ばかやろう 〜たった1つの愛〜

ネギモバ

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涙は貧乏に勝る

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小学4年生にもなると、ユリアは男子よりも足が速くなった。


勉強も俺の遺伝子を受け継いでいるとは思えないくらいに出来る。


4年生とは思えないほど口も達者になった。


今では俺とユリアがささいな事で言い合いになったら、たいてい俺の方が言い負かされるほどだ。


ユリアは自分の置かれている立場を理解し、正しい判断と、今やるべき事を分かっている。


世間でよく言う娘に甘い父親像ってのもあるが、親バカを差し引いたとしても大人びた娘に育った。


サンタクロースの存在に気づいたのも早かった。1年生だ。


3年生の七夕の願い事に書いた短冊にはこう書いてあった。


『ないしょくがしたい』


現実と非現実の区別がつき、欲しいモノは自分の力で稼ぎたいと言う。


どうしても買いたいモノは、子供でも出来る内職で稼ぎ、その苦労から得た達成感を噛みしめて、更に人へ分け与える。


分け与える相手は俺。


誕生日に財布をユリアに買ってもらった。


使い込んでボロボロで穴が空き、小銭が抜け落ちているところをユリアは見逃さなかった。


ぬいぐるみのクマさんを例えに、消費者よりも生産者になりたいと自負しているユリアは、最初は布切れで財布を作っていたが、本物の財布と自分が作った財布の出来栄えがあまりにも違う事に気付く。


現実的にものを考え、実用性を取捨選択し、内職で苦労して得た大切なお金をつかったのはプロの売る財布だった。


俺はユリアの心を汲み、言う。


「ユリアが買ってくれた財布も嬉しい。だけど、作ってくれた方の財布もお父ちゃんにくれないか?」


「なんで?」


「お父ちゃんはな、ユリアの手作りの財布、とっても愛情がこもっていると思う。買った方は普段大事につかう。けど、手作りの方は使えねぇよ」


「どうして つかわないのに ほしいの?」


「一生懸命作ってくれたんだろ?」


「うん」


「だったら宝物だ」


「たからもの?」


「ああ、お父ちゃんにとって大切な宝物だよ」


ユリアは本物の財布には敵わない自分の未熟さに打ちひしがれていた。


その努力と苦労に感謝だ。


他の誰でもない、俺に向けての愛がある。


こんなもん見過ごすわけにはいかねェ。


「お父ちゃん だ~い好き!」


「ばかやろう、お父ちゃんもユリアが大好きだ!」


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