11 / 25
シューベルト/ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調
11話 君と僕の小夜曲―2
しおりを挟む
「おぉ! そのカッコ可愛い子が結野さん?」
「こんにちは。先輩たち」
現れた綾音はベージュと白のコントラストが映えるワンピースに身を包んでいた。春が終わり初夏の、緑の匂いが木陰にいる僕たちへと届く。緩やかな風が前髪を揺らし少しウザったくなる。そんな様子に微笑みながら陽射しの中を歩く綾音。
休日の昼下がり、僕たちは駅前に集まっていた。僕が来た時は既に麗華と小雪が待っていて何か話していたが、僕が来るやいなや話題を変えるもんだからちょっと気になる。そして最後には綾音が来たというわけだ。
「あなたねぇ、せっかくオフの日だってのにどうして制服なのかしら?」
「見る度に藍色のパーカー着てる人に言われたくないですよ」
「いいじゃない。これ。楽だし適当にしててもそれっぽく見えるから」
麗華はその場でくるりと優雅に回転しパーカーをふわりとさせる。靡く薄手のジップパーカーは確かに麗華の容姿だからこそ余裕が生まれて似合う、彼女の性格にバッチリあっているなんて僕は思う。
「わたしはそのパーカー結構好きだよ? かわいいよね」
「えぇそうでしょう? でもね子供の頃はドレスっぽい服を着てたのよ」
「ドレスっぽいって……」
麗華のおしゃれ度が分かるような発言で思わず苦笑いしてしまうが、ピアノとずっと向き合っていた彼女なら仕方ないのかな。だけど綾音は結構オシャレさんなのだ。いつも制服で分からなかったけど、こうして私服を着ている彼女を見るとそう思ってしまう。実は小雪も年頃の女の子にしては怪しい場面があるんだけど本人は気にしていないらしい。とはいっても今日の三人はどこかおしゃれ度がいつもよりも高い気がする。
「それにしても岡崎は来られないなんて、ちょっと申し訳ないね」
「まあいいよ~。忙しいんだったらしょうがないよ~」
「芳先輩のご友人に会えないのは残念ですが……この人たちなんですね」
「芳?」
「ええっと?」
麗華と小雪は訝しるように視線を送るも本人はどこ吹く風か全く気にしていない様子。そういえば小雪以外の人は僕のことを名前で呼ぶようになったんだった。小雪に関しては僕に言うだけ言わせて後は知らんぷりだし、名前で呼ばなかったら反応しないし。とにかく色々と困ったもんだ。
「どうしたんですか? 皆さん」
「どうして名前で呼んでいるのかしら? もしかしてあなたと彼ってそんな関係なの?」
「それわたしも気になる! どうなの? 二人ってもしかして付き合ってるの?」
「いえいえ。そんな付き合ってなんかないですよ。私はただ朝食を作っているだけ……です」
「わお」
「え!!」
「一体どういうことかしら」
流石に口を滑らせすぎたのか唖然とした顔のままこちらを向く。どうにもできないぞ綾音よ! 君が蒔いた種なんだ!
「あの~そうですね。作ってますね。はい。普通に作ってます」
「へえぇそうなんだぁ~わたし羽野くんのお家すら知らないのにすっごいな~」
「そうねぇ私たちって確か幼馴染だったはずよねぇ。もしかしたら彼にとって私たちってどうでもいいのかね~」
「ね~」
ニコニコと笑い合っている二人がかなり恐ろしい。この二人たまに意気投合する時があるけど今回は比にならないくらいやばい。気温なのか彼女たちが恐ろしいのか手汗が滲むのが止まらない。片方は僕にもう片方は綾音に交互に入れ代わり立ち代わりに問い詰めてくる。それから事情をきっちり聞くまで僕たちは質問攻めにあった。
ただし僕たちの出逢いと家に泊まったことまでは言えなかった。
「さあみんな! レッツゴー!」
「行きましょう」
「はぃいい」
「……うぅ」
「どうしたの~? 元気ないの? 朝食は食べた?」
「そうね美味しい朝食は食べたんじゃないのかしらね」
このイジりはなかなか消えそうにない。だってあの二人相当楽しそうにしているから。駅から少し歩いた場所にあるこの商店街はよく賑わっているが今日はいつも以上に人が居た。子どもが後ろにいる家族から駆けていく様子や観光しにきた外国人。そして所々に飾ってある提灯たち。カラフルな色をしてこの真っ直ぐな道を染め上げていた。
それだけでこの場所は一気に別の所に来たのかと錯覚させるには充分すぎた。なんせ今日はこの街の特別な行事があるから。地元の人にとってはなじみのある催しだけど、案外知られていない。少し前にSNSか何かで発信していたからこうして外国人もいるんだろうけど、いやだから新鮮に感じるのかもしれない。
「私こういう行事苦手なのよね」
「僕も。いっぱい人がいると気が滅入っちゃうよね」
「そうそう。セールされた本を少し見て回りたいだけなのにこんなに人がいちゃそれもままならないわね」
「ちょっと羽野くんたちーそんなネガティブなこと言わないで! 今日は楽しい行事なんだし」
「そうですよ芳先輩。やっぱり伝統行事は大切にすべきですよ」
「はーい」
「もう。先輩ったら」
店頭にいくつか並べられている本に興味を引かれる。そこには難しそうな哲学書が並んでいた。これじゃ売れないだろうなんて心の内で思っていたけど、思わず足を止めてしまう。というか既に止まっているのだけど。
「なにか良い本があった?」
「ええ、あったわ。この本絶版なのにどうして置いてあるのかしら」
その手の中に収められているのは『反哲学的断章』という本。僕は詳しくは知らないからどういう本なのか分からないけど、とにかく麗華は嬉しそうにしていた。麗華が店主とやり取りをしている時に僕らが居ないのに気が付いたのか、綾音と小雪が戻ってくる。二人は退屈そうな視線を向けていたけど、僕はわりかし麗華側の人間だから申し訳ないと心の内で謝罪してしまう。
そこから打って変わって僕たちが辛い番に回ってきた。
「こういうものって私よく分からないのよね」
「まあ僕はそういうのが元々ってこともあるけどね」
手短にある小物を掴み、しげしげと眺める麗華の隣でキャイキャイ言っている小雪と綾音のコンビ。あれが可愛いだのこれの色がいいだのと言い合っているけど、正直全く分からない。よく女の子は雰囲気が可愛いとか、とにかくレイヤーがずれた所にあると思っているけど、まさにそうなのかななんて思っていた。
「先輩っ! どっちが可愛いと思いますか?」
「羽野くんこれはどうかな?」
綾音の手元にはぬいぐるみの小さなクマがちょこんと座っているのと、白いアヒルが丸くなっているのがあった。そして小雪は蝶のような意匠が施された髪留めと雪の結晶が付いた同じく髪留め。こうして聞きにくるってことは心の内では決まっているってなにかで見たぞ! そうだったらこれは未解決問題じゃなくただの二択だ! よし適当に決めよう!
「綾音はこっちかな。で、小雪はこっち」
僕はクマと蝶を選んだ。そして綾音は「そうですよね!」と嬉しそうにしていて、小雪に関しては「流石だぜ相棒」みたいな顔をしていた。一応小雪の趣味はちょっとは分かる、これでも幼馴染なんだから。綾音に関しては以前のクレーンゲームでクマが好きなのかなって推測しただけなんだけどね。
「これ買ってきます!」
「わたしも~」
「ふうん。やっぱり分からないわ」
「麗華の場合はきっと物よりも言葉の方が好きなんじゃない?」
「そうね、そっちの方が私は好きね」
手を後ろで結んで身を少し屈め、僕を上目遣いで見てくるその様子に思わずドキリと心臓が大きく振動する。だって睫毛は綺麗に揃えられ口唇はほんのり赤みが差している。今まではそんなことをできるだけ思わないようにしていたけど、やっぱり麗華は美人なのだ。
そんな彼女を見ているとあの時の観覧車を思い出す。だから僕はその時に思った詩を君に送り返してみようと思った。
「これは世界にあてたわたしの手紙です」
聴いた途端に頬を緩め小さく息を吐き、もっと僕に近付いてくる。だんだん顔に近付いてぶつかったと思えば囁くように告げた。
「ふふ、私もその詩は好きよ。」と。
やはり彼女は僕とどこか違うとどうしてか思ってしまう。言葉として言い表せないんだけど一つ次元が違うような、とにかくそんな感じ。すべてを見据えているような雰囲気を時折思わせるのはどうしてなんだろう。
「ちょっと何してるんですか!」
「二人とも~イチャコラしないでよ」
いつの間にやら戻ってきた綾音と小雪。ああなんだかあの二人の雰囲気は落ち着くなぁなんて思わずにいられなかった。
それから僕たちはこの催しの目玉である灯籠流しまでカラオケでもして時間を潰すことにした。
「聴いてなさい芳」と自信満々に宣言するだけの実力だった。というか普通にめちゃくちゃ上手い。麗華は容姿も優れているだけでなくて声もいいことを僕たちに思い出させた。
「この人の後だなんてかなり嫌ですぅ」
「頑張ってあやちゃん!」
麗華に続いて綾音が歌うも本人が思っているほど下手じゃない。まあさっきのを聴いた後ならかなり差があるように感じるけど、充分上手い。たまに小雪たちとカラオケに来るけど少なくとも僕たち以上の上手さだ。
「あやちゃんも上手いね~!」
「へぇ意外とやるじゃない」
「そんなことないですよ」
「わたしもいっちゃうね!」
今度は小雪。スピーカーからは彼女の好きなアニメソングが流れる。僕たちの間ではお決まりのパターンだ。何より上手さよりも楽しそうに歌うから一緒に居て面白いんだ。そんな様子を岡崎は面白おかしくイジっていたけど。
いよいよ僕の番になる、正直歌は上手くない……ただ恐ろしく音程は外してはいないと信じたい。
「意外でした。芳先輩って歌上手だったんですね」
「私も驚きよ。あなた思っている以上に上手いわよ?」
「いやぁ羽野くんだねぇ」
ウンウンと頷きながら小雪は満足げにしている。僕としては褒められて嬉しいんだけど、僕自身は全く上手いとは思っていないからなんだかむずがゆい。
それから満足するまで麗華と小雪が歌っていたけど、急に小雪が灯籠流しの前にどこかへ食べに行こうと提案した。時間もちょうどよかったし僕たちはその提案に乗った。
「こんにちは。先輩たち」
現れた綾音はベージュと白のコントラストが映えるワンピースに身を包んでいた。春が終わり初夏の、緑の匂いが木陰にいる僕たちへと届く。緩やかな風が前髪を揺らし少しウザったくなる。そんな様子に微笑みながら陽射しの中を歩く綾音。
休日の昼下がり、僕たちは駅前に集まっていた。僕が来た時は既に麗華と小雪が待っていて何か話していたが、僕が来るやいなや話題を変えるもんだからちょっと気になる。そして最後には綾音が来たというわけだ。
「あなたねぇ、せっかくオフの日だってのにどうして制服なのかしら?」
「見る度に藍色のパーカー着てる人に言われたくないですよ」
「いいじゃない。これ。楽だし適当にしててもそれっぽく見えるから」
麗華はその場でくるりと優雅に回転しパーカーをふわりとさせる。靡く薄手のジップパーカーは確かに麗華の容姿だからこそ余裕が生まれて似合う、彼女の性格にバッチリあっているなんて僕は思う。
「わたしはそのパーカー結構好きだよ? かわいいよね」
「えぇそうでしょう? でもね子供の頃はドレスっぽい服を着てたのよ」
「ドレスっぽいって……」
麗華のおしゃれ度が分かるような発言で思わず苦笑いしてしまうが、ピアノとずっと向き合っていた彼女なら仕方ないのかな。だけど綾音は結構オシャレさんなのだ。いつも制服で分からなかったけど、こうして私服を着ている彼女を見るとそう思ってしまう。実は小雪も年頃の女の子にしては怪しい場面があるんだけど本人は気にしていないらしい。とはいっても今日の三人はどこかおしゃれ度がいつもよりも高い気がする。
「それにしても岡崎は来られないなんて、ちょっと申し訳ないね」
「まあいいよ~。忙しいんだったらしょうがないよ~」
「芳先輩のご友人に会えないのは残念ですが……この人たちなんですね」
「芳?」
「ええっと?」
麗華と小雪は訝しるように視線を送るも本人はどこ吹く風か全く気にしていない様子。そういえば小雪以外の人は僕のことを名前で呼ぶようになったんだった。小雪に関しては僕に言うだけ言わせて後は知らんぷりだし、名前で呼ばなかったら反応しないし。とにかく色々と困ったもんだ。
「どうしたんですか? 皆さん」
「どうして名前で呼んでいるのかしら? もしかしてあなたと彼ってそんな関係なの?」
「それわたしも気になる! どうなの? 二人ってもしかして付き合ってるの?」
「いえいえ。そんな付き合ってなんかないですよ。私はただ朝食を作っているだけ……です」
「わお」
「え!!」
「一体どういうことかしら」
流石に口を滑らせすぎたのか唖然とした顔のままこちらを向く。どうにもできないぞ綾音よ! 君が蒔いた種なんだ!
「あの~そうですね。作ってますね。はい。普通に作ってます」
「へえぇそうなんだぁ~わたし羽野くんのお家すら知らないのにすっごいな~」
「そうねぇ私たちって確か幼馴染だったはずよねぇ。もしかしたら彼にとって私たちってどうでもいいのかね~」
「ね~」
ニコニコと笑い合っている二人がかなり恐ろしい。この二人たまに意気投合する時があるけど今回は比にならないくらいやばい。気温なのか彼女たちが恐ろしいのか手汗が滲むのが止まらない。片方は僕にもう片方は綾音に交互に入れ代わり立ち代わりに問い詰めてくる。それから事情をきっちり聞くまで僕たちは質問攻めにあった。
ただし僕たちの出逢いと家に泊まったことまでは言えなかった。
「さあみんな! レッツゴー!」
「行きましょう」
「はぃいい」
「……うぅ」
「どうしたの~? 元気ないの? 朝食は食べた?」
「そうね美味しい朝食は食べたんじゃないのかしらね」
このイジりはなかなか消えそうにない。だってあの二人相当楽しそうにしているから。駅から少し歩いた場所にあるこの商店街はよく賑わっているが今日はいつも以上に人が居た。子どもが後ろにいる家族から駆けていく様子や観光しにきた外国人。そして所々に飾ってある提灯たち。カラフルな色をしてこの真っ直ぐな道を染め上げていた。
それだけでこの場所は一気に別の所に来たのかと錯覚させるには充分すぎた。なんせ今日はこの街の特別な行事があるから。地元の人にとってはなじみのある催しだけど、案外知られていない。少し前にSNSか何かで発信していたからこうして外国人もいるんだろうけど、いやだから新鮮に感じるのかもしれない。
「私こういう行事苦手なのよね」
「僕も。いっぱい人がいると気が滅入っちゃうよね」
「そうそう。セールされた本を少し見て回りたいだけなのにこんなに人がいちゃそれもままならないわね」
「ちょっと羽野くんたちーそんなネガティブなこと言わないで! 今日は楽しい行事なんだし」
「そうですよ芳先輩。やっぱり伝統行事は大切にすべきですよ」
「はーい」
「もう。先輩ったら」
店頭にいくつか並べられている本に興味を引かれる。そこには難しそうな哲学書が並んでいた。これじゃ売れないだろうなんて心の内で思っていたけど、思わず足を止めてしまう。というか既に止まっているのだけど。
「なにか良い本があった?」
「ええ、あったわ。この本絶版なのにどうして置いてあるのかしら」
その手の中に収められているのは『反哲学的断章』という本。僕は詳しくは知らないからどういう本なのか分からないけど、とにかく麗華は嬉しそうにしていた。麗華が店主とやり取りをしている時に僕らが居ないのに気が付いたのか、綾音と小雪が戻ってくる。二人は退屈そうな視線を向けていたけど、僕はわりかし麗華側の人間だから申し訳ないと心の内で謝罪してしまう。
そこから打って変わって僕たちが辛い番に回ってきた。
「こういうものって私よく分からないのよね」
「まあ僕はそういうのが元々ってこともあるけどね」
手短にある小物を掴み、しげしげと眺める麗華の隣でキャイキャイ言っている小雪と綾音のコンビ。あれが可愛いだのこれの色がいいだのと言い合っているけど、正直全く分からない。よく女の子は雰囲気が可愛いとか、とにかくレイヤーがずれた所にあると思っているけど、まさにそうなのかななんて思っていた。
「先輩っ! どっちが可愛いと思いますか?」
「羽野くんこれはどうかな?」
綾音の手元にはぬいぐるみの小さなクマがちょこんと座っているのと、白いアヒルが丸くなっているのがあった。そして小雪は蝶のような意匠が施された髪留めと雪の結晶が付いた同じく髪留め。こうして聞きにくるってことは心の内では決まっているってなにかで見たぞ! そうだったらこれは未解決問題じゃなくただの二択だ! よし適当に決めよう!
「綾音はこっちかな。で、小雪はこっち」
僕はクマと蝶を選んだ。そして綾音は「そうですよね!」と嬉しそうにしていて、小雪に関しては「流石だぜ相棒」みたいな顔をしていた。一応小雪の趣味はちょっとは分かる、これでも幼馴染なんだから。綾音に関しては以前のクレーンゲームでクマが好きなのかなって推測しただけなんだけどね。
「これ買ってきます!」
「わたしも~」
「ふうん。やっぱり分からないわ」
「麗華の場合はきっと物よりも言葉の方が好きなんじゃない?」
「そうね、そっちの方が私は好きね」
手を後ろで結んで身を少し屈め、僕を上目遣いで見てくるその様子に思わずドキリと心臓が大きく振動する。だって睫毛は綺麗に揃えられ口唇はほんのり赤みが差している。今まではそんなことをできるだけ思わないようにしていたけど、やっぱり麗華は美人なのだ。
そんな彼女を見ているとあの時の観覧車を思い出す。だから僕はその時に思った詩を君に送り返してみようと思った。
「これは世界にあてたわたしの手紙です」
聴いた途端に頬を緩め小さく息を吐き、もっと僕に近付いてくる。だんだん顔に近付いてぶつかったと思えば囁くように告げた。
「ふふ、私もその詩は好きよ。」と。
やはり彼女は僕とどこか違うとどうしてか思ってしまう。言葉として言い表せないんだけど一つ次元が違うような、とにかくそんな感じ。すべてを見据えているような雰囲気を時折思わせるのはどうしてなんだろう。
「ちょっと何してるんですか!」
「二人とも~イチャコラしないでよ」
いつの間にやら戻ってきた綾音と小雪。ああなんだかあの二人の雰囲気は落ち着くなぁなんて思わずにいられなかった。
それから僕たちはこの催しの目玉である灯籠流しまでカラオケでもして時間を潰すことにした。
「聴いてなさい芳」と自信満々に宣言するだけの実力だった。というか普通にめちゃくちゃ上手い。麗華は容姿も優れているだけでなくて声もいいことを僕たちに思い出させた。
「この人の後だなんてかなり嫌ですぅ」
「頑張ってあやちゃん!」
麗華に続いて綾音が歌うも本人が思っているほど下手じゃない。まあさっきのを聴いた後ならかなり差があるように感じるけど、充分上手い。たまに小雪たちとカラオケに来るけど少なくとも僕たち以上の上手さだ。
「あやちゃんも上手いね~!」
「へぇ意外とやるじゃない」
「そんなことないですよ」
「わたしもいっちゃうね!」
今度は小雪。スピーカーからは彼女の好きなアニメソングが流れる。僕たちの間ではお決まりのパターンだ。何より上手さよりも楽しそうに歌うから一緒に居て面白いんだ。そんな様子を岡崎は面白おかしくイジっていたけど。
いよいよ僕の番になる、正直歌は上手くない……ただ恐ろしく音程は外してはいないと信じたい。
「意外でした。芳先輩って歌上手だったんですね」
「私も驚きよ。あなた思っている以上に上手いわよ?」
「いやぁ羽野くんだねぇ」
ウンウンと頷きながら小雪は満足げにしている。僕としては褒められて嬉しいんだけど、僕自身は全く上手いとは思っていないからなんだかむずがゆい。
それから満足するまで麗華と小雪が歌っていたけど、急に小雪が灯籠流しの前にどこかへ食べに行こうと提案した。時間もちょうどよかったし僕たちはその提案に乗った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
下宿屋 東風荘 7
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。
狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか!
四社の狐に天狐が大集結。
第七弾始動!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる