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第一話
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磨き抜かれた廊下の先に、その静寂は鎮座していた。
和紙を通した柔らかな午後の陽光が、畳の目を一つ一つ残酷なまでに鮮明に照らし出している。
マコは己の呼吸の音がこれほどまでに騒がしく感じたことはなかった。
上質な正絹の振袖が擦れるわずかな音さえ、この静かな座敷においては不作法な騒音のように思えてしまう。
視線を上げれば、そこにはこの世のものとは思えぬほどに研ぎ澄まされた「虚無」があった。
冷泉晴明(ひやいずみ せいめい)
陰陽寮の若き俊英として名を馳せるその男は、美貌という言葉で括るにはあまりに温度が低すぎた。
整った鼻梁、薄い唇、そして長い睫毛の奥に湛えられた瞳は、まるで冬の月夜にさらされた刃の輝きだ。
彼は一度もマコを見ようとはしなかった。
ただ、そこにある空気の一部として彼女を黙殺し、手元の茶碗から立ち昇る薄い湯気だけを見つめている。
マコは内心で、己の運命にそっと手を合わせた。
冷泉家といえば、古くから不浄を撥ね除ける厳格な家柄だ。
一方のマコは、ただの裕福な商家に育った(と本人は信じている)娘に過ぎない。
家柄の釣り合いなど最初から取れてはいないのだ。
きっと彼は、この見合いを時間の無駄だと断じているに違いない。
そうでなければ、これほどまでに徹底した無関心を向けられるはずがなかった。
「……」
沈黙が、皮膚にまとわりつく湿気のように重い。
襖の向こう、別室では父の蔵之介と晴明の父である正明が、何やら景気の良い声を上げている。
かつては反目し合っていた時期もあったと聞くが、今では隠居同士、酒を酌み交わす仲だという。
その親愛の証として設定されたこの場が、マコにとってはこれ以上ない針のむしろであった。
やがて、晴明が音もなく茶碗を置いた。
その指先は白磁のように白く、節くれだったところ一つない。
「……こんな親が決めた茶番に、お前を付き合わせて悪かったな」
低い、けれど不思議と耳朶に残る透明な声だった。
それは謝罪というよりも、ただ事実を淡々と告げる宣告に近い。
晴明は流れるような所作で立ち上がり、一度も振り返ることなく出口へと歩みを進めた。
マコは膝の上で固く結んでいた指の力を、ようやく抜くことができた。
終わった。
拒絶された悲しみよりも、この息の詰まる緊張から解放される歓喜が勝った。
「失礼する」
彼がマコの傍らを通り過ぎようとした、その刹那だった。
ふわりと、頭頂部に柔らかな重みが乗った。
マコは驚きで瞬きを忘れた。
晴明の大きな、けれど羽根のように軽い掌が、マコの頭を優しく包み込んでいた。
それは立ち去り際の、ほんの気まぐれな慈悲だったのかもしれない。
あるいは、緊張で震えていた小娘への、彼なりの不器用な慰めだったのか。
けれど、その接触が引き金となった。
晴明の指先から流れ込んできたのは、冷徹な外面からは想像もつかないほど、根源的で熱烈な「熱」だ。
その熱がマコの頭蓋を透過し、意識の奥底に眠っていた「何か」に直撃する。
幼い頃から両親が欠かさずかけてくれていた、平穏を守るためのおまじない。
幾重にも重ねられた術の殻が、晴明の熱に触れた瞬間に内側から粉々に爆ぜた。
パチン、という硝子が割れるような涼やかな音が、マコの脳内で響く。
同時に、頭頂部に奇妙なむず痒さが走った。
きっちりと結い上げられていたはずの髪が、内側からの圧力に耐えかねて解けていく。
──ピョコン
それは、あまりに場違いで、あまりに愛らしい音だった。
マコの漆黒の髪を押し退けて、頭頂部から二つの黄金色の三角形が勢いよく立ち上がった。
日の光を吸い込んで、それ自体が発光しているかのような、美しい獣の耳。
人間という化けの皮が剥がれ、真実の姿が白日の下にさらされた瞬間だった。
「……え?」
マコは呆然として、自分の頭に手を伸ばした。
指先に触れたのは、かつて経験したことのないほどに濃密な、シルクを何枚も重ねたような極上の毛並みの感触だ。
己が人間ではないという事実への恐怖よりも先に、その官能的なまでの手触りに意識が飛びそうになる。
そして、マコが悲鳴を上げるよりも早く、室内の空気が一変した。
出口に向かっていたはずの晴明が、そこにはいなかった。
次の瞬間、彼はマコの目の前、肌が触れ合うほどの至近距離に跪いていた。
先ほどまでの虚無を湛えた瞳はどこへ消えたのか。
今の彼の瞳は、獲物を追い詰めた獣のようにぎらつき、底知れぬ欲望の炎がゆらゆらと揺れている。
「……何という、ことだ」
晴明の声は、歓喜に震えていた。
彼は畏怖すら感じさせるほど丁寧な手つきで、マコの黄金色の耳を両手で挟み込んだ。
「この毛並み、この密度。光を透過させぬほどの重厚な下毛。そして指を吸い寄せるような上毛の滑らかさ……。これほどまでに完璧な個体が、この世に存在したとは」
「せ、晴明様、あの、お離しください……!」
「黙れ。動くな。今の私の指は、この奇跡を記憶することだけに全神経を注いでいる」
晴明はマコの耳に顔を寄せ、花の香りを慈しむ詩人のように深く、深くその匂いを吸い込んだ。
冷泉家の当主として、幾多の怪異を調伏してきたその指が、今はただ一匹の妖狐の耳を揉みしだくためだけに動いている。
耳の付け根、神経が集中する場所を的確に、かつ執拗に愛撫され、マコの思考は急速に白濁していく。
「あ……ひゃ、やめて、変な感じが……っ」
「やめられるはずがないだろう。……マコ、前言を撤回する。これは茶番などではない。私の全人生は、この瞬間のためにあったのだ」
晴明は、とろけるような笑みを浮かべた。
それは氷細工が内側から燃え上がったような、狂気すら孕んだ美しさだった。
「結婚しよう、今すぐにだ。お前のその耳から尻尾の先まで、一毛たりとも他者に触れさせるつもりはない。生涯をかけて、私が完璧に管理してやる」
「……はい?」
マコの困惑をよそに、晴明の指はさらに深く、黄金の毛並みの中へと沈み込んでいく。
こうして、一人の少女の平穏な日常は、無口な陰陽師の「重すぎる愛」という名の執着によって、永遠に終わりを告げたのである。
和紙を通した柔らかな午後の陽光が、畳の目を一つ一つ残酷なまでに鮮明に照らし出している。
マコは己の呼吸の音がこれほどまでに騒がしく感じたことはなかった。
上質な正絹の振袖が擦れるわずかな音さえ、この静かな座敷においては不作法な騒音のように思えてしまう。
視線を上げれば、そこにはこの世のものとは思えぬほどに研ぎ澄まされた「虚無」があった。
冷泉晴明(ひやいずみ せいめい)
陰陽寮の若き俊英として名を馳せるその男は、美貌という言葉で括るにはあまりに温度が低すぎた。
整った鼻梁、薄い唇、そして長い睫毛の奥に湛えられた瞳は、まるで冬の月夜にさらされた刃の輝きだ。
彼は一度もマコを見ようとはしなかった。
ただ、そこにある空気の一部として彼女を黙殺し、手元の茶碗から立ち昇る薄い湯気だけを見つめている。
マコは内心で、己の運命にそっと手を合わせた。
冷泉家といえば、古くから不浄を撥ね除ける厳格な家柄だ。
一方のマコは、ただの裕福な商家に育った(と本人は信じている)娘に過ぎない。
家柄の釣り合いなど最初から取れてはいないのだ。
きっと彼は、この見合いを時間の無駄だと断じているに違いない。
そうでなければ、これほどまでに徹底した無関心を向けられるはずがなかった。
「……」
沈黙が、皮膚にまとわりつく湿気のように重い。
襖の向こう、別室では父の蔵之介と晴明の父である正明が、何やら景気の良い声を上げている。
かつては反目し合っていた時期もあったと聞くが、今では隠居同士、酒を酌み交わす仲だという。
その親愛の証として設定されたこの場が、マコにとってはこれ以上ない針のむしろであった。
やがて、晴明が音もなく茶碗を置いた。
その指先は白磁のように白く、節くれだったところ一つない。
「……こんな親が決めた茶番に、お前を付き合わせて悪かったな」
低い、けれど不思議と耳朶に残る透明な声だった。
それは謝罪というよりも、ただ事実を淡々と告げる宣告に近い。
晴明は流れるような所作で立ち上がり、一度も振り返ることなく出口へと歩みを進めた。
マコは膝の上で固く結んでいた指の力を、ようやく抜くことができた。
終わった。
拒絶された悲しみよりも、この息の詰まる緊張から解放される歓喜が勝った。
「失礼する」
彼がマコの傍らを通り過ぎようとした、その刹那だった。
ふわりと、頭頂部に柔らかな重みが乗った。
マコは驚きで瞬きを忘れた。
晴明の大きな、けれど羽根のように軽い掌が、マコの頭を優しく包み込んでいた。
それは立ち去り際の、ほんの気まぐれな慈悲だったのかもしれない。
あるいは、緊張で震えていた小娘への、彼なりの不器用な慰めだったのか。
けれど、その接触が引き金となった。
晴明の指先から流れ込んできたのは、冷徹な外面からは想像もつかないほど、根源的で熱烈な「熱」だ。
その熱がマコの頭蓋を透過し、意識の奥底に眠っていた「何か」に直撃する。
幼い頃から両親が欠かさずかけてくれていた、平穏を守るためのおまじない。
幾重にも重ねられた術の殻が、晴明の熱に触れた瞬間に内側から粉々に爆ぜた。
パチン、という硝子が割れるような涼やかな音が、マコの脳内で響く。
同時に、頭頂部に奇妙なむず痒さが走った。
きっちりと結い上げられていたはずの髪が、内側からの圧力に耐えかねて解けていく。
──ピョコン
それは、あまりに場違いで、あまりに愛らしい音だった。
マコの漆黒の髪を押し退けて、頭頂部から二つの黄金色の三角形が勢いよく立ち上がった。
日の光を吸い込んで、それ自体が発光しているかのような、美しい獣の耳。
人間という化けの皮が剥がれ、真実の姿が白日の下にさらされた瞬間だった。
「……え?」
マコは呆然として、自分の頭に手を伸ばした。
指先に触れたのは、かつて経験したことのないほどに濃密な、シルクを何枚も重ねたような極上の毛並みの感触だ。
己が人間ではないという事実への恐怖よりも先に、その官能的なまでの手触りに意識が飛びそうになる。
そして、マコが悲鳴を上げるよりも早く、室内の空気が一変した。
出口に向かっていたはずの晴明が、そこにはいなかった。
次の瞬間、彼はマコの目の前、肌が触れ合うほどの至近距離に跪いていた。
先ほどまでの虚無を湛えた瞳はどこへ消えたのか。
今の彼の瞳は、獲物を追い詰めた獣のようにぎらつき、底知れぬ欲望の炎がゆらゆらと揺れている。
「……何という、ことだ」
晴明の声は、歓喜に震えていた。
彼は畏怖すら感じさせるほど丁寧な手つきで、マコの黄金色の耳を両手で挟み込んだ。
「この毛並み、この密度。光を透過させぬほどの重厚な下毛。そして指を吸い寄せるような上毛の滑らかさ……。これほどまでに完璧な個体が、この世に存在したとは」
「せ、晴明様、あの、お離しください……!」
「黙れ。動くな。今の私の指は、この奇跡を記憶することだけに全神経を注いでいる」
晴明はマコの耳に顔を寄せ、花の香りを慈しむ詩人のように深く、深くその匂いを吸い込んだ。
冷泉家の当主として、幾多の怪異を調伏してきたその指が、今はただ一匹の妖狐の耳を揉みしだくためだけに動いている。
耳の付け根、神経が集中する場所を的確に、かつ執拗に愛撫され、マコの思考は急速に白濁していく。
「あ……ひゃ、やめて、変な感じが……っ」
「やめられるはずがないだろう。……マコ、前言を撤回する。これは茶番などではない。私の全人生は、この瞬間のためにあったのだ」
晴明は、とろけるような笑みを浮かべた。
それは氷細工が内側から燃え上がったような、狂気すら孕んだ美しさだった。
「結婚しよう、今すぐにだ。お前のその耳から尻尾の先まで、一毛たりとも他者に触れさせるつもりはない。生涯をかけて、私が完璧に管理してやる」
「……はい?」
マコの困惑をよそに、晴明の指はさらに深く、黄金の毛並みの中へと沈み込んでいく。
こうして、一人の少女の平穏な日常は、無口な陰陽師の「重すぎる愛」という名の執着によって、永遠に終わりを告げたのである。
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