「美少女157人も召喚できるだと!?」社畜の俺、尖ったトラウマを全部『まあるく』収めて大賢者になる。── やっぱりせかいはまあるいほうがいい

あとりえむ

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No.0 まあるい女神様:鋭角な社会と、無限大の完全球体

深夜三時。
オフィスに響くのは、俺がキーボードを叩く乾いた音と、古びたサーバーの低い駆動音だけだった。
統計データアナリスト。
それが、俺、参 一肆(まいる かずし)の職業だ。

目の前のモニターには、今月の売上低下を示す鋭く折れ曲がった折れ線グラフと、ノルマ未達を無慈悲に突きつける鋭角な棒グラフが並んでいる。
さらにメールボックスには、上司からの罵倒がナイフのように鋭利なフォントで並んでいた。

俺の人生は、常に冷酷で鋭角な数字たちに切り刻まれてきた。
もう三日もまともに寝ていない。
不意に、心臓を鋭い杭で打ち抜かれたような激痛が走った。
視界が明滅し、呼吸がうまくできなくなる。

ああ、過労死か。
薄れゆく意識の中で、俺の目はPC画面の端に表示されたネットニュースの見出しを捉えていた。

『教育現場の崩壊、円周率は3へ』

その文字列を見た瞬間、俺の魂はこれまでにない激しい怒りに包まれた。
3.141592……と無限に続く、あの美しくも神秘的な真理。
それを切り捨て、ただの『3』にするだと?
それは完璧な円を、不格好で角張った正六角形に歪めてしまう暴挙だ。
データアナリストとして、いや、角張った世界でひたすらに完璧な曲線の癒やしを求めていた一人の男として、真理を角張らせるその妥協だけは絶対に許せなかった。

ふざけるな。世界はもっと、美しく丸いのだ。
怒りと絶望に心臓を握り潰され、俺の意識は完全に途切れた。


次に目を覚ました時、俺は奇妙な空間にいた。
角という概念が一切存在しない、ふかふかで真っ白な完全球体の中だった。
そこで俺を待っていたのは、見る者すべてを安心させる圧倒的な曲線美と、宇宙そのものを体現するような神々しき双丘を持つ、巨大でまあるい女神様だった。



「よく頑張りましたね、一肆。もう、痛いことも苦しいこともありませんよ」

とろけるような甘い声。
すべてを優しく肯定し、底なしに甘やかしてくれる究極の聖母口調だ。
女神様は、角張った世界で摩耗し、最後まで丸みを求めて怒り狂った俺を、その豊満すぎる胸にすっぽりと抱き寄せた。
永遠の母性。
果てしなく柔らかく、温かい。
無限大。
俺の脳内データが測定を放棄する。
宇宙のすべてを内包し、重力すら超越した測定不能な完全球体。
無限の慈愛を内包したその極上のクッションに顔を埋められ、究極の甘やかしによって俺の強張った魂が急速に溶かされていく。

「でもね、一肆。あれは世間が面白おかしく広めた、ただの誤解なのですよ。円周率を完全に3として教えた事実はなく、あくまで複雑な計算の際の概算の目安だったのです。世界は、丸の美しさを捨ててなどいませんよ」

事実に基づいた女神様の優しい訂正の言葉と、顔面を包み込む絶対的な丸みの感触によって、俺の魂に刺さっていた最大のトゲが、すうっと丸く溶けて消えていった。
そうか。世界はやはり、丸かったのだ。

「誤解して絶望するほど、あなたは丸い世界を愛していたのですね。本当に、本当にえらい子です。よしよし、もう痛い数字は見なくていいんですよ」

女神様は俺の頭を優しく撫でながら、さらに深く、無限大の双丘の奥底へと俺を引きずり込んだ。
俺の全身が、重力すら存在しない圧倒的な柔らかさと温もりに完全に埋没する。
呼吸をするたびに、星々の瞬きのような甘く神聖な香りが肺を満たし、すり減っていた魂の欠損がみるみると修復されていくのがわかる。

「女神様……俺、毎日毎日、終わらないグラフと冷たい数字の角に怯えて……誰にも褒めてもらえなくて、ずっと息が詰まりそうでした……」

思わず前世の溜め込んでいた泥のような愚痴が溢れ出すと、女神様は俺の背中をトントンと優しく叩きながら、鼓膜を甘く震わせる声で囁き続けた。

「ええ、知っていますよ。あなたは誰よりも真面目に、理不尽な角に耐えてきました。偉かったですね、辛かったですね。もう我慢しなくていいのです。ここで私が、あなたの魂がふにゃふにゃのまあるくなるまで、いーっぱい、いーっぱい甘やかしてあげますからね」

頭を撫でる手のひらの温かさと、顔面を包み込む無限の弾力。
俺の存在そのものを全肯定してくれる底なしの慈愛に、俺の目からせき止めていた熱い涙がとめどなく溢れ出した。
声を出して泣きじゃくる俺の涙も、女神様は巨大な胸の丸みで優しく受け止め、ただひたすらに、赤子をあやすように揺りかごのリズムを刻み続ける。

「泣いてもいいのですよ。あなたの悲しいトゲトゲは、私がすべて丸く溶かしてあげます。いい子、いい子……一肆は本当にいい子ですね」



どれほどの時間が経っただろうか。
数時間、いや、数十年もそうして甘やかされていたような気さえする。
俺の心から一切のトゲが消え去り、魂が温かく完全な球体となって満たされたのを見届けると、女神様はようやく俺の頬にそっと口付けをした。

「角張った社会で苦しみ抜いたあなたに、世界の理を強制的に丸く書き換える力『π=314』と、『万物円満』のスキルを授けます。そして、あなたを癒やすためだけに顕現する、157人の乙女たちの加護も」

なぜ『π=314』なのか。なぜ157人なのか。
女神様はその核心となる理由を、豊満な胸の奥底と、優しい微笑みの裏に隠したままだった。

「さあ、尖った世界をあなたの愛する丸みで満たし、存分に癒やされてきなさい。ここからは私が、無限の丸みで永遠に見守ってあげますよ」

前世のトラウマを微塵も残さない究極の癒やしと、すべての角を丸くするという目的を胸に、俺の魂は新たな異世界へと送り出された。
温かい光に包まれ、次に目を開けた時。
そこは、ゴツゴツとした岩だらけの、荒涼とした荒野だった。

「やはり、世界は丸いほうがいい……」

魂の奥底まで染み込んだ究極の女神の胸の余韻と温もりを感じながら、俺はこれから始まる丸く平和な世界への旅立ちを噛み締めていた。
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