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憂鬱な転生【カノンの場合】
31.リンリン大作戦.2
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「遠慮なく、どれでも好きなものを食べてくださいね」
そう言うと、奏はテーブルの上に様々な種類のパンやサンドイッチを並べ始めた。
テーブルの上に広げたそれらは、彼の申し訳ない気持ちが込められているのか、随分とたくさんの種類がある。チラリと向こうのテーブルに目をやると、深刻そうな二人の話は、まだ終わらなさそうだ。
礼を告げ、『タッカルビ』と書かれたパンを一つ手に取ると、食欲を誘う匂いが鼻をくすぐった。
「それオススメですよ。ちょっと辛いですけど、癖になる感じです。あとこっちのも美味しいですよ」
「へぇ、それも美味しそうだね」
定番のよく見かけるパンの他に、チョコ塩バターパンやチーズフォンデュと書かれた目新しいパンがある。そのどれもが美味しそうで目移りしてしまい、なかなか決められないでいると、奏は姉がここのパンが好きなんですよ、と片眉を下げて微笑んだ。
「今日はカノン先輩には突然のことで本当に申し訳なかったです。以前から姉は突飛なことをする時があって……」
「大丈夫、奏くんが謝ることないよ。まぁ確かに今日は突然だったけどね」
「最近特に変なこと言い出すんですよね……。今朝は『奏くんがイギリスに行かないで良かったよぉ!』とか言っていて。別に僕イギリスに行く予定なんてなかったんですけど」
「へぇ? そうなんだ」
(奏くんがイギリス……って何かで聞いたことあるような……)
困ったようにボヤいてはいるけれど、彩音のことを話す奏はどこか嬉しそうだ。なんだかんだ言って、あれこれ世話を焼くのが楽しみなんだろうなとカノンは思った。兄弟がいたことはないけれど、こんな弟ならほしいものだ。
彼に『もー姉ちゃんはダメなんだから』なんて言われて世話をやかれたら、思いっきり甘えてしまう自信がある。
そうしていると視界の端に、席を立った二人が、こちらのテーブルに歩み寄ってくる姿が映った。
それに気が付いてカノンが顔を上げると、彩音は心なしか誇らしげにこちらに手を振った。
一足先にこちらに近づいてきた凛子は、何かを堪えるようにハンカチで口元に抑えている。
「カノンちゃん……!」
「? 二人のお話終わった? それじゃあ、皆で……」
「わたし、私もっ、カノンちゃんともっと仲良くしたいってずっと思ってたの……!」
「へ」
「神崎さんから話を聞いて、私……! 私、私もカノンちゃんが好きぃぃ!」
そう叫ぶと凛子は感極まった様子で、座っているカノンに覆いかぶさるようにガバッと抱き着いてきた。
「わ! え、え、ちょっと日高さん!?」
咄嗟に身を引くも、頬ずりせんばかりに顔を近づけてきた凛子の眼鏡の奥の瞳は、涙で滲んでいて、よりいっそうカノンの頭の中は混乱する。
「カノンちゃん、これからは私のことリンリンって呼んで! これからたくさん仲良くしよう! ね!?」
「え、え!? 彩音さんってば、日高さんに何を言ったの!?」
狼狽するカノンに、凛子はまた力いっぱいぎゅっと抱きついた。
「ね、姉ちゃん、あれ大丈夫なの?」
「うふふ、あれが正しい姿なのよ」
戸惑う奏をよそに、相変わらず彩音は誇らしげに頷いてみせた。
◇◇◇◇◇
「さあ、食べましょう? お昼休みが終わってしまうわ」
「う、うん」
彩音は優雅な手つきで、カノンに着席を勧めてきた。
朝から翻弄されっぱなしで彼女には聞きたいことがありすぎるのだけれど、この完璧な所作と美しさの前には、思わず口を噤んでしまう。
そして凛子は、にこにことしながら椅子をぴったりと寄せて、カノンの隣に座った。
「カノンちゃんはチョコクロワッサンが好きなんじゃない? これどうぞ」
「ありがとう、って、私の好きなものよく知ってるんだね……?」
「ふふっ」
満面の笑みを浮かべる凛子と、それを見て機嫌良さそうに微笑む彩音。奏は申し訳なさそうに、肩を小さくして座っている。
奏くんのせいじゃないよ……と言いたいところだが、二人の圧の前に、カノンは奏に話しかけることもできずにいた。
(一体二人は何を話してたんだろ? そもそも彩音さんが日高さんと仲良くしたかったんじゃなかったっけ??)
そう思いつつも、とりあえず凛子から渡されたチョコクロワッサンを口に運んだ。
咀嚼しながら現実逃避に視線をあげると、アトリウムのステンドグラスからの鮮やかな光が、植えられている植物の蔦と白い花を赤やオレンジの色に彩っていた。さっきまで遠巻きに彩音を見つめていた生徒達も昼食に向かったのか、設けられているテーブルで食事をとる生徒が数名残るだけで、アトリウムは普段の表情を取り戻していた。
こんな風にここで食事をしたことなかったな……そんなことを思いながらぼんやりとしていると、イチゴ牛乳を飲む彩音が、あ、と何かを思い出したように、声を上げた。
「そういえば、凛子さんのご両親、チャリティーコンサートにいらしてたのよね?」
「あ、うん。うちのパパ、カノンちゃんの演奏すっごく褒めてたよー! ちょうどパパが監督した作品の曲だったし。カノンちゃんの音はすごい!って」
「え? あ、ありがとう?」
「カノンちゃんの演奏はパパのお墨付きだよ! 私もカノンちゃんのファンだから思いっきり自慢しておいたぁ!」
――え、日高さんのパパって一体……?
カノンの疑問をよそに、凛子は手をぎゅっと握りしめ、嬉しそうに頬を上気させている。
色んな事が許容量をオーバーして、とっくに味覚を感じなくなっているけれど、カノンは曖昧な笑みを浮かべながら、もう一度パンを口にいれた。
「そういえばママが言ってたけど、城野院先輩って今シンガポールにいるみたいね」
「……!」
突然凛子から発せられた一言に、カノンは息を呑んだ。咀嚼しそこねたクロワッサンが、ぐ、と変な音を立てて飲み込まれる。
「まぁ、そうなの。城野院先輩はお父様のお仕事を手伝ってるって瑠依先輩が言ってたわ。夏休みだったのに忙しいのね」
「うん、うちのママと城野院のパパさんお友達だからー。でもさ、高校最後なのに夏休みがないなんてかわいそうだよねぇ」
カツサンドを頬張りながらそう告げる凛子の言葉に、カノンの頭の中はゲームの相関図を思い浮かべて?マークがぐるぐるとした。そんなカノンの表情に気が付いた奏が、そっと耳元に声をかけてきた。
「……カノン先輩、日高先輩のお母様って女優の伊月涼雅さんですよ」
「え!? そうなの? ――っと」
押すに押されぬ大女優の名前の登場に、思わず大きな声をあげてしまった。それはカノンの母親が長年のファンだそうで、家にいると頻繁に耳にする名前だ。
「うん、そうなのー。以前は歌劇団にいてね、その時に城野院のパパさんにご贔屓にしてもらっててお友達なんだよねー。城野院先輩お仕事の手伝い、忙しいみたいだよ~」
「へ、へぇ……」
「でも高校生最後の夏休みが働き詰めだなんて、先輩かわいそうだよね! ママにもそう言ってもらおうかなー。学校に来たいよねぇ」
「そうね、それがいいわね。城野院先輩も学園での思い出を作りたいんじゃないかしら」
スマホ片手に鼻息を荒くする凛子と、穏やかに相槌をうつ彩音。
(城野院先輩、お仕事、だったんだ……)
突然もたらせる情報の洪水に、どう反応していいか困ってしまう。
でも、今日こそは会えるかも知れないと期待していたカノンは、未だ彼の人が海外にいると知って、落胆してしまう。
「――なんですって」
「え?」
突然自分に会話を振られ、慌てて顔を上げると満面の笑みの凛子と、微笑んでいる彩音が目の前にいた。
「良かったわね! 城野院先輩、来週には学園に登校できるみたいよ」
「え」
「うん、ママからメッセージ送ってもらったし、そろそろ来れるんじゃないかなー」
戸惑うカノンに、彩音はウインクをした。
「カノンちゃん、これで大丈夫、ね!」
「あ……、えっと……?」
なんて返事をすれば……と思ったところで、ちょうど昼休み終了を告げるベルが鳴った。
そう言うと、奏はテーブルの上に様々な種類のパンやサンドイッチを並べ始めた。
テーブルの上に広げたそれらは、彼の申し訳ない気持ちが込められているのか、随分とたくさんの種類がある。チラリと向こうのテーブルに目をやると、深刻そうな二人の話は、まだ終わらなさそうだ。
礼を告げ、『タッカルビ』と書かれたパンを一つ手に取ると、食欲を誘う匂いが鼻をくすぐった。
「それオススメですよ。ちょっと辛いですけど、癖になる感じです。あとこっちのも美味しいですよ」
「へぇ、それも美味しそうだね」
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「今日はカノン先輩には突然のことで本当に申し訳なかったです。以前から姉は突飛なことをする時があって……」
「大丈夫、奏くんが謝ることないよ。まぁ確かに今日は突然だったけどね」
「最近特に変なこと言い出すんですよね……。今朝は『奏くんがイギリスに行かないで良かったよぉ!』とか言っていて。別に僕イギリスに行く予定なんてなかったんですけど」
「へぇ? そうなんだ」
(奏くんがイギリス……って何かで聞いたことあるような……)
困ったようにボヤいてはいるけれど、彩音のことを話す奏はどこか嬉しそうだ。なんだかんだ言って、あれこれ世話を焼くのが楽しみなんだろうなとカノンは思った。兄弟がいたことはないけれど、こんな弟ならほしいものだ。
彼に『もー姉ちゃんはダメなんだから』なんて言われて世話をやかれたら、思いっきり甘えてしまう自信がある。
そうしていると視界の端に、席を立った二人が、こちらのテーブルに歩み寄ってくる姿が映った。
それに気が付いてカノンが顔を上げると、彩音は心なしか誇らしげにこちらに手を振った。
一足先にこちらに近づいてきた凛子は、何かを堪えるようにハンカチで口元に抑えている。
「カノンちゃん……!」
「? 二人のお話終わった? それじゃあ、皆で……」
「わたし、私もっ、カノンちゃんともっと仲良くしたいってずっと思ってたの……!」
「へ」
「神崎さんから話を聞いて、私……! 私、私もカノンちゃんが好きぃぃ!」
そう叫ぶと凛子は感極まった様子で、座っているカノンに覆いかぶさるようにガバッと抱き着いてきた。
「わ! え、え、ちょっと日高さん!?」
咄嗟に身を引くも、頬ずりせんばかりに顔を近づけてきた凛子の眼鏡の奥の瞳は、涙で滲んでいて、よりいっそうカノンの頭の中は混乱する。
「カノンちゃん、これからは私のことリンリンって呼んで! これからたくさん仲良くしよう! ね!?」
「え、え!? 彩音さんってば、日高さんに何を言ったの!?」
狼狽するカノンに、凛子はまた力いっぱいぎゅっと抱きついた。
「ね、姉ちゃん、あれ大丈夫なの?」
「うふふ、あれが正しい姿なのよ」
戸惑う奏をよそに、相変わらず彩音は誇らしげに頷いてみせた。
◇◇◇◇◇
「さあ、食べましょう? お昼休みが終わってしまうわ」
「う、うん」
彩音は優雅な手つきで、カノンに着席を勧めてきた。
朝から翻弄されっぱなしで彼女には聞きたいことがありすぎるのだけれど、この完璧な所作と美しさの前には、思わず口を噤んでしまう。
そして凛子は、にこにことしながら椅子をぴったりと寄せて、カノンの隣に座った。
「カノンちゃんはチョコクロワッサンが好きなんじゃない? これどうぞ」
「ありがとう、って、私の好きなものよく知ってるんだね……?」
「ふふっ」
満面の笑みを浮かべる凛子と、それを見て機嫌良さそうに微笑む彩音。奏は申し訳なさそうに、肩を小さくして座っている。
奏くんのせいじゃないよ……と言いたいところだが、二人の圧の前に、カノンは奏に話しかけることもできずにいた。
(一体二人は何を話してたんだろ? そもそも彩音さんが日高さんと仲良くしたかったんじゃなかったっけ??)
そう思いつつも、とりあえず凛子から渡されたチョコクロワッサンを口に運んだ。
咀嚼しながら現実逃避に視線をあげると、アトリウムのステンドグラスからの鮮やかな光が、植えられている植物の蔦と白い花を赤やオレンジの色に彩っていた。さっきまで遠巻きに彩音を見つめていた生徒達も昼食に向かったのか、設けられているテーブルで食事をとる生徒が数名残るだけで、アトリウムは普段の表情を取り戻していた。
こんな風にここで食事をしたことなかったな……そんなことを思いながらぼんやりとしていると、イチゴ牛乳を飲む彩音が、あ、と何かを思い出したように、声を上げた。
「そういえば、凛子さんのご両親、チャリティーコンサートにいらしてたのよね?」
「あ、うん。うちのパパ、カノンちゃんの演奏すっごく褒めてたよー! ちょうどパパが監督した作品の曲だったし。カノンちゃんの音はすごい!って」
「え? あ、ありがとう?」
「カノンちゃんの演奏はパパのお墨付きだよ! 私もカノンちゃんのファンだから思いっきり自慢しておいたぁ!」
――え、日高さんのパパって一体……?
カノンの疑問をよそに、凛子は手をぎゅっと握りしめ、嬉しそうに頬を上気させている。
色んな事が許容量をオーバーして、とっくに味覚を感じなくなっているけれど、カノンは曖昧な笑みを浮かべながら、もう一度パンを口にいれた。
「そういえばママが言ってたけど、城野院先輩って今シンガポールにいるみたいね」
「……!」
突然凛子から発せられた一言に、カノンは息を呑んだ。咀嚼しそこねたクロワッサンが、ぐ、と変な音を立てて飲み込まれる。
「まぁ、そうなの。城野院先輩はお父様のお仕事を手伝ってるって瑠依先輩が言ってたわ。夏休みだったのに忙しいのね」
「うん、うちのママと城野院のパパさんお友達だからー。でもさ、高校最後なのに夏休みがないなんてかわいそうだよねぇ」
カツサンドを頬張りながらそう告げる凛子の言葉に、カノンの頭の中はゲームの相関図を思い浮かべて?マークがぐるぐるとした。そんなカノンの表情に気が付いた奏が、そっと耳元に声をかけてきた。
「……カノン先輩、日高先輩のお母様って女優の伊月涼雅さんですよ」
「え!? そうなの? ――っと」
押すに押されぬ大女優の名前の登場に、思わず大きな声をあげてしまった。それはカノンの母親が長年のファンだそうで、家にいると頻繁に耳にする名前だ。
「うん、そうなのー。以前は歌劇団にいてね、その時に城野院のパパさんにご贔屓にしてもらっててお友達なんだよねー。城野院先輩お仕事の手伝い、忙しいみたいだよ~」
「へ、へぇ……」
「でも高校生最後の夏休みが働き詰めだなんて、先輩かわいそうだよね! ママにもそう言ってもらおうかなー。学校に来たいよねぇ」
「そうね、それがいいわね。城野院先輩も学園での思い出を作りたいんじゃないかしら」
スマホ片手に鼻息を荒くする凛子と、穏やかに相槌をうつ彩音。
(城野院先輩、お仕事、だったんだ……)
突然もたらせる情報の洪水に、どう反応していいか困ってしまう。
でも、今日こそは会えるかも知れないと期待していたカノンは、未だ彼の人が海外にいると知って、落胆してしまう。
「――なんですって」
「え?」
突然自分に会話を振られ、慌てて顔を上げると満面の笑みの凛子と、微笑んでいる彩音が目の前にいた。
「良かったわね! 城野院先輩、来週には学園に登校できるみたいよ」
「え」
「うん、ママからメッセージ送ってもらったし、そろそろ来れるんじゃないかなー」
戸惑うカノンに、彩音はウインクをした。
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