- Mix blood -

久悟

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第四章 魔人の過去編

ウェザブール王都へ

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 その夜、ワタシ達四人はラウンジに集まり、祝杯のワインを傾けていた。

「さて、明日からどうする?」

 シュエンが問いかける。

「とりあえず俺は鬼族達の町の整備に付き合うかな。テンの魔力の問題もあるし、お前の兄達と鬼族達の関係も整理しとかないとな」
「あ、ついでに兄達に練気術と仙術の指南も頼めないかしら? これからの魔都には必要な力よ」
「あぁ、分かった。引き受けよう」
 
「わたくしはマモンの部屋の改修に立ち会おうと思いますわ。リリスの趣味の悪い内装のままでは、マモンも落ち着かないでしょう? 半端な物にされたら困りますもの」

 サランがウインクする。そこまでしなくてもいい気はするけれど、サランならワタシの好みを完璧に把握して仕上げてくれるでしょうね。

 ……シュエンとサランは別行動か。なら、残るは一人ね。
 
「じゃあアレクサンド、ワタシ達はウェザブール王都に行って、魔王と鬼王の就任報告でもしてきましょうか。あそこの王は仙王の元部下なんでしょ?」
「あぁ、そうだな。……あと、正直に言うと、久々に人族のレディを抱きたいな。鬼族のレディにはボクの魅力が伝わらなかった様だからね……」

 アレクサンドが切実な顔で嘆く。鬼族の女は強すぎて、彼の趣味には合わなかったらしい。

「まぁ、好きにしなさい……。王都に入るのは検問が面倒だろうから、違う町に寄ってあげるわ。あぁ、レトルコメルスに行ってヴァロンティーヌ達を勧誘してこようかしら。サラン、兄さん達にそう伝えといてくれる?」
「えぇ、分かりましたわ」
「ヴァロンティーヌか……彼女に会う前に事を済ませないとな。溜まった状態で会うと我慢できずに襲ってしまいそうだ。嫌われてしまう」
「心配しなくてもワタシが止めるわよ。物理的にね」

 王都に行けば、誰かしらワタシ達の相手が出てくるだろう。下っ端が出てくることはないはずだ。宝玉の事を聞けるなら相手は誰でもいいけれど、ワタシとアレクサンドに因縁があるシュエンの息子達が出てくる気がするわね。
 もしそうなら、話が早くて助かるわ。

 ……まぁ、今から考えても無駄ね。今日はゆっくり休んで、明日出発しましょうか。

 
 ◆◆◆
 

 久々の故郷で迎える朝。
 窓を開けると、淀んだ空気が晴れたような気がする。憎きリリスも居ない、最高の朝だわ。

 ダイニングで朝食を頂く。顔見知りのメイド達の顔も晴れやかだ。偉そうに振る舞い、理不尽な難癖をつけてくる暴君はもう居ないのだから当然ね。

「さぁアレクサンド、出発しようかしらね」
「あぁ、行こう。人族のレディ達がボクを待っている」

 アレクサンドは上機嫌だ。久しぶりに好みの女が抱けるとあって、顔が緩みっぱなしだ。

 手元には割と正確な地図がある。目指すは一直線にウェザブール王都だ。昼夜二食分を準備し、全力で空を駆けて王都を目指す。

「ねぇ、宝玉は龍王が持っていると見て良いわよね? 『あお』は仙王の空間内でしょうね」
「そうだろうね。表情を変えずにあれだけ瞬時にウソをつけるとは、龍王も食えない爺さんだよ。ボクも見習わないとね、ボクのウソはレディにすぐにバレる」
「ウソつく様なことしなきゃ良いのに……。ま、宝玉の所在が分かればそれに合わせてプランを組みましょ」
「あぁ、気長に行こう」

 このペースなら一週間近くかかるだろうか。
 アレクサンドとの野営も慣れたものだ。退屈しのぎの会話を楽しみながら、ワタシ達は大陸を南下した。
 

 
 五日後。予定よりも早く、もうすぐウェザブール王都という地点まで来た。

「どうする? お昼前だけどランチを済ませておく?」
「いや、さっさと王都で用を済ませてレトルコメルスに行こう。昼食は移動しながら干し肉で良い」

 アレクサンドの下半身事情はもう限界のようだ。急かす彼に合わせて、そのまま王都へ飛ぶ。

 ウェザブール王都の北門が見えてきた。
 城壁を背に、軍が配備されているのが見える。そしてその前には、見覚えのある顔が並んでいた。

「あら、シュエンちゃんの息子達だわ」
「ボク達が来るのが分かっていたのか? ずっといる訳じゃ無いだろうしね。かなり警戒しているようだ」
「そういう『予知』の能力者がいると見て良いわね。ワタシ達が次にここを攻めるとでも思ったのかしら……」

 まあいいわ。あの子達がいるなら話が早い。シュエンちゃんの事を聞いてくるだろうし、それならあの記憶を見せてやればいい。手間が省けたわね。

「行きましょうか」

 ワタシ達は速度を落とし、優雅に舞い降りた。
 王都の騎士達を背に待ち構えていたユーゴ達に、ワタシは微笑みかける。

「あら、わざわざお出迎えとはね。久しぶりに王都を観光しようと思ったのに」
「鬼国や魔都を落とすような危ないヤツらを入れるわけないだろ」

 ユーゴが即座に返す。敵意剥き出しね。

「情報は持ってるのね、なら話が早いわ。そういう能力者がいると思って良いわね」
「さぁ、どうかな」

 とぼけても無駄よ。
 ワタシはユーゴの顔を覗き込んだ。

「ユーゴ、アナタも右眼が青紫に変わったのね」
「あなたも? 何か知ってるのか?」
「いいえ、詳しくは知らないわ」

 シュエンの妻、ソフィアと同じ色。
 何らかの能力を開眼かいがんしていると見ていいわね。いや、片目だけという事は開眼しかけているという事か。

「おいおい、ジュリエット。キミがなんでコイツらといる?」

 アレクサンドが、ユーゴの隣にいる金髪の女に声をかける。

「アタシは今こいつらの仲間だよ。お祖父ちゃんから、アンタがオイタしたらお仕置きしてやるように言われてる」
「キミごときがボクを? 冗談はよしてくれよ」
「相変わらず人を舐めてかかるヤツだ。いつか痛い目を見ればいい」

 青い眼に金髪。仙王の孫という事は、アレクサンドの妹か、あるいは姪か。彼等は仙族の戦闘法を取り入れてるという事だ。彼女も練気術を使うと見て間違いないわね。
 
「アレクサンド、話は終わった?」
「あぁ、娘のエミリーも気になる所だが、まぁいい」

 アレクサンドが肩をすくめる。
 ワタシは改めてユーゴに向き直った。

「そう、話を進めるわね。ここの王二人は、仙王の部下なんでしょ?」
「あぁ、元々はな」
「じゃあ、伝言を頼まれてちょうだい」
「内容による」

 警戒心バリバリね。可愛いわ。

「ワタシ達は鬼人を復活させたの。そして鬼王を討った」
「知っている」
「ワタシは魔人、魔王を討った。今までこの世界にはずっと王が四人居たものね。これを崩す訳にはいかないと思ったの」

 ユーゴ達はポカンとしている。何をしに来たのか理解出来ていないといった表情だ。
 ワタシは言葉を続ける。

「鬼人が『鬼王シュテン』に、ワタシが『魔王』になったから、よろしく伝えといてちょうだい」
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