1 / 37
ここではない何処かへ
しおりを挟む
「魔王様、次はどの種族を召喚なされますか?」
「次は8度目か…ならば人間の番か」
「承知しました。カシオン、次は人間を召喚せよ。…次は優秀なのを頼むぞ」
ローブを纏った魔物が魔法陣に呪文を唱え始める。周りを囲むように魔物達がその様子を見ていた。
次の成功を祈り真剣に祈る者、ほくそ笑みながら眺める者、己の欲望を願う者…。呪文を唱え終わると魔法陣が強く光り始めた。
――そして時を同じくして別の場所
ビルの上から下界を見下ろす。地面を行き交う有象無象が、今日も働き蟻のように蠢いている。
「さぁ愚民どもよ!我のために働け!」
私が手を挙げながらそう叫ぶと民衆は跪き祈るような姿で私を崇拝する……
な~んて事は全くない。むしろ愚民は自分の方だ。今日も一日、仕事頑張りますよ~。
私の名前は沖田創士(おきたそうじ)。幕末のあの方とは一切関係ない。今まで何度名前負けと言われただろうか。それに「そうじ」が掃除屋なんて皮肉なもんだ。今日もビルの屋上からロープを垂らしガラス清掃の仕事だ。
もうすぐ昼ごはんの時間なので、このロープを下がったら昼休憩にしようと考えながら作業にかかる。
垂れ下がったロープにつけた、公園のブランコのようなイスに座ってガラスを掃除する。屋上からこのイスに乗り込む時が一番怖い。まぁ座ってしまえば後は下がりながらガラスを掃除していくだけなので、それほど怖くはない。
今日は風も無いし気温もちょうど良い。まさにロープ作業日和と言えよう。
鼻歌を歌いながら作業し8階部分に差し掛かった時である。
「痛っ!」
下から突風が吹いた瞬間、右手に痛みが走る。
「鎌鼬か?」
そう呟いた時、一瞬の浮遊感の後、落下している事に気付く。ロープ作業の事故として最悪なケースが落下だ。そうならないようにロープ作業従事者は基本として降下するロープと落下防止装置を付けた補助ロープの2本を垂らして作業をする。
(2本とも切れてる!?まだ新品から5回しか使ってないのに!)
どれだけもがいても落ちる事を止める事はできない。
下に人は居ないか!?、クッションになるようなものはないか!?、そんな事を思いながら地面を見た。そこにはーー
「魔法陣?」
確かにそこには宙に浮かぶ魔法陣があった。
(なるほど、人は死ぬ前には走馬灯を見るって聞いてたけど、本当はありえないものを見るんだな)
この魔法陣が柔らかいクッションになって助かった、なんて淡い期待を抱きながら落下を続ける。
(頼むっ!何か起きてくれ!)
魔法陣に乗れる事を期待して体を丸め衝撃に備える。そして魔法陣に体が触れた瞬間ーー
衝撃は無く、すり抜けてしまった事実に目の前が真っ暗になる。しかしこれは表現としての「目の前が真っ暗」ではなく、文字通り真っ暗なのだ。
暗黒の空間でも思考を巡らせることは出来た。落下している感覚はなく浮遊しているように感じる。
(ここが死後の世界なのか…?)
とりあえず苦しむ時間が無かったのは幸いか、そんな事を思っていると5メートル先の床に魔法陣が浮かび上がってきた。この空間に床があるのかは分からないが。
(何か出てくるのか?綺麗な女神様とかだったらいいなぁ)
3分ほど魔法陣をぼんやり眺めていたが何も起きなかった。もしやこれは自分が魔法陣に入るタイプなのだろうか。
宙に浮いてるような感覚なので、とりあえず平泳ぎで進んでみる。少しづつではあるが魔法陣に近づいていく。魔法陣の上まで来たところで乗れるか試してみる。
「お、乗れた」
ふわりと着地すると足元の魔法陣が光り出し、暗黒の世界が光だした。まるで目の前で車のハイビームを点けられたような眩しさに思わず目を瞑る。
先程まで無音の世界だったのだが、急に周りからざわめく音が聞こえたので目を開ける。
目の前には見上げるほど大きな玉座。そこに座るのは明らかに人間ではない巨躯な何か。そう、まるでRPGに出てくる魔王そのものであった。
「次は8度目か…ならば人間の番か」
「承知しました。カシオン、次は人間を召喚せよ。…次は優秀なのを頼むぞ」
ローブを纏った魔物が魔法陣に呪文を唱え始める。周りを囲むように魔物達がその様子を見ていた。
次の成功を祈り真剣に祈る者、ほくそ笑みながら眺める者、己の欲望を願う者…。呪文を唱え終わると魔法陣が強く光り始めた。
――そして時を同じくして別の場所
ビルの上から下界を見下ろす。地面を行き交う有象無象が、今日も働き蟻のように蠢いている。
「さぁ愚民どもよ!我のために働け!」
私が手を挙げながらそう叫ぶと民衆は跪き祈るような姿で私を崇拝する……
な~んて事は全くない。むしろ愚民は自分の方だ。今日も一日、仕事頑張りますよ~。
私の名前は沖田創士(おきたそうじ)。幕末のあの方とは一切関係ない。今まで何度名前負けと言われただろうか。それに「そうじ」が掃除屋なんて皮肉なもんだ。今日もビルの屋上からロープを垂らしガラス清掃の仕事だ。
もうすぐ昼ごはんの時間なので、このロープを下がったら昼休憩にしようと考えながら作業にかかる。
垂れ下がったロープにつけた、公園のブランコのようなイスに座ってガラスを掃除する。屋上からこのイスに乗り込む時が一番怖い。まぁ座ってしまえば後は下がりながらガラスを掃除していくだけなので、それほど怖くはない。
今日は風も無いし気温もちょうど良い。まさにロープ作業日和と言えよう。
鼻歌を歌いながら作業し8階部分に差し掛かった時である。
「痛っ!」
下から突風が吹いた瞬間、右手に痛みが走る。
「鎌鼬か?」
そう呟いた時、一瞬の浮遊感の後、落下している事に気付く。ロープ作業の事故として最悪なケースが落下だ。そうならないようにロープ作業従事者は基本として降下するロープと落下防止装置を付けた補助ロープの2本を垂らして作業をする。
(2本とも切れてる!?まだ新品から5回しか使ってないのに!)
どれだけもがいても落ちる事を止める事はできない。
下に人は居ないか!?、クッションになるようなものはないか!?、そんな事を思いながら地面を見た。そこにはーー
「魔法陣?」
確かにそこには宙に浮かぶ魔法陣があった。
(なるほど、人は死ぬ前には走馬灯を見るって聞いてたけど、本当はありえないものを見るんだな)
この魔法陣が柔らかいクッションになって助かった、なんて淡い期待を抱きながら落下を続ける。
(頼むっ!何か起きてくれ!)
魔法陣に乗れる事を期待して体を丸め衝撃に備える。そして魔法陣に体が触れた瞬間ーー
衝撃は無く、すり抜けてしまった事実に目の前が真っ暗になる。しかしこれは表現としての「目の前が真っ暗」ではなく、文字通り真っ暗なのだ。
暗黒の空間でも思考を巡らせることは出来た。落下している感覚はなく浮遊しているように感じる。
(ここが死後の世界なのか…?)
とりあえず苦しむ時間が無かったのは幸いか、そんな事を思っていると5メートル先の床に魔法陣が浮かび上がってきた。この空間に床があるのかは分からないが。
(何か出てくるのか?綺麗な女神様とかだったらいいなぁ)
3分ほど魔法陣をぼんやり眺めていたが何も起きなかった。もしやこれは自分が魔法陣に入るタイプなのだろうか。
宙に浮いてるような感覚なので、とりあえず平泳ぎで進んでみる。少しづつではあるが魔法陣に近づいていく。魔法陣の上まで来たところで乗れるか試してみる。
「お、乗れた」
ふわりと着地すると足元の魔法陣が光り出し、暗黒の世界が光だした。まるで目の前で車のハイビームを点けられたような眩しさに思わず目を瞑る。
先程まで無音の世界だったのだが、急に周りからざわめく音が聞こえたので目を開ける。
目の前には見上げるほど大きな玉座。そこに座るのは明らかに人間ではない巨躯な何か。そう、まるでRPGに出てくる魔王そのものであった。
0
あなたにおすすめの小説
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる