「そうじ」の力で異世界は救えるか?

掃除屋さん

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怒り心頭に発する

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 作業はオーガ達のおかげで順調に進んでいる。パワーがあるというのは羨ましい限りだ。

 放水係の王女2人はというと…昨日の出来事である。エーデルは魔龍人の特性を活かして空から放水を始めた。それを見てデッドアイは悔しそうにしていたのだが、今日デッドアイの足を見ると飛翔石が装備してあった。2人は空から放水を始め、時折お互いを撃ち合ったりしている。

 創士とブランとムルトゥは最後の仕上げ、オーリリー部隊が削った場所をウォーターガンで洗う。ゆっくり丁寧に仕上げていくブランに対して、ムルトゥはスピード重視で仕上げていく。

 5日目くらいからだろうか。噂を聞きつけてドラゴン達が見学にやってきた。ドラゴンに囲まれるのはちょっと怖い。この頃になると作業も終盤に入り、残りは首から上を残すのみとなった。本来ならば『掃除は上から』が基本なのだが、今回は作業初心者がほとんどなのに加え、なるべく早い段階で多くの鱗を露出させて欲しいというレサーナのお願いがあった為だ。

 
―――長老 上空―――

 デッドアイが長老の頭に何かを見つけた。
(あら?長老の頭に吸血スライムが付いてるわ。嫌いなのよね~血吸ってくるから。ていうかデカっ!気持ち悪いわ~。爆散させちゃお!ドラゴンだし、ちょい強めでも傷は付かないわよね!)

 デッドアイは手に闇魔力を球体にして振りかぶった。

―――長老前 地上―――

 創士の腕輪はブランから借りた魔力を使えるようになるものだが、溜め込んだ魔力を放出し続けるというものなので、魔力が切れたら補充せねばならない。
 今も例に漏れず魔力切れの状態なのでブランとムルトゥに補充してもらいながら世間話をしている。
 そこにエーデルが小休止がてら降りてきた。

「アンタ達、盛り上がってるわね」
「エーデル知ってたべか?創士の住んでた所のドラゴンは、蛇みたいな体してて、羽も無いのに飛ぶんだって!」
「へぇ~変わってるわね」
「それでな、顎の下に『ゲキリン』とか言う絶対に触れちゃいけねぇ場所があるんだって!」
「エーデル王女、こちらのドラゴン族にはそういった触ってはいけない弱点みたいのはあるんですか?」
「いえ、聞いたことないわ。でも弱点っていったら、お爺様って昔、異世界の勇者とかいう奴に頭につけられた傷があってね、私がまだ小さい頃にそこを叩いたら怒っちゃって!そこが弱点かもね。でも仕方なかったのよ?だって傷口の瘡蓋が吸血スライムみたいで気になっ……」

 炸裂音が鳴り響いた瞬間、大地を揺るがすような咆哮が頭上から降り注いだ。

 『グオォォォォォォ!』

 下にいた全員が上を見上げる。そこには口を大きく開いた長老と、長老の頭に立ち登る煙、そして宙に浮かぶデッドアイの姿だった。

 ヤバいと思ったのかこちらに降りてくるデッドアイ。

「アンタお爺様に何したの!」
「頭に吸血スライムが付いてたから倒そうと思って…」
「このバカ‼︎」

 創士は目の前で口論する2人の向こう側で、山のようなドラゴンが手を振りかざしているのを見た。

「ブラン!」
「姉様!」

 矢のように走って行くオーリリーの呼び声に答えるようにブランが攻撃力上昇の魔法をかける。尻尾の部分を足場にして飛び上がると、振り下ろされるドラゴンの手を横から「オーガ専用たがね」で振り抜いた。
 創士達の頭上に叩きつけられるはずだった手は軌道を変え、少し離れた場所を叩きつけた。あまりの威力に巻き起こった風圧だけで創士は倒れてしまった。

 長老の目は赤く染まり、牙を剥き出しにして殺意を撒き散らす。

「おい見ろ!たがねがグニャグニャだぜ!」

 嬉々として報告するオーリリー。しかしその頭上では怒り狂ったドラゴンが大きく息を吸い込んでいた。

「全員集まりなさい!」

 エーデルが叫ぶと全員がエーデルの元へ駆け寄る。息を吸い終わった長老の口から、全てを焼き尽くさんばかりの炎が吐き出された。辺り一面が炎で覆い尽くされる。

「アンタ達、私に魔力を!」

 炎の下で全員を包むように障壁を張っているのはエーデル王女であった。しかし長老の放つ炎の威力は凄まじくエーデルの魔力は凄まじい勢いで消費されていく。
 ブランとムルトゥはエーデルに触れると魔力を流していった。

 
 長老が炎を吐き終わると同時に障壁は消えた。魔力を出し切ったエーデルはその場にへたり込む。

「次が来るわ…デッドアイ…アンタの魔力貸しなさい!」

 デッドアイは嫌そうな顔をして拒否をしようとするが、創士がデッドアイの頭を叩いて叱った。

「アイ王女そんな事してる場合ですか⁉︎」

 顔を膨らませながらも渋々了解したデッドアイはエーデルの両手を掴んで言い放った。

「アナタ、ワタシの魔力流入に耐えれるのかしら…ね!」

 そう言って全力で魔力を流し始めた。凄まじい魔力がエーデルに流れ込んでいるのが創士の目からも分かる。

「うぐっ…この…量なら!」

 エーデルは長老の前まで飛び上がると大声で語りかけ始めた。

「お爺様!私です!お気を確かに!」

 しかし、声は届かず長老はエーデルを一瞥すると創士達の方を見て口を開けた。
 上顎と下顎の真ん中に小さな火球が発生した。長老は魔力を溜め始める。すると火球はみるみる大きくなっていく。

「ごめんなさいお爺様!」

 そう言うとエーデルはデッドアイから受け取った魔力を解放してドラゴンに変身した。長老に比べれば小さいが、その辺のドラゴンに比べれば遥かに大きい。

 エーデルドラゴンは高速で長老の顔まで飛んでいくと、その勢いのまま半回転し、大木のような尻尾で長老の横っ面をビンタした。凄まじい衝撃音と共に長老の頭が大きくグラつく。
 しかしその衝撃で火球が放たれてしまう。魔力充填の途中で放たれた火球とはいえ、創士達を消し炭にするには十分の大きさだった。

「しまっ…!」

 火球はそのまま創士達の頭上へ落ちていった。
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