ばかやろう 〜たった1つの愛〜

ネギモバ

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涙のハトぷっぷ〜

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ユリアを背中におんぶして、コンビニ行って電気、ガス、水道の料金を支払う。


大道芸をしていたホームレスの無一文だった頃を思い出す。


自分1人だけでも精一杯だったのに、子育てなんかできるのか。


どこか施設なり孤児院みたいな所に預けないとムリだろ?


3件のバイト先全てに事情を話し、休むと連絡をした。


そしたら、電話口にバイト先の先輩が心配してこう言う。


丁度1歳になる赤ちゃんを育てていて、離乳食とか、寝かせ方とか、オムツとか、あやし方とかをいろいろ教えてくれた。


働きながら子どもを預けられるベビーシッターや保育園もあるという。


でも直ぐに施設に連れて行くのも難しかったから、ユリコが残していった育児本を引っ張り出してきて世話をすることにした。


実際大変だよ育児ってのは。


人間の赤ちゃんって、何でこうも未熟なんだろう。


犬猫だったら1年もすると交尾もできる大人になるのになぁ。


サバンナの草食動物なんか産まれて直ぐに立って歩くんだぞ。


9か月のユリアはなんにもできない。


赤ちゃんって、5分も目が離せないんだ。


手当たり次第に口へ物を入れるから危なくて仕方ないし、勝手にハイハイして勝手にテーブルの脚で頭をぶつけて勝手に泣いちゃう。


俺が少しトイレに行くだけで寂しくて泣いちゃう。


こいつが居るからおんぶして出掛けてもせいぜい近所のスーパーの買い出し程度でほとんど家にいる。


ユリコも育児ノイローゼだったのかね。


元々スナックや高級クラブで客にチヤホヤされる派手な生き方していたから、落差がハンパなかっただろう。


今後の見通しはカオスだが、それでも娘のユリアは俺の顔を見て笑うこともある。


赤ちゃんだけど、笑顔は老若男女、全世界共通だ。


特に俺が歌う『鳩(ハト)ぽっぽ』がお気に入り。


喜ぶから「ぽっぽっぽ~ ハトぽっぽ~」って歌う。するとユリアはマネをするんだ。


ユリアはまだ『ぽ』が出来ない。



だからユリアは「ぷぷぷ~ぷっぷっぷ~」とやる。


俺のハトぽっぽ~を歌って2人して笑い合う。


『ぷっぷっぷ~』がかわいい。


信じらんねェよ。


架空口座サギだの極道や犯罪者からの夜逃げ屋で悪さばかりしていた俺がだぜ?


そんな俺がぽっぽっぽ~って笑い合ってるんだ。赤ちゃんと。


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