「そうじ」の力で異世界は救えるか?

掃除屋さん

文字の大きさ
3 / 37

姫様の計画

しおりを挟む
 突然の提案に驚いてしまった。まさか異世界に来てまで元の世界と同じ事をするとは思わなかったからだ。驚いた顔で固まっていると彼女が話し始めた。

「ごめんなさい、急にこんなこと言っても驚くわよね。まずは自己紹介。ワタシの名前は第8王女デッドアイ。デッドアイ・ベルライト・ノーヴィランよ。」

 どうやら彼女、姫様だったらしい。確かに端正な顔立ちにスタイル抜群のプロポーション。艶のある黒髪からは立派な角が生えている。どこか気品のあるオーラは王族のそれなのだろう。

「ワタシはね、お父様が次に人間を召喚するって言った時から楽しみにしてたの!魔王城に人間が来るの初めてなのよ」

 姫様である以上あまり失礼な態度はとれないのだが、自分はただの一般人。貴族的な振る舞いなんぞアニメや映画でしか見たことはない。

「姫様、私は平民の出です。礼儀作法が分かりません。失礼な態度をとってしまうかもしれません」
「大丈夫大丈夫、別にワタシの下僕になれって事じゃないの。あのね、ここって人間はワタシだけなの。正確には人間と魔族のハーフだけど」

 彼女はとてもフランクに話しかけてくる。少しだけ緊張が解れた気がする。

「それでね、同じ価値観を持ってる人が欲しかったの」
「同じ価値観…ですか」
「そうなの、あのねワタシ達って人間のような生活様式とは違うのね。だからその…なんというか…」

 彼女は少しだけ顔をしかめながら言った

「不衛生なのよね、この城…」

 確かにここはキレイとは言い難い。私は清掃業なのでガラス掃除だけでなくハウスクリーニングもやるし、床やカーペット清掃、トイレ清掃、エアコンクリーニング等々、基本的にはお客様に言われれば何でもやる。なので普通の人よりは臭い耐性もあるし多少不衛生でも慣れたものだが、おそらくこの魔王城内には掃除という概念は無いに等しいと思った。

「確かにそうですね、魔王城には召使いとかメイドとかいないんですか?」
「使い魔に物を運ばせたりとかはあるけど、掃除は見たことないわね」
「これは中々…大変だなぁ」
「まずはね、この付近のエリアを何とかしてほしいの。ここはワタシの部屋が近いの」
「できれば地図か図面みたいのがあると助かるのですが」
「持ってないわよ、そんなもの。でも…そうね。とりあえず空き部屋があるからそこで待ってて。」

 姫に案内され空き部屋とやらに来たが…

(椅子と机はあるけど、ほぼ倉庫だな…)

「ここで待ってて。あ、今日からここはアナタの部屋として使っていいから」

 そう言うと彼女はドアをバタンと閉めてどこかへ行ってしまった。

(とりあえずヘルメットとハーネスと腰袋を外そう)

 この世界に召喚される前の格好だったので、ロープ作業の装備一式を外して近くの椅子に腰掛ける。

(なんか一息ついたら、どっと疲れた…)

 窓から外をぼんやりと眺める。暗雲が垂れ込んでいる景色に異世界っぽさを感じながら今後の事を考えようとするが、あまりにも考えることが多すぎて頭が痛くなり考える事をやめた。

(なるようにしかならないか…)


 廊下から足音が聞こえてくる。バンッ!とドアを乱暴に開けながら彼女が入ってきた。手には大きな筒状の紙のようなものを持っていた。

「ジャーン!紙とペンを借りてきたわ」
 
 満面の笑みで鼻歌を歌いながら彼女は机に向かった。まるで戦争映画の司令部よろしく、机の上のものを薙ぎ払って紙を広げた。そしてペン…というか羽ペンなのだが、一体何の羽なんだろうか、とても禍々しい。

「ここがこの部屋ね、それで――」

 彼女は紙にこの辺りの地図を書き込んでいった。
 (てか、この羽ペン凄っ!インクに浸してないのに書けてる)
 
「――で、ここがワタシの部屋ね。ここは立ち入り禁止!絶対!わかった!?」

 顔をグイッと近づけて警告してきた彼女に思わず体を退け反らせてしまった。首を縦に振って了解の意を示す。これでこの辺りの大体の間取りが把握できた。

「まずはワタシの部屋の前から廊下を掃除してちょうだい。この辺りはスライム達とかスケルトン達が徘徊してるの、それでね問題はスライム。彼らの通った跡があちこちにあるでしょ、それにすこし臭うのよ」

 ここに来るまでの廊下にナメクジの通った跡のようなものが、そこかしこにあったのはスライムの通った跡だったらしい。

「姫様、掃除するのは構わないのですが…掃除道具とかってあります?」
「無いわね。あ、箒なら人間の街に行けば買えると思うけど」
「そうですか…しかしこの世界のお金持ってな――」
「行く!?なら一緒に行きましょ!お金なら心配ないわ!あぁ…誰かと街に行くなんて初めてだわ!ちょっとワタシ準備して――」

 言い終わる前に部屋から飛び出して行ってしまった。テンション高いなあの人。とはいえ魔族の姫が人間の街に行って大丈夫なのだろうか。私は机から落とされた小物を片付けながら待つ事にした。

「さあ!出発よー!」

 開けっ放しの扉の先に、仁王立ちで1人の美女が立っていた。姫なのだが角が無い。服装もお嬢様という感じの服に着替えていた。誰がどう見ても人間に見えるだろう。

「早く!ミシオンのところに行くわよ!」

 彼女は僕の手を引いて駆け出した。

(めっちゃイイ匂い…)

 彼女の残り香を楽しみながら走る…はずだったのだが、人間と魔族の性能の違いを思い知らされた。

「ひ、姫!は…速すぎる!」

 風に揺られる鯉のぼりのように、僕は姫の後ろを泳いでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...