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涙は貧乏に勝る
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しおりを挟む仕事仕事仕事!
朝も昼も夜も仕事!
睡眠時間は平均2時間半。
学歴が無い俺は、かれこれ10年も借金返済の為に肉体労働をメインとした仕事で働き詰めの毎日だ。
正月以外、休んだためしもない。
運が良かったと思うのは、4年生になったユリアも俺も大きな事故や病気にならなかったからと言えよう。
夜の8時ごろ、道路工事の仕事が終わり、次の夜勤に向けて少し仮眠を取る前に、ユリアとコミュニケーションをとろうとしていたら、ユリアは1人で風呂に入っていた。
いつもと違う。
風呂場から涙をすする声が聞こえてくる。
明らかに泣いているユリア。
また学校で何かあったのか?
部屋を見渡すと、ちゃぶ台に節約の優等生、モヤシ炒めと卵焼きが作ってある。
ユリアが毎日作ってくれる晩飯。
いまやユリアは1人で掃除も洗濯も3食の料理も全てこなすし、スーパーの安売りもピンポイントで特売品を探し出し、足をつかって買い選ぶ。
1度として勉強をしろと言ったこともないのに成績は常に良いし、少しでも家計の助けになればと内職もしてくれる。
俺の土方(どかた)仕事で靴下に穴が空けば、いつの間にか裁縫(さいほう)で穴も塞いでくれる。
まったく、よくできた子だ。
すすり泣く声が気になって仕方ないなか、電話がかかってきた。
受話器を取ると、担任の真由美先生からだ。
『本当は今日の内にお話があって伺いたかったのですが、幾つか先に訪問するお宅がありまして、今日はもうおそいので、明日お邪魔してもよろしいでしょうか』
『は、はあ、ユリアが学校でまた何かしましたか?』
『直接お伝えしたいので、明日、お時間を頂けたら助かります』
『わ、わかりました』
真由美先生と時間を決め、受話器を置いた。
「お父ちゃん、お帰りなさい」
「おう、ただいま」
泣いていたユリアは風呂から上がり、パジャマが無いから学校の体操服を着てタオルで髪を拭きながら何故か吹っ切れた様なスッキリとした笑顔を浮かべている。
ここはあえて問い詰めないようにしよう。
おそらく涙の原因は真由美先生から聴けるだろう。
【翌日】
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