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0010 兵庫 マーシー
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しおりを挟む先客のダイちゃんは漫画家。
カクテル能力者同士はお互いに能力者だと感じるし、この店に1分以上滞在できる人は能力者確定。
先走ってカクテル世界でダイちゃんと盛り上がったが、現実世界でも自己紹介しないと失礼だなぁ。
「あのー、カクテル世界で勝手にあなたと仲良くなりました。僕のことはマーシーと呼んでください」
「ああ、いいよいいよ。能力者になった人はみんなそうするからね。君はカクテルを直ぐに使いこなしたから凄い。俺のことはダイちゃんと呼んでね」
人懐こいダイちゃんは僕の隣へ座り直して言った。
「こっちで自己紹介しよっか」
ダイちゃんは自らの頭を指差した。
なるほど、いわゆるカクテルの相乗りというやつだ。
「はい、では お邪魔します」
2人でタイミングを合わせてダイちゃんの脳内へ入った。
『カチーーカチカチ』
『カチーーカチカチ』
ダイちゃんのカクテル世界で2時間ほど過ごし、現実世界へと帰ってきた。
この間1秒。
現実世界では1秒しか時間が経過していないから、マスターを放ったらかしにした罪悪感も少ない。
カクテルって、凄く効率的なシステムだなぁ。
使いこなせば、ナンパも、面接も、あらゆる試験も1秒で出来る。
マスターが僕に話しかけてきた。
「マーシーって彼女いる?」
「はい、いますよ」
「いいねいいね。実はさー、カクテル能力者はまだ世の中に少ないんだ。そこで、能力者の『治験』をやっていてさ、個人的に女好きだから少し敷居を下げる。だから今度この店でデートしてよ」
「あ、実は僕、ここへ彼女とデートする店を下見に来たんです。このBARは47階。こんなに夜景が綺麗な場所は最高です。分かりました」
「ありがとう、彼女はどんな人?」
「サイカはボーイッシュな19歳、看護師を目指す大学2年です。あ、料金システムはどういう感じですか?」
「無料だよ」
「え、男も無料? 今日、僕はタダですか?」
「そう、ここは世界の財善グループの自社ビル。俺はカクテルの運営も兼ねるから無料だよ」
「やったー」
「無料な上、カクテル能力者になれる」
その後も3人はカクテルの話で盛り上がり、彼女のサイカを連れて来る約束をした。
3人とも女好き、エロ話にも花が咲きまくった夜だった。
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