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第二章の7
親子二人
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「親父!」
聡が老人に向かって叫ぶ。時間差で別々にやってきた二人の依頼人は、なんと親子だった。
「じゃあ、私に話してくれた怒ってばっかりのお父さんて、この人?」
とたんに心証が悪くなる。しかし、杖をついて腰の曲がった弱った老人にしか見えない。怒った場面を想像できなくて、真名は戸惑う。
「親父もここに来たのか。それもそうだな。二人一緒に事故に遭ったんだから、不思議なないよな」
理解が早い聡。
「逆に都合がいいというものだ。親父にしか分からないことがたくさんあるんだから、本人に聞くのが一番早い。なあ、親父」
ところが、さっきから話しかけられている老人は、きょとんとして困ったように首をかしげている。
まだ何も思い出していない状態なのだ。聡にも辛抱強く待ってもらわなければならない。
「親父。何ぼーっとしてんだよ。まだボケてなかっただろ。あのさ、大事な話してるから、ちゃんと聞いてくれよ。親父の大切な本を破いてしまって、本当に悪かった」
「?」
お父さんはやっぱりきょとんとしている。有力な手がかりが得られると思ったのに、息子以上に何も覚えていないお父さん。
聡も、ついさっきまで自分もぼーっとして似たような状態だったのに、父親には厳しい。
「父上はここに来たばかりで、混乱している。時間をおいて改めて聞くべきだ。聡は本の捜索を続けたほうがいい」
文子の忠告を聞いて、聡はこちらに向き直った。
「それなんですけど、やっぱり無理そうです。ここ、思った以上に広くて、とても一人で回りきれる面積じゃありませんよ。あなた方は図書館の司書さんですよね。僕の探している本を見つけてくれませんか。親父もきっと本を見ればいろいろ思い出すと思うんですよろしくお願いします」
困った状況になってしまった。丁寧な態度名だけに、無下に出来ない。
「あたしたちも協力はしますが、自分でも探す努力はしてください」
「あ、はい。分かりました」
といって、すぐに父親に向かって『思い出せ』攻撃を始める聡。真名は文子の袖を引っぱった。
「なんで本人たちが覚えてもいない本を探さないといけないの? もうよくない? 解決してるじゃないの。息子はお父さんに謝って、お父さんのほうは許すというか覚えていないから、どうでもいいわけでしょう?」
「でも、彼らが天国に行かずにここに留まっているということは、まだ何か足りないということだ。私たちはその何かを見つけるのが仕事だ」
「そんな雲をつかむような話」
困ったときのシロ頼み。
「シロ。この人たちの匂いがついている本、この中にないの?」
「くぅーん」
それはできないと、さっき試したばかりだった。
「文子。ずっと解決しないままだったら、この人たちどうなるの? ずっと探し続けるの?」
「そうかもね。いつまでもここにいると思う。言いたくないけど、あたしみたいになる」
「文子みたいって?」
文子は手を振って話を打ち切った。
「父親の記憶がはっきりしてくるのを待つのが一番確実だな。それまではまたあてもなく破れた本を探す作業をするしかない。そもそもあたしたちの仕事は、そういう地道なものだ。ちょうどいい。掃除しながら破れや傷みを見て回るぞ」
予定どおり書庫へ向かう文子。聡は、父親に思い出すよう迫っている。
「親父。自分の名前言えるか? 剛だぞ。つ、よ、し。言ってみな。僕たち、車に乗ってたんだ。目的地は言える? どう?」
聡は父親に、答える隙もないほど質問攻めしている。真名はついさっきまでの自分を見るようで、少し恥ずかしかった。聡を責め立てていた真名も、あんなに必死になっていたのだろうか。
聡が老人に向かって叫ぶ。時間差で別々にやってきた二人の依頼人は、なんと親子だった。
「じゃあ、私に話してくれた怒ってばっかりのお父さんて、この人?」
とたんに心証が悪くなる。しかし、杖をついて腰の曲がった弱った老人にしか見えない。怒った場面を想像できなくて、真名は戸惑う。
「親父もここに来たのか。それもそうだな。二人一緒に事故に遭ったんだから、不思議なないよな」
理解が早い聡。
「逆に都合がいいというものだ。親父にしか分からないことがたくさんあるんだから、本人に聞くのが一番早い。なあ、親父」
ところが、さっきから話しかけられている老人は、きょとんとして困ったように首をかしげている。
まだ何も思い出していない状態なのだ。聡にも辛抱強く待ってもらわなければならない。
「親父。何ぼーっとしてんだよ。まだボケてなかっただろ。あのさ、大事な話してるから、ちゃんと聞いてくれよ。親父の大切な本を破いてしまって、本当に悪かった」
「?」
お父さんはやっぱりきょとんとしている。有力な手がかりが得られると思ったのに、息子以上に何も覚えていないお父さん。
聡も、ついさっきまで自分もぼーっとして似たような状態だったのに、父親には厳しい。
「父上はここに来たばかりで、混乱している。時間をおいて改めて聞くべきだ。聡は本の捜索を続けたほうがいい」
文子の忠告を聞いて、聡はこちらに向き直った。
「それなんですけど、やっぱり無理そうです。ここ、思った以上に広くて、とても一人で回りきれる面積じゃありませんよ。あなた方は図書館の司書さんですよね。僕の探している本を見つけてくれませんか。親父もきっと本を見ればいろいろ思い出すと思うんですよろしくお願いします」
困った状況になってしまった。丁寧な態度名だけに、無下に出来ない。
「あたしたちも協力はしますが、自分でも探す努力はしてください」
「あ、はい。分かりました」
といって、すぐに父親に向かって『思い出せ』攻撃を始める聡。真名は文子の袖を引っぱった。
「なんで本人たちが覚えてもいない本を探さないといけないの? もうよくない? 解決してるじゃないの。息子はお父さんに謝って、お父さんのほうは許すというか覚えていないから、どうでもいいわけでしょう?」
「でも、彼らが天国に行かずにここに留まっているということは、まだ何か足りないということだ。私たちはその何かを見つけるのが仕事だ」
「そんな雲をつかむような話」
困ったときのシロ頼み。
「シロ。この人たちの匂いがついている本、この中にないの?」
「くぅーん」
それはできないと、さっき試したばかりだった。
「文子。ずっと解決しないままだったら、この人たちどうなるの? ずっと探し続けるの?」
「そうかもね。いつまでもここにいると思う。言いたくないけど、あたしみたいになる」
「文子みたいって?」
文子は手を振って話を打ち切った。
「父親の記憶がはっきりしてくるのを待つのが一番確実だな。それまではまたあてもなく破れた本を探す作業をするしかない。そもそもあたしたちの仕事は、そういう地道なものだ。ちょうどいい。掃除しながら破れや傷みを見て回るぞ」
予定どおり書庫へ向かう文子。聡は、父親に思い出すよう迫っている。
「親父。自分の名前言えるか? 剛だぞ。つ、よ、し。言ってみな。僕たち、車に乗ってたんだ。目的地は言える? どう?」
聡は父親に、答える隙もないほど質問攻めしている。真名はついさっきまでの自分を見るようで、少し恥ずかしかった。聡を責め立てていた真名も、あんなに必死になっていたのだろうか。
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