上 下
80 / 150
トンズラ

80ページ

しおりを挟む


松茸の仕入れから帰ってくるとユリコは何故か挙動不審だった。


何か隠している感じ。


そうか、さっき金で悩んでいるような事を言っている最中に氷屋が割り込んで来たんた。


「ユリコ、さっきお金で悩んでいるような話をしていたな、どうした?」


松茸をしまいながらの思考は、俺の3倍も給料が高いユリコに金が無いっていう不思議。


「……もういいの。コウスケ、今日の店が終わったら、ラブホ行こ。前回と同じホテルの前で待ってる」


「え? 店にバレやすいから日曜だけ会うはず……」と言いかけたがユリコは行ってしまった。


急にそそくさと逃げる様に店を後にするユリコに疑問を覚える。


だがそろそろ先輩方が店に出勤するし、波多野がカウンターで小1の勉強をするからカウンターを拭こうと思ったら、疑問の答えは目の前にあった。


さっきウイスキーの棚に置いたはずの貯金箱がカウンターに異動している。


持ち上げた貯金箱を振ると明らかに空だ。


ーーユリコ! 金を盗みやがった!


なぜ?


非常にマズイ! 店長が明日の慰安旅行に控え、今晩この貯金箱の中身を出していくら貯金できたか数えると言っていたんだ!


ユリコはそれを知らない。


また厄介ごとが増えたと考えながら貯金箱を棚に戻す。戻すしかないもん。


「コウスケ、山口さんの部下8人出動させたんだってな!」


ーーハッ!


店長が足音もなく出勤して来た。


見られたか? 貯金箱を持っているところ見られたか?


後に続いて波多野と青ちゃんも入って来る。


「おはようございます。いや、ボッタクリは不可抗力かと思います」


俺はとっさに切り返した。みんなは貯金箱より昨日の失態の方に気が行っている様だ。


だが貯金箱の盗みがバレるのは時間の問題。


「責任回避か? それにな、後輩を甘やかすな。甘やかすと本人のためにもならん!」


睡眠不足の解消をする為に青ちゃんと交代して早出出勤していた事が店長にバレた。


何でこんなに悪い事が続く!


しおりを挟む

処理中です...