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『GYUOHAEEEEN!!!』
見わたす限りの荒野の中に小さな山と見まごう巨大な怪物が立っている。
それはゴツゴツとした岩肌と太い頭を持っていた。
遥かに大きな体と対比しているので小さく見える頭も、大きな建物程あった。
そしてそれを見上げる少年がいた。
「ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!!!これは無理だ!どうしようもない!!!」
小学生ほどの見た目の少年は焦っていた。
普段は大人しいだけにこのように取り乱すことは珍しかった。
まさかこんな事になるなんて想像もしていなかった。
早くここから逃げないと。
この状況を放っておいて逃げるのは気が引けたが、どう考えても自分でどうにかすることは出来ない。
その結果、
「ごめんなさあああぁぁぁい!!!」
少年には謝りながら逃げることしかできなかった。
時は近未来。VR技術が普及した時代。
VR技術開発の初期はARが主流であった。
しばらくすると、より高次元の体験ができるのではないかということで意識没入型のVRも研究は進められた。
初めは軍事、医療用として開発が進められ、いくつかの科学技術のブレイクスルーがあり、ついには家庭で気軽に扱えられるまでになった。
余裕が出来ると、本来ならば無駄なことに使われるのは必然の流れ―。
娯楽に転用され始めるのはあっという間だった。
意識没入型のVRゲーム機器が開発され、あらゆるタイプのゲームが発表されることになる。
大き過ぎる期待の代償は落胆である。
それが分かっていた一部のプレイヤーは登場したばかりの新しい技術に期待を高めすぎまいとしていた。
それでも多くのプレイヤーはまだ見ぬ未知の体験に思いを馳せた。
ゲームが発売されると雑誌や掲示板、動画サイトでプレイした感想が広がる。
大多数は楽しめたというものだった。
初めての意識没入型VRとしてはいい出来であるというその感想は専門家の間でも見られた。
しかし、満足出来たのかと聞かれるとそうではなかった。
五感は再現されてはいたが、やはりどこか現実のものとは違った。
脳に送られてくる情報は、感覚の再現に必要な最低限に近い量だった。
プレイヤーはそれを如実に実感していた。
プレイに支障は出なかったが各感覚器官から来る映像や音、手触り、匂い、一つ一つの小さな違和感はその膨大な数の積み重ねによって無視できないものになっていた。
それから暫くの間様々なゲームが登場する。
中には成功を収めたものもあった。
上手く欠点を補った良作も出た。
実際、それなりに好評だった。
まだ民間でも利用され始めて間もない技術であること、新しい体験であったことから次第に人々はそういったゲームに満足するようになっていた。
それでもどこか、満足しきれない空気が隠しきれなくなっていた。
そんな中、あるゲームの発売が発表される。
ひっそりとHPのみ公開され、ベータ版はなく、事前情報も伏せられ、よって誰も詳しいことを知らなかった。
ただ一言、「思い描いていたものがここにある」と。
それだけがHPに書かれていた。
しかも、ほとんどなんの宣伝も行なっていないそのゲームにはどうやら既存のゲーム専用ハードではなく、オリジナルのハードもセットであるようだった。
新しいゲーム機の開発などそうそう容易にできることではない。
莫大な金もかかり、完成すれば、大々的に発表されるはずだ。
そのため当初は、『どこかの大手か新会社が新しいハードでも開発したのをではないか』、『既存のハードの後継機とどこかの新しいビッグタイトルではないか』と推測する者が現れ、多くのゲーマーの間で騒がれることになる。
ビッグプロジェクトの宣伝の初期段階として情報を小出しにしている様に見えたのだ。
しかし、HP以外の公式の場での発表やサービス開始前のイベントなどは一切なく、ハードが大手の新しい企画でもなければ、ソフトも新しいビッグタイトルや既存のタイトルの続編でもないことが分かり出すと、ゲームを作った会社を疑う声や、HP自体が嘘なのではないかという意見が出始め、次第に大きくなっていった。
当のゲーム会社も反応しなかった為、憶測は現実味を帯び始め、ついには興味を失うものが出始めた。
皆楽しみにしていた分、落胆が激しかった。
そしていつしか、ほとんどの者の頭からは忘れ去られていた。
一部のプレイヤーを除いては―。
それは本当に偶然だった。
夏になり大学の生活にも慣れた。
気の合う良い友人も出来た。
長期の休みということで夏に何をしようかと考えていたところだった。
ネットで色々と調べているとゲームの広告が目立つ。
大学は当時の学力では少し難しい都内の大学を受験したため、暫くの間ゲームはしていなかった。
たまにはいいかと、あまり興味もなかったゲームの情報をなんとなく見ていると、あるサイトを見つけた。
ほとんどなんの情報もなく、一言宣伝文句が書かれているだけだ。
本当に宣伝する気があるのかと思うようなゲームのHPである。
いや、もしかすると本当に宣伝する気がないのかもしれないと思った。
でも、そのゲームから目が離せない。
かろうじて、MMOであることだけは分かる。
が、それ以外はどんなゲームか全く分からない。
売り文句こそそれっぽいことを言ってはいるが、面白そうかそうでないか、好きか嫌いか以前に情報量の少なさ故に何も判断できない。
そのはずなのにこのゲームのことが気になって仕方がない。
少しの迷いと根拠のない確かな期待に、気がつくと発売日が迫っているそのゲームを彼は買っていた。
オリジナルのハードとセットのそのゲームは少し値段が高い気はしたがハードとセットの割には安く、特に散財する趣味もなくそれなりの小遣いやバイトの給料などを貯めていた彼は十分手持ちの貯金だけで購入できた。
彼は楽しい夏休みになりそうだとまだしばらくあるサービス開始の日に思いを馳せた。若干の不安と後悔はあったが…
発表当初すぐに忘れられたそのゲームは、リリースと同時にSNSの書き込みやクチコミ等でまたたく間に評判になる。
HPのみ公開され、「思い描いていたもの」と宣伝されたそのゲームはExpand Evolve Online エクスパンド・エボルブ・オンライン通称<EEO>。
これはちょっと怪しいゲームをプレイするとある青年の物語である。
見わたす限りの荒野の中に小さな山と見まごう巨大な怪物が立っている。
それはゴツゴツとした岩肌と太い頭を持っていた。
遥かに大きな体と対比しているので小さく見える頭も、大きな建物程あった。
そしてそれを見上げる少年がいた。
「ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!!!これは無理だ!どうしようもない!!!」
小学生ほどの見た目の少年は焦っていた。
普段は大人しいだけにこのように取り乱すことは珍しかった。
まさかこんな事になるなんて想像もしていなかった。
早くここから逃げないと。
この状況を放っておいて逃げるのは気が引けたが、どう考えても自分でどうにかすることは出来ない。
その結果、
「ごめんなさあああぁぁぁい!!!」
少年には謝りながら逃げることしかできなかった。
時は近未来。VR技術が普及した時代。
VR技術開発の初期はARが主流であった。
しばらくすると、より高次元の体験ができるのではないかということで意識没入型のVRも研究は進められた。
初めは軍事、医療用として開発が進められ、いくつかの科学技術のブレイクスルーがあり、ついには家庭で気軽に扱えられるまでになった。
余裕が出来ると、本来ならば無駄なことに使われるのは必然の流れ―。
娯楽に転用され始めるのはあっという間だった。
意識没入型のVRゲーム機器が開発され、あらゆるタイプのゲームが発表されることになる。
大き過ぎる期待の代償は落胆である。
それが分かっていた一部のプレイヤーは登場したばかりの新しい技術に期待を高めすぎまいとしていた。
それでも多くのプレイヤーはまだ見ぬ未知の体験に思いを馳せた。
ゲームが発売されると雑誌や掲示板、動画サイトでプレイした感想が広がる。
大多数は楽しめたというものだった。
初めての意識没入型VRとしてはいい出来であるというその感想は専門家の間でも見られた。
しかし、満足出来たのかと聞かれるとそうではなかった。
五感は再現されてはいたが、やはりどこか現実のものとは違った。
脳に送られてくる情報は、感覚の再現に必要な最低限に近い量だった。
プレイヤーはそれを如実に実感していた。
プレイに支障は出なかったが各感覚器官から来る映像や音、手触り、匂い、一つ一つの小さな違和感はその膨大な数の積み重ねによって無視できないものになっていた。
それから暫くの間様々なゲームが登場する。
中には成功を収めたものもあった。
上手く欠点を補った良作も出た。
実際、それなりに好評だった。
まだ民間でも利用され始めて間もない技術であること、新しい体験であったことから次第に人々はそういったゲームに満足するようになっていた。
それでもどこか、満足しきれない空気が隠しきれなくなっていた。
そんな中、あるゲームの発売が発表される。
ひっそりとHPのみ公開され、ベータ版はなく、事前情報も伏せられ、よって誰も詳しいことを知らなかった。
ただ一言、「思い描いていたものがここにある」と。
それだけがHPに書かれていた。
しかも、ほとんどなんの宣伝も行なっていないそのゲームにはどうやら既存のゲーム専用ハードではなく、オリジナルのハードもセットであるようだった。
新しいゲーム機の開発などそうそう容易にできることではない。
莫大な金もかかり、完成すれば、大々的に発表されるはずだ。
そのため当初は、『どこかの大手か新会社が新しいハードでも開発したのをではないか』、『既存のハードの後継機とどこかの新しいビッグタイトルではないか』と推測する者が現れ、多くのゲーマーの間で騒がれることになる。
ビッグプロジェクトの宣伝の初期段階として情報を小出しにしている様に見えたのだ。
しかし、HP以外の公式の場での発表やサービス開始前のイベントなどは一切なく、ハードが大手の新しい企画でもなければ、ソフトも新しいビッグタイトルや既存のタイトルの続編でもないことが分かり出すと、ゲームを作った会社を疑う声や、HP自体が嘘なのではないかという意見が出始め、次第に大きくなっていった。
当のゲーム会社も反応しなかった為、憶測は現実味を帯び始め、ついには興味を失うものが出始めた。
皆楽しみにしていた分、落胆が激しかった。
そしていつしか、ほとんどの者の頭からは忘れ去られていた。
一部のプレイヤーを除いては―。
それは本当に偶然だった。
夏になり大学の生活にも慣れた。
気の合う良い友人も出来た。
長期の休みということで夏に何をしようかと考えていたところだった。
ネットで色々と調べているとゲームの広告が目立つ。
大学は当時の学力では少し難しい都内の大学を受験したため、暫くの間ゲームはしていなかった。
たまにはいいかと、あまり興味もなかったゲームの情報をなんとなく見ていると、あるサイトを見つけた。
ほとんどなんの情報もなく、一言宣伝文句が書かれているだけだ。
本当に宣伝する気があるのかと思うようなゲームのHPである。
いや、もしかすると本当に宣伝する気がないのかもしれないと思った。
でも、そのゲームから目が離せない。
かろうじて、MMOであることだけは分かる。
が、それ以外はどんなゲームか全く分からない。
売り文句こそそれっぽいことを言ってはいるが、面白そうかそうでないか、好きか嫌いか以前に情報量の少なさ故に何も判断できない。
そのはずなのにこのゲームのことが気になって仕方がない。
少しの迷いと根拠のない確かな期待に、気がつくと発売日が迫っているそのゲームを彼は買っていた。
オリジナルのハードとセットのそのゲームは少し値段が高い気はしたがハードとセットの割には安く、特に散財する趣味もなくそれなりの小遣いやバイトの給料などを貯めていた彼は十分手持ちの貯金だけで購入できた。
彼は楽しい夏休みになりそうだとまだしばらくあるサービス開始の日に思いを馳せた。若干の不安と後悔はあったが…
発表当初すぐに忘れられたそのゲームは、リリースと同時にSNSの書き込みやクチコミ等でまたたく間に評判になる。
HPのみ公開され、「思い描いていたもの」と宣伝されたそのゲームはExpand Evolve Online エクスパンド・エボルブ・オンライン通称<EEO>。
これはちょっと怪しいゲームをプレイするとある青年の物語である。
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