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第3章

得たもの失ったもの

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全国大会の後、桜井さんから私に手紙が届いた。
N高野球部への熱い熱い思いと3年生への感謝の言葉がつづられていた。
「あいつら、俺を抜かしやがった。。」
長い間背負ってきた
「優勝した時代のキャプテン」
「硬式になり損なったキャプテン」
という看板を降ろし、3年生にそれらを渡したような安堵感もこめられていた。
(これで俺も引退だ。)
そう書いてあるように思えた。
もう、桜井さんは来ないんだろうな。。
そう思えた。

 時を同じくして、文通相手のヒロコからも手紙が届いた。恨み節だった。
「これが、最後の手紙です。
毎日毎日郵便受けをのぞいていたけど、もうやめた。いいよね、楽しく青春していて。私は彼氏とは別れた。やけになって書いているわけではないから。
じゃーねー!ばぁぁぁぁーかっ!」

一瞬何のことかわからなかった。
急いで今まで来ていた手紙を読み返す。
―ねぇ、最近手紙くれないよねー。忙しいのかなぁ。
―毎日郵便受けをのぞいてはため息をついてるよ
―私のこと、わすれちゃったの?
―ねぇねぇねぇ。

なんということか。私は野球部に夢中になるあまり、彼女のことをすっかり無視してしまっていた。そしてその事に罪悪感も感じず、今まで忘れていた。
充実の日々を手に入れた私は、友情をひとつ失った。

はぁー。

小さなため息をついた。

いいことも、悪いことも、あるよね。
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