心の大樹

ながたい

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第序章 出会いの大樹

世界と今

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 今は2218年。様々な物が発展し、今や人間が苦労する事など何もない。だからだろうか、人間の心は恐らく昔より幼稚化しているだろう。みんながそうなら、みんながしてるから、と自分で考えるのをやめた愚か者ばかり。そういう点ではあいつらより俺は優れていると思う。まあ俺も愚かな人間の一人ではあるが。
「嘉良(から)。今日は君が日直だな。頼んだよ」
「はい」
俺の名前が呼ばれた。そういえば今日は俺が日直だったな。高校にも日直という制度はあるんだな、と思いながら担任の葉川(はがわ)先生から記録用紙を受けとる。
「あぁ、そうそう、今日うちに例のやつが来るから、学校の案内よろしくな」
「そういえば今日でしたか、不運ですね」
「まあまあそういうな。美人らしいぞ」
「俺は興味ないんですが」
それにあんただって美人にはいるだろう。
「ほう、まあ君がそう言うのは分かっていたよ。だからこそ、頼んだぞ」
「それなりに頑張ります」
そういって俺は職員室へ向かった。






俺が通っている東(ひがし)高校はそこそこきれいでそこそこ頭のいい高校だ。悪く言うと特徴がない。強いていうなら運動系の行事が多いことか。俺は運動好きじゃないからいやだが。まあ普通の高校生ならクラスみんなで一致団結とかいってワイワイできるんだろうな。その精神がスゲーよ。
 クラスも1~8クラスまであって、1クラス大体30人ぐらい。だから1学年240人か、そんなにいるとはなんと暑苦しい。昔はもっと多かったとか想像もつかん。集団恐怖症とかありそう。
 そんな東高校だが、そこそこ頭がいいからか、今年から政府が立案した、「高度人工知能育成テスト」というものの対象になった。これは、学習機能のある人工知能を学校生活を送らせ、どのような状態になるかを実験しようという計画である。人工知能は人間に合わして生活するため、生徒に害はないらしい。
 まあ、俺はほとんど関係ないんだがな。今日先生に言われた、例のやつとはこの事である。俺も運のないやつである。あまり関わりたくないのに、しなければならないし、人工知能も気の毒だろう。人工知能はそんな感情ないんだろうが。
「ったく、めんどい一日になりそうだ」
 俺は愚痴をこぼしながら、職員室の白板に書いてあった、人工知能がいるという場所へ、足を踏み出した。





 高校のロビーに行くと、ひとりの美しい女性がいた。肌は全く荒れていなくて、整った顔立ちをしている。スタイルもとてもよく、強いていうなら胸がちょっと残念な感じ。俺はそっちの方が好きだが。正に千年に一度の美女といってもいいくらいだった。
 まあこの辺でやめておこう。だってこれは機械なのだから。人の様子を伺って、慣れ親しもうとする何物でもないのだ。それをいうなら人間もそうか。
「なあ」
 後ろから声かけると、体がびくんとはねてこちらを振り返った。
「は、はい。何でしょうか」
 俺は人間でないということを忘れてしまいそうなほど自然な動作に驚きと同時に少し悲しくなった。ここまでAi は進化していたことと、もう不完全な人間なんて要らなくなるのではないだろうかという思いだった。
 自分に悲しみの感情があったことにも驚きつつ、俺は話を続けた。
「あんたが例のAi だな?」
「はい、私が政府実験用人工知能、紗奈(さな)です。」
「俺は嘉良だ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします。」
「んじゃ、とりあえずクラスにいくか」
「はい、わかりました」
 彼女はなんのためらいもなく、俺がいるクラスの方へ歩きだした。おそらく学校の地図でも読み込んでいたんだろう。さすがだなと感心しながら、彼女の後を追った。



「あの、」
 前を歩いている彼女が申し訳なさそうにこちらをみて俺に声をかけた。
「なんだ?」
 俺はこの返事を少し冷たかったのではと思ったが、問題なかったようだ。
「えと、私が行くクラスはどのような状態なのでしょうか?」
「んあ?んなの気にしなくていいんじゃねえの。どうせ周りが何とかするだろう」
「そ、それでは皆さんに悪いというか」
「はっ、人間なんかに罪悪感をもっても徳ないぞ。思うがままにやればいいだろ、まあそうできるのかは知らんが」
「に、人間なんかって...。あ、あなたも人間じゃないですか」
「ああ、そうだな、だからこそ分かることってあんだよ。それがいいことか悪いことかどうかは別だけどな」
「...あなたとは仲良くなれなさそうです」 
 彼女はそう呟くと歩くスピードを速めて、あっという間にみえなくなってしまった。ひとりきりになった廊下で俺は届かない警告をした。
「俺の、あんたのクラスはな、一言でいうと人のごみ溜めだよ」
 そうして俺は、そんなごみ溜めにまた戻らなければならないことに虚しくなりながら、重い足を動かして向かった。
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