無理なんです。私達だけでやる小さなお店を、主様はご希望です。お店は路地裏にあり、いつ開けているかも分かりませんから。では失礼します」
そう言うや否、ノワールは私と背中を押した。そして外に出たタイミングで、すぐさま転移魔法を発動させた。あっという間の出来事だ。早すぎて止めることもできなかった。
ミラージュファーマシーに着いた。私はすぐにノワールに声をかける。
「ノワール…ありがたいけど、流石に失礼じゃないかな…?確かに無理だけど、ちゃんとお断りしないと…」
「わざわざ主様が対応なさる必要は御座いません。あれは無礼ですよ。公衆の面前であんなのことを言って、断ったら主様のイメージに傷がついてしまいます。では、閉店の準備をしましょう。まだ途中でしたから」
ノワールはさっさと行ってしまう。
「もう…ノワールったら…」
思わずため息が漏れる。あんな言い方をして大丈夫かな…?
「主、気にすることはない。この店にはたどり着けないさ。さぁ、早く準備をしよう。疲れただろう?帰って休もう」
ディアルマもノワールと同じ意見のようだ。まぁ今更どうすることもできない。このミラージュファーマシーには、ルトラス様の魔法がかかっている。見つけるのは困難だ。会うとしたらお店の外に出た時くらいか。それならあんまり会わないだろう。もし会ったとしたら、ちゃんと謝ればいいか。
そう思い私は帰る準備を始めた。
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