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第3章

健闘をたたえて

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四日市高校戦は12:30に始まった。スタンドには応援に来てくれたOBの方が数人と、ベンチ入りできなかった1年生がいた。
華やかなブラスバンドもチアガールもないなかで、
「応援しよう!」
ということになり、1年生の烏丸くんが口楽器でプロ野球選手の応援歌を先導してくれた。人数数名のにわか応援団だ。

余談だが烏丸くんは現在プロ野球やメジャーリーグの実況アナウンサーとして活躍している。

試合は初回、四球と内野ゴロとヒットで2点を奪われた。我がチームは、2回、3回に三塁までランナーを進めるも残塁。そして4回に追い付く。
しかし4回の裏すぐに追加点を取られ、5回にも追加点。相手チームはチャンスに必ず打ってくる。我がチームは再三のチャンスをモノにできなかった。
2年生、会本くんの意地の二塁打で1点を返したが更に得点され
5―3で惜しくも敗退してしまった。

犬塚先輩の投球は、決して悪くなく、1イニングを3人で抑えた回もたびたびあったし、投球数も102球と相手チームの投手よりも少なかった。
チャンスを逃がさなかった相手が一枚上手だった。

最終回、私の応援の声が涙声になってきた。「先輩、まだ負けてないよ!」とわきちゃんに声をかけられたけれど、負けて悔しいの涙というより、この夏が終わる、このチームが終わってしまう寂しさの涙だったのかもしれない。

試合が終わり涙顔の部員にまたもらい泣きし、でも、球場を後にする頃には皆清々しい顔になっていた。
精一杯やった。
胸を張って帰ろう。
そんな顔だった。

翌日、明石からの帰りに部員と一緒に甲子園球場に行った。
たまたまウェスタンリーグだろうか、試合の準備をしていて、スタンドに入ることができた。

視界に広がるバックスクリーン。
なんて美しい、背筋がピンと伸びるような球場だろう。
ここを目指して何万という野球少年が毎日汗を流している。。


グラウンドにいた人に、土を採ってもらった。球児のあこがれ甲子園の土だ。

初の全国大会はこうして終わった。
毎日一緒に過ごしていた3年生の夏も終わった。

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