- Mix blood -

久悟

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第三章 大陸冒険編

エマの夢、前進

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 レトルコメルス領主、オリバーさんの屋敷に着いた。もう、すっかり日は暮れている。この時間の訪問は非常識だっただろうか。
 門番に話をすると、あっさりと案内してくれた。執務室の机に向かっていたオリバーさんは、オレ達の姿を認めると立ち上がり、応接のソファに座るよう促してくれた。まだ仕事中だったらしい。

「やぁ、シャルロット様から話は聞いている」
「すみません、こんな時間に……」
「いや、構わないさ。食事を終えたところだ。……そちらの娘さんは、エマだね? ローズによく似てきたな」
「え、お母さんをご存じなのですか?」
「あぁ。君の父親のマクシムもよく知っている。……マクシムは、僕の親友だったんだ」

 エマの事を、昔から知っているような口ぶりだった。オリバーさんは少し俯くと、静かな口調で話を続けた。

「マクシムが襲撃された日、ローズとエマのことを彼から託されたんだ。僕が二人をこの街に連れてきた。マクシムのことが心配だった僕は、二人を送り届けて、すぐに王都へと帰った。……その後、ローズのことを聞いて後悔したよ。もう少しこの街に滞在して、二人を見守っていればよかったと」

「……エマは、この街で昔の自分のように仕方なく娼婦をしている女の子達の、受け皿になるようなバーを作りたいという夢を持って、頑張っています」
「それはまた……敵が増えそうな夢だな。その辺りのことは、僕に任せるといい。この街の治安を維持するのは、領主である僕の仕事だ。それに、エマは女王の玄孫でもある。僕が、責任を持って見守ろう」
「本当ですか!? それだけが心配だったんです。元娼婦を雇うとなると、絶対に連れ戻しに来る連中がいますから」
「僕の部下を雇うといい。大抵の奴は返り討ちにしてくれるさ。多少、値は張るがね」

 オリバーさんの部下なら、相当な腕利きだろう。それなら安心だ。

「良かったな、エマ。夢が現実味を帯びてきたじゃないか」
「うん……。ユーゴ君もありがとう」

「そうだ、オリバーさん。今、女王に通信はできますか?」
「あぁ、できるよ」

 通信機は別の部屋にあるらしい。部下の方が、応接机まで持ってきてくれた。オリバーさんが、慣れた手つきで女王に通信をする。

『はい、ベルフォール家でございます』
「レトルコメルスのオリバーだ。シャルロット様代わってくれ」
『かしこまりました』

 少しすると、女王の甲高い声が響いた。

『オリバー、どしたの?』
「いえ、ユーゴ君が話があるということで、代わります」

「シャルロット女王、ユーゴです。エマの土地相続の件ですが、やはり売却の方向でお願いできますでしょうか」
『そかそか、エマには会えたのね?』
「はい。今、ここにいます」
 
「……シャルロット女王、初めまして。エマです」
『おぉ! エマ! こっちにいた時は、まだ二歳とかだったもんね! 土地が売れたらまた振り込んでおくから。たまにはこっちにも遊びに来なょ?』
「はい、ありがとうございます。また、遊びに行かせてください。……でも、すごいですね、これ。本当に会話ができてる」
『すごいでしょ! ウチの発明だょ!』

 エマを懐かしむ女王と少し会話をし、通信を切った。

「私にも、故郷があるってことなんだよね」
「あぁ、そうだな。いつでも連れて行ってやるよ」
「うん、ありがとう。……オリバーさん、またお店を出す時には相談しに来てもいいですか?」
「あぁ、もちろんだ。いつでも待っているよ」

 オレ達は、領主の屋敷を後にした。

「ユーゴ君と出会ってから、私の人生、なんだか好転してるみたい。本当に出会えて良かった」
「いや、エマは頭がいいからな。何をしていたって成功していたさ」
「ユーゴ君、これからどうする?」
「いいバーがあるんだ。行かないか?」
「うん、連れてって!」

 もちろん、トーマスと見つけたあのカウンターバーだ。
  
 カランコロン……。
 入口の扉を押し開ける。

「いらっしゃいませ。お久しぶりですね」
「お久しぶりです、マスター」

 マスターはエマを見ると、少し驚いた表情をした。なんだ? 美人すぎて驚いたのかな。
 その後、すぐにオレ達を席へと案内してくれた。

「お飲み物は、いかがいたしましょう」 
「彼女、夢に向かって頑張っているんです。何か、いいカクテルはありませんか?」
「かしこまりました」

 マスターはシェイカーを振り、カクテルグラスに液体を注いだ。

「『パラダイス』でございます。カクテル言葉は『夢の途中』。夢に向かって頑張るというのは、時に辛いこともございます。この甘いカクテルで、一休みしてみてはいかがでしょうか」

「……素敵。うん、美味しい。……マスター、彼はね、いつも私を正しい道へと導いてくれるの」

 マスターは静かに頷くと、今度はワイングラスにカクテルを作った。

「『キール』でございます。カクテル言葉は、『最高の出会い』。人は、誰と出会うかで、人生が大きく変わります。お客様は良い出会いをなさいましたね。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください」

 ワインベースのカクテルだ。二人でグラスを傾ける。

「本当に、素敵な店ね」
「あぁ、いいだろ、この店」

 美味しいカクテルに、ほろ酔いになったオレ達は、カウンターで語り合った。
 そして、オレのホテルへと、二人で帰っていった。
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