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プロローグ 企み
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外国の家にありがちな、ホワイトモダンの家が、東京の一等地に立てられている。
その家の書斎として使われている部屋で、二人の男がなにやら企てている。
その二人とは、藤堂と井藤だ。
「藤堂よ、儂は老いというものが怖い」腰に手をまわし、両手を結び、その男は言った。
様々な改革を成し遂げ、
『時の人』とも謳われた経歴を持つ、元・内閣総理大臣 井藤重保その人だった。
「方法としては、1つあります」
藤堂と呼ばれた、長身痩軀の持ち主で、燕尾服が似合う、黒縁の眼鏡をかけたその男は一つに束ねられた資料を手渡した。「とある研究機関から取り寄せた資料です」
「なんだ、これは…! ほう、不老不死の薬なるものがあるのか。なら今すぐ調達しろ」
「ですが、この薬品はまだ、試料段階です。臨床データを多く集めることは可能と言えば、可能なんですが…」藤堂は語尾を濁らせた。
「どういうことだ? ! まさか…」重保は質問をしたのと同時にその答えに辿り着いてしまった。
「この国の民を臨床材料にするというのか!」
「そうです」彼は不敵な笑みをあげた。
「ならん! ならんぞ。それだけは…」首を真横に振り、拒否の姿勢を示した藤堂に、「では、貴方様は寿命が切れると同時に『死』を迎えるだけですね」と
人の皮をかぶった、藤堂が囁く。
「むぅ…。しかし…」
「大丈夫ですよ。秘密裏に行いますので」
「…本当だな?」
「国民といっても、収容されている犯罪者を使うので。対象は、殺人の罪に問われている者達。この者達なら、例え、計画がバレたとしても良心の呵責に苛まれる心配はないでしょう。あなたも。一般の庶民も」
「分かった。ならば、そのやり方で頼む」
「承知しました」
藤堂は、深々と頭を下げおわると、部屋から出て行った。
これで、儂はさらに人生を謳歌できる…
窓から空を見上げる。
空は、暗雲に覆われていた。
まるで、この国の将来を案ずるかのように…。
その家の書斎として使われている部屋で、二人の男がなにやら企てている。
その二人とは、藤堂と井藤だ。
「藤堂よ、儂は老いというものが怖い」腰に手をまわし、両手を結び、その男は言った。
様々な改革を成し遂げ、
『時の人』とも謳われた経歴を持つ、元・内閣総理大臣 井藤重保その人だった。
「方法としては、1つあります」
藤堂と呼ばれた、長身痩軀の持ち主で、燕尾服が似合う、黒縁の眼鏡をかけたその男は一つに束ねられた資料を手渡した。「とある研究機関から取り寄せた資料です」
「なんだ、これは…! ほう、不老不死の薬なるものがあるのか。なら今すぐ調達しろ」
「ですが、この薬品はまだ、試料段階です。臨床データを多く集めることは可能と言えば、可能なんですが…」藤堂は語尾を濁らせた。
「どういうことだ? ! まさか…」重保は質問をしたのと同時にその答えに辿り着いてしまった。
「この国の民を臨床材料にするというのか!」
「そうです」彼は不敵な笑みをあげた。
「ならん! ならんぞ。それだけは…」首を真横に振り、拒否の姿勢を示した藤堂に、「では、貴方様は寿命が切れると同時に『死』を迎えるだけですね」と
人の皮をかぶった、藤堂が囁く。
「むぅ…。しかし…」
「大丈夫ですよ。秘密裏に行いますので」
「…本当だな?」
「国民といっても、収容されている犯罪者を使うので。対象は、殺人の罪に問われている者達。この者達なら、例え、計画がバレたとしても良心の呵責に苛まれる心配はないでしょう。あなたも。一般の庶民も」
「分かった。ならば、そのやり方で頼む」
「承知しました」
藤堂は、深々と頭を下げおわると、部屋から出て行った。
これで、儂はさらに人生を謳歌できる…
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空は、暗雲に覆われていた。
まるで、この国の将来を案ずるかのように…。
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