- Mix blood -

久悟

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第三章 大陸冒険編

オーベルジュ王

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 次の日の朝。
 オレ達は、いつも通り朝食を済ませてロビーに集まった。

「おはよー!」
「あぁ、おはよう。……なぁ、王に謁見するっていうのに、この鎧の下に着るような服で大丈夫なのか?」
「いや、仙王の時も、そうだっただろ?」
「そうなんだよ。仙王様、怒ってなかったか……?」
「さぁな。お前達と一緒に出てきたからな」
「だよな……。さっき起きて、ふと気付いたんだ。礼服なんて、一着も持っていない……」
「本当だ……僕も礼儀知らずだったな……。途中で店を見てみる? もう、開く頃だろうし」
「城までの道中で、寄ってみるか」
「私達は少し綺麗めの服を着てきたけれど、二人が寄るなら、ついでに私達も見てみようかな」
「アタシらは、これでいいだろ。そんなに気を使うような連中じゃないさ、王なんてものは」
「いや、気は使うだろ、そりゃ……」

 城に向かって歩いていると、仕立て屋を見つけた。

「出来合いの礼服なんて、ないよな……」
「まぁ、入ってみるだけ入ってみよう」

 ドアを引き、四人で中に入る。奥に、人の良さそうな主人がいるのが見えた。 

「すみません。今すぐ着られる礼服と靴が欲しいんですが、さすがに、ないですよね?」
 
「いらっしゃいませ。どのような服をお探しで?」
「知識がないもので……。これから、王に謁見するのですが」
「かしこまりました。お客様の体型でしたら、既にあるもので合いそうですが、一度ご試着なさいますか?」
「よろしくお願いします」
「私達も、お願いしていい?」
「おいおい、アタシはいいって!」
「まあまあ、せっかくだから皆で揃えよう」

 少し採寸すると、店主はオレ達四人に合いそうな礼服を持ってきた。
 それぞれが、試着する。

「いかがでしょう?」
「うん、ピッタリだ。……けど、少し肩周りがキツいかな」
「そうなりますと、お直しが必要になりますね」
「いや、これで大丈夫です。トーマスは?」
「僕も、ピッタリだ。けど、少し裾が短いかもしれないな……」

 ジュリアとエミリーは、店の女性に着付けを手伝ってもらい、試着を終えた。

「私は、ジャストフィットだよ! 可愛いね、これ!」
「……この、胸とウエストの締め付け感が嫌いなんだよな、礼服ってのは。少し、緩くはできないか?」
「まあ、こういうものでございますから……。では、少しだけ、緩めておきましょう」
 
「今日は急ぎですが、また、改めてオーダーしに来ます」
「いえ、この服を少し調整すれば、問題なさそうですね。また、お時間のある時にお越しください」
 
 駄目元で入ったけど、何とかなるもんだ。金を支払い、オレ達は礼服を着たまま店を後にした。

「二人共、カッコイイじゃん!」
「本当だな。服が違うだけで、こうも変わるものか」
「二人もすごく綺麗だ。どう見ても、いいところのお嬢様だよ。まあ、実際そうなんだけど……」
「これで、なんとか礼儀は保てそうだね……」

 安心して、城へと向かう。
 革靴に慣れていないせいか、ひどく歩きにくい。靴擦れが心配だけど、まあ、治療術で治せばいいか。

  
「なぁ、皆。人族の王に、何かイメージを持っているなら、それは一度取っ払った方がいい」

 二人の王と面識があるという、ジュリアからの忠告だ。
 確かに、今は仙人だけど、元は大戦を経験した仙族で、しかも仙王の腹心だ。一筋縄ではいかないだろう。

「分かった……」
「緊張するね……」

 門番に話をつけ、後をついていく。ジュリアがいるおかげで、話は早かった。
 南門からでも見える、荘厳な二つの城。様相の異なる、左側の城の門をくぐった。

 天井の高い、広すぎるエントランスは、ふんだんに陽光を取り入れて、明るく輝いている。
 磨き上げられた石造りの階段を、案内の者の後ろについて、静かに歩く。

「こちらが、王の間でございます」

 開かれた扉の先には、人族で言うところの五十歳くらいの厳格そうな男性が、玉座から立ち上がった。
 ジュリアを先頭に、王の前まで歩みを進める。

 
「やぁ、ちゃんジュリ! ブリヒサシじゃない? いきなりラファさんからのガミテー持ってくるからさ! クリビツテンギョのいたおどろだよ!」

 はっ? ……なんて?

「相変わらず……元気そうだな、レオナード」
「ちゃんジュリもさー、相変わらずワイカーなチャンネーじゃない!」

 思っていた人物像と、全然違う……。

 ジュリアの「人族の王というイメージは取っ払った方がいい」と言った言葉を思い出す。
 なるほど、こっちの意味だったかと合点がいった。

「レオナード、紹介するよ。アタシの仲間だ。ユーゴ、トーマス、エミリーだ」
「初めまして。突然の訪問にも関わらず、お時間を頂き、ありがとうございます」

 レオナード王は、オレ達の前まで進み出ると、深々と一礼した。

「ちゃんボク……コホン……失礼。私は、ウェザブール王国の王の一人、『レオナード・オーベルジュ』だ。仙王のガミテー……あっ、いや、手紙を携えた客人達と、会わぬ訳にはいかんだろう」

 無理して喋ってるな……。

「レオナード王、いつも通りに喋っていただいても、大丈夫ですよ……?」
「あら、そーぉ? じゃあ、こっちのヤーヘーで、ベシャろうじゃないの!」

 この人の部下は、大変そうだな……。

 玉座の横の部屋に案内され、円卓に座る。
 運ばれてきた紅茶は、素晴らしい香りだった。

「で? ちゃんボクに、何の用?」
「いや、せっかく王都に来たからな。お祖父ちゃんが、会っておくと良いって、手紙を書いてくれたんだ。……あと、レオナード。皆に分かるように、喋る努力だけはしてくれ……」
「あぁ、了解だよ。努力はする!」

 王とジュリアの遣り取りが終わるのを待って、エミリーが口を開いた。

「初めまして、レオナード王。私は、エミリア・オーベルジュといいます。イザック・オーベルジュの孫で、リヴィアの娘です」

 その名を聞いた途端、レオナード王の顔つきが変わった。

「……十数年前の、アレクサンドの件か」
「はい。母のお付きのメイドが、屋敷から私を連れ出してくれました。その後、ジュリアに助けられ、今があります。……イザックの屋敷が、その後どうなったのかを、教えていただきたくて……」

 言いながら、エミリーの顔が曇る。
 聞きたい、でも、聞きたくない。そんな複雑な感情なんだろう。 

「そうか……。アレクサンドが、国内で悪さをしているのは知っていた。だが、ラファさんの孫だ。見て見ぬふりをしていたのは、事実だよ。……でも、奴はとうとう、王族にまで手を出した。それが、イザックの屋敷だった。さすがに、ラファさんに、奴の処分を要求したよ」
「少しの可能性に、賭けて来ました。あの後、屋敷は、どうなったのですか?」

 エミリーの問いかけに、レオナード王は、静かに、そして淡々と話し始めた。
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