- Mix blood -

久悟

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第五章 四種族対立編

お忍び

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 夕方前にはオーベルジュ城に戻り、くつろいでいた仙王たちに報告した。

「もう見つかったのか……?」
「はい、ご丁寧に地図まで持ってましたよ。割と正確な地図らしいです」

 オレがゴンの地図を広げると、皆が目を丸くした。
 誰もこんなにすぐに見つかるとは思ってなかったようだ。もちろんオレたちだって、予想外のスピード解決だったけど。

 地図を確認しながら、雑談に花が咲く。
 北のギルドの大きさについて話すと、シャルロット女王が教えてくれた。

「北エリアってギルドは大きいけど、周りの建物はそうでも無いんですね」
「うん、北は軍事施設が多いからね。騎士団学校も北エリアにあるょ。西と南エリアは商業施設、東エリアは繁華街ってとこかな。路地を外れたらどこも似たようなもんだけどね。でも北の路地裏は特に土地が安いょね」

 なるほど、東は繁華街か。
 それは一度遊びに行かないといけないな。

「騎士団の学校があるんですね」
「うん、各町の登用試験に合格した見習騎士達が集まって訓練するの。毎年春に入ってくるょ」

 ロンも二年後には騎士団学校に入学する事になる。今の彼の実力なら、余裕で主席合格だろう。

 話が一段落したところで、レオナード王が手を叩いた。

「よし、んじゃディナーもちゃんボクのローシーで食べようよ。明日以降の予定もそこでベシャったらいいんじゃない?」
「良いんですか? ではお世話になります」

 昼食に続き、夕食もお世話になろう。
 少し時間があるので一旦部屋に戻り、旅装を解くことにした。

 
 ◇◇◇

 
 夜。
 里長たちと神龍レイを気遣ってか、今夜もビュッフェ形式のディナーが用意されていた。
 とはいえ王族のディナーだ。大皿の前にはメイドが控えていて、皿を渡せば芸術的に盛り付けてくれる。至れり尽くせりだ。

 これくらい自分でするけどな……なんかすんません。

 オレは恐縮しながらビールを受け取った。
 皆、各々好きな飲み物を頼み円卓を囲んでいる。里長とレイさんもビールだ。里長に至っては、里への輸入を真剣に考える程にハマっているらしい。

「某まで頂いてかたじけない……。まさかまた、食を味わう時が来るとはな……」

 レイさんが、皿に盛られた料理をしみじみと見つめる。

「本当にここの料理は美味い。この酒も初めてだが、美味い」

 数千年ぶりの食事と酒。その感動はいかばかりだろうか。
 レオナード王が笑ってグラスを掲げる。

「いやいや、これから世話になるからね。腹いっぱいヤッちゃってよ」

 暫しの歓談で腹を満たす。
 酒が回りすぎて思考が鈍る前に、グラスを傾けながら今後の作戦を話し合う。

「ここから北西に真っ直ぐ進めば、とりあえず鬼国には当たるであろう。地図はある故、目的地はすぐに見つかるであろうな」

 里長がそういうと、仙王が地図を指差す。

「『ヤトノカミ』と言ったか。ニーズヘッグと同等と思って良い。ギルドのランクアップ試験では無い。手加減無用、皆で叩き潰そう」
「御意」

 オレたちはニーズヘッグを倒した時より遥かに強くなっている。腕試しをしたいところだが、今回は破壊工作が目的だ。仙王の言う通り、全力で排除する。

「では、ここに来たメンバーで行くか」

 仙王がチラリと二人を見る。

「え、ラファちゃんも行くの?」

 女王が心配そうに声を上げる。

「龍王が行くのだ、我が行かねば示しがつかん」
「いや、オレ達だけで行ってきても良いですよ? 場所さえわかれば……」
「いや、父上までわざわざ行く必要は無い。俺とソフィアも同行する」

 父さんが遮る。
 始祖四王の二人――仙王と里長が、少し悲しそうな顔をしている。
 現役復帰して暴れたいんだろうな……。

 その空気を察したのか、ティモシーさんが助け舟を出した。

「まぁまぁ、ここに来た皆で行きゃ良いじゃねぇか。このメンバーなら万が一にも間違いは起きねぇよ」
「まぁそうだろうけど……分かったょ。魔族側の斥候が居る可能性もあるからね、気は抜かないようにね」

 女王が折れた。

「某も行く。其方そなたらの戦闘が見たい」

 レイさんも参加を表明する。

「決まったな。では明日は一日ゆっくり準備をして、明後日の朝に出発だ」

 作戦会議は終了だ。
 その後はいつも通りの美味しい食事を楽しみ、オーベルジュ城の部屋に帰った。
 シャワーは済ませている。少しゆっくりしよう。

 ――と思ったけど、目が冴えてしまった。まだ寝るにはだいぶ早い。
 飲み足りないな。ワインでも貰って、トーマスの部屋に押しかけようか。

 部屋を出ると、廊下でリナさんがカートを押していた。

「あ、リナさん。いい所に」
「はい、ユーゴ様! 何か御用でしょうか?」
「ワイン頂けますか? 赤で」
「かしこまりました。お部屋にお持ちします!」
「いや、ついて行くよ。そのままトーマスの部屋に行きたいからね」

 リナさんの後をついて歩き、ボトルとグラスを貰ってトーマスの部屋に向かう。
 トーマスの部屋の前でリナさんと別れ、ドアをノックした。

 ん?

 中からバタバタと慌ただしい音がした。
 そして、微かに。
 一瞬、ジュリアの魔力を感じたような……。

 少し間があって、ドアが開く。トーマスが顔を出したが、少し様子がおかしい。髪が乱れているし、頬が紅潮している。
 そして部屋の奥から、隠しきれない気配がする。
 ……やっぱり、中にジュリアがいる。

「……あ、ごめん。一緒にワインでもと思ったんだけど、お邪魔だったな……帰るよ」

 オレは踵を返そうとした。

「ちょっと待って! うん……中に入って、ユーゴ」

 トーマスに引き留められた。
 変なタイミングに来てしまった様だ。けど、言われるがままに中に入る。

「お……おう、ユーゴ。お疲れ」

 ベッドの端に、ジュリアが座っていた。彼女も顔が赤い。

「ジュリア……変な空気出すなよ……」

 トーマスがジュリアの隣に腰かけ、オレは向かいの椅子に座った。
 沈黙が流れる。
 二人が顔を見合わせ、意を決したようにトーマスが口を開いた。

「ユーゴは……もう分かってるよね……?」
「分かるよ、そりゃ。ジュリアが分かりやすいんだよ」

 オレがそう言うと、ジュリアが「うっ」と口ごもる。

「え……そうなのか……? アタシ、そんなに……?」
「バレバレだ。で、付き合い始めたんだろ?」

 直球で聞くと、トーマスが真剣な表情で頷いた。

「……うん、僕から交際を申し込んだよ。ジュリアも快く返事をしてくれた」
「おめでとう! いやぁ、めでたい!」

 オレは持ってきたワインボトルを掲げた。

「ワイン持ってきたんだ、乾杯しないか?」

 部屋にあるグラスに赤ワインを注ぎ、二人に渡した。

「仲間が幸せになるのは嬉しいもんだ。乾杯」
「ありがとう、ユーゴ」
「ありがとな……」

 三人でグラスを合わせると、二人の表情もようやく和らいだ。

「なんか、誰かに言えてホッとしたよ……」

 トーマスが安堵の息を吐く。

「あぁ……最近こんな事言えるような雰囲気じゃ無かったしな……」

 世界を救うだの、神話の戦いだのと、重い話ばかりだったからな。

「まぁ、移動中に仙王様に報告したら良いんじゃないか?」
「えぇ……お祖父ちゃん許してくれるかな……」

 ジュリアが不安げに眉を下げる。

「大丈夫だろ。トーマスなんて最高のパートナーだ。文句なんてあるわけない」

 オレが保証する。あの孫煩悩なお爺ちゃんなら、嬉し泣きするかもしれない。

 ワインを飲みながら、明日の予定を聞く。
 トーマスとジュリアは、明日は一日デートに出かけるらしい。
 エミリーはマシューの現状を見に行くようだ。仙神剣術の指導もしないといけないと張り切っていた。

 オレは何するかな……。
 
 常々、いつものメンバー以外、他の狩猟者ハンターと依頼を受けてみたいと思っていた。自分の実力が、一般的な狩猟者ハンターの中でどう作用するのか、あるいは彼らの戦い方から学べることはないか。
 北のギルドにでも行ってみようかな。

 三人でワインを飲み干し、二人の邪魔をしないように早々に自分の部屋に戻った。
 心地よいほろ酔いだ。
 今日はよく眠れそうだ。
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