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【第1話】なんか襲われた?!

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「いってきまぁーっす…。」


午前7時54分。いつもより少し遅い時間。でも走る必要はないだろうと思ったから気持ち早歩きで学校へと向かい始める。

「はぁぁ~…あっついなぁー」

本当に暑い。まだ8時前だというのにこの暑さだ。黙っていても汗が流れ出てくるのに、学校まで歩いていかなければいけないと思うと……うるさい蝉の鳴き声のお陰でこの暑さも倍増してる気がする。



いつもと大体同じ時間、いつもと同じ通学路、いつもと同じ暑さ―――


「ん…??」


不意にいつもと違うなんとも言えない違和感を感じて足を止める。いつもと同じ、その風景も何もかもがいつも通りだ。だけど何か寒気のようなものに包まれ、体に緊張が走る。
なんだろ、何が違う?この違和感がどこから来るのか探るように辺りを見渡す。
空気の流れかな?…そんなことないか。

「あっ…時間ないんだった。」

妙な違和感を抱きながらも、時間に余裕が無いことを思い出し歩みを早めようと足を踏み出す 。

ーーシュッッッッ!!!

「ぬぁっ?!!」

びっくりしたー…急に耳元で何かが物凄い速さで通り過ぎたような音がきこえ、驚いて足元を見ると、つま先のすぐ先に矢のようなものが刺さっていた。

「え……?」

弓道部の人が朝練でもしていたのか…いや、でもまだここは学校から遠く離れている。それに……

「なに…これ…」

その矢のようなものは弓道部が使っているのとは違い、謎の光を放っていた。こんなものは見たことがない。本当に矢なのかな?
考えること数秒。必死に頭を巡らせて浮かんだのは新種のおもちゃではないかと言うことだけだった。よく小さい子が使っている、ボタンを押すと光って変身できる系のおもちゃ。最近の子はこんなに再現度が高くて危険なものを使っているのかー

「ねーえ!こいつ、本当に強いんですかー? 逃げようともしてないよぉ? それに、なんかすっごい間抜け面ですよ!!人違いじゃないですかぁー?」

ん? どこからか不満そうな少女の声が聞こえた。 驚いて声の主をさがすも、前にも後ろにも人の気配はしなかった。まぁこのおもちゃの持ち主のものだろうって思っておこう。再び歩き始める。あ、そろそろ走り始めなきゃまずい。ちっちゃい子に構ってられる余裕なんて、忙しい学生にはないのだ。
変な矢が飛んできてから、さっきの違和感がグッと強まったが、それも無視して駆け出した。

「あ!!逃げた逃げたー!」

またもや聞こえる少女の声。しかしもう振り返らずに走り続ける。

――ヒュンッッッッ!!

「うわあっ!!」

また?!!今度は前、後ろ、左右の4本も同時におもちゃの矢みたいなのが飛んで来た。驚いてる暇もなく、光を放っている矢…の光が一瞬強く輝いたかと思うと、その光が私の体に一直線に集まってきた。

「なっ…なっ…!?」

まるで光の紐のように、体にきつく巻きついてくる。
私は夢でも見てるの??

「く、くるし……」

息がつまりそう。なんとかこの紐から逃れようともがくも、さらにきつく巻きついてくるだけで逆効果だった。この紐はいったいなんなんだろう…

「あぁ~リュリュ様ぁー!ずるいです!私がやりたかったのにぃ…」


拗ねたような少女の声が聞こえ、それに大人びた女性の声が答える。

「うるさい。後は私がやる。」

「誰?!」


さっきまで気配すら感じられなかったのに、目の前にはとても変わった外見をしている少女と女性がいた。いったいどこからあらわれたんだろ?
少女の方はピンクと水色のグラデーションのかかった髪を輪っかみたいなツインテールにしていて、魔法少女のような可愛らしい服を着ている。女性のほうは白銀の髪にとても綺麗な顔立ち、スレンダーでモデルさんみたいだ。
2人ともコスプレしてるのかな…?


「なになになに?なに?え、え?あなた達はなに?え?演劇部のサプライズか何か?んん?」

私の頭の中は疑問符でいっぱいだ。


「クルス、ガッテルの方を援護してやってくれ。」

リュリュと言う人が少女に何か言ったようだ。なるほど、少女はクルスちゃんなのね。で、ガッテルって誰やねん!
そして完璧に私の質問は無視されてますねー
混乱する頭の中、一体自分の身になにが起こっているのか考える。うん、なーんにもわかんないね。
あれ、なんかリュリュと言う人が真っ直ぐ私の目を見ている。そんな綺麗な目で見つめられたら困るなぁ…
しかし、その口から発せられた言葉は――

「お前の魔力をもらっていく。」



「……は?」


とんだ厨二病やないかい!

「残念だったな。恨むのなら魔力の使い方も教えてくれなかったお前の親を恨むことだ。」


なんだか訳の分からないことを言いながら、厨二病がかった仕草で手のひらを向けてきた。
重症だなこりゃ…


そして数秒も経たないうちに、矢の光と同じような光が手のひらの前に出てきて、光の玉を作り始めた。
すると、一瞬でその光の玉から一筋の光の紐が伸び、体に巻きついている紐と重なった。ように見えた。

「うぁっ…!!」

な、なんだ?!
その瞬間、全身に今まで感じたことのない痛みが走り、思わずうめき声をあげてしまった。矢は光るし、へんな人が話しかけてくるし、痛いし………
これはただ事ではないと、思い始めたが時すでにお寿司であった。


呑気なことばかり考えていた自分を恨み、私の意識は暗闇へと沈んでいった。




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