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第11話 その聖剣、ボッタクリにつき ~魔王様、原価率5%の商品を定価で買うのは『経営不備』です~
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魔王軍・特別監査室。
元は空き部屋だったこの場所も、今や魔王城で最も恐れられる「聖域」となっていた。
私は、新調した魔導ロングコートの重厚な袖口を整え、デスクに投影された「キャッシュフロー表」を冷ややかに見つめていた。
「……魔王様。一つ、よろしいでしょうか」
「な、なんだねクリフCFO。改まって。……今、私はアリスと新しいハーブティーのテイスティングをしている最中なのだが」
玉座代わりのソファでくつろぐ魔王ゼノンの前には、高価そうな茶葉が並んでいる。
私は無言で、彼が今まさに承認印(ハンコ)を押そうとしていた書類を、横からひったくった。
「これですよ。聖騎士団御用達の商社『ロイヤル・アームズ』からの請求書。聖剣エクス・レプリカ100本で、一億マナ。……一本あたり百万マナですか」
「うむ。聖剣は貴重だからな。人間側との平和協定に基づき、余剰在庫を『適正価格』で譲ってもらっているのだよ。これもまた、相互理解の一環だ」
魔王は「良いことをしている」と言わんばかりの、慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
だが、私の隣でゲーミングチェアをくるりと回転させ、黒タイツの脚を組み替えたアリスが、鼻で笑った。
「パパ、それ完全にカモられてるよ。……はい、これ見て」
アリスが銀髪を揺らし、宙に浮かせた石板(スレート)を指先で弾く。
[Code Audit] 製品原価・品質解析ログ
──────────────────────
Target: 聖剣『エクス・レプリカ』
Analyst: Alice_CTO
▼ 1. 原価構造 (Cost Structure)
[Sales Price ] ■■■■■■■■■■
(1,000,000 Mana)
↓
[Actual Cost] ■□□□□□□□□□
(50,000 Mana) ※原価率:5.0%
▼ 2. 品質判定 (Quality Check)
Material: 粗悪な鉄(Iron)
Effect: 光魔法コーティング(表面のみ)
Durability: 《Low (使い捨てレベル)》
──────────────────────
「げ、原価五万……!? それを百万で売っているというのか!?」
魔王が驚愕でティーカップを取り落とす。
私は銀縁眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、冷徹に告げた。
「ええ。聖騎士団が『これは聖なる武器である』とお墨付きを与え、不当に価格を吊り上げている……。いわゆる【価格カルテル】、および【独占禁止法違反】の疑いが濃厚です」
私は魔導計算杖を石板にかざし、魔王軍の財務データを赤く染め上げた。
「魔王様。貴方が『相互理解』だと思って支払っている金は、聖騎士団の豪華な宴会費に消えています。……出撃しましょう。魔王軍CFOとしての初仕事は、この【不当利益】の重い是正です」
「お、今度は武器屋にガサ入れか? 腕が鳴るぜ」
ガントが清掃員姿から、重厚な盾を背負った警備部長の姿へと変貌する。
「いいえ。ただのガサ入れではありません。……今回は【在庫隠し】を暴き、市場価格を物理的に崩壊させます」
私は、魔王軍CFOとしての最初の「不承認印(リジェクト)」を、請求書に叩きつけた。
「適正価格は一本十万。……差額の九千万円、全額【支払い拒否(カット)】させていただきます」
◇
数時間後。王都、高級武器商社『ロイヤル・アームズ』。
「これはこれは、魔王軍の新しいお財布……おっと、CFO様。……本日の納品分、一億マナをお支払いいただけますかな?」
恰幅の良い武器商人の男が、揉み手をしながら私を迎え入れた。
背後には、護衛を装った聖騎士たちが、威圧するように並んでいる。
私は、彼らが差し出した納品書を一瞥もせず、懐から一枚の青い紙を取り出した。
「いいえ。支払いではありません。……本日は、御社の不当な価格操作に対する【立入検査】に参りました」
「……はぁ? ドクセン……なんだって?」
商人がポカンと口を開ける。
私は彼らの背後、重厚な魔法封印が施された『第3地下倉庫』を指差した。
「貴方がたが『希少品ゆえに高価である』と言い張っているこの剣。……その倉庫の中に、市場価値を維持するために出荷を制限している【隠し在庫】が、一万本ほど眠っていますね?」
商人の顔から、一気に脂汗が噴き出した。
「な、なぜそれを……! あそこは聖騎士団の『不可視の結界』で隠されて……!」
「アリスのクラッキングと、私の監査(ログ)を甘く見ないことです。……さあ、開けなさい」
私は一歩前に出る。
「市場(マーケット)を歪める不当な利益……今ここで、まとめて【損金】として処理して差し上げますよ」
(続く)
[System Notification] 次回予告
―――――――――――――――――――
商人「結界を破れるわけがない! ここは聖域だぞ!」
クリフ「おや、それは『隠し資産』の存在を認める発言ですね? ガント、物理的に監査(ブレイブ)してください」
次回、『聖剣のバーゲンセール、始まります』
価格崩壊のカウントダウンが、今、始まる!
元は空き部屋だったこの場所も、今や魔王城で最も恐れられる「聖域」となっていた。
私は、新調した魔導ロングコートの重厚な袖口を整え、デスクに投影された「キャッシュフロー表」を冷ややかに見つめていた。
「……魔王様。一つ、よろしいでしょうか」
「な、なんだねクリフCFO。改まって。……今、私はアリスと新しいハーブティーのテイスティングをしている最中なのだが」
玉座代わりのソファでくつろぐ魔王ゼノンの前には、高価そうな茶葉が並んでいる。
私は無言で、彼が今まさに承認印(ハンコ)を押そうとしていた書類を、横からひったくった。
「これですよ。聖騎士団御用達の商社『ロイヤル・アームズ』からの請求書。聖剣エクス・レプリカ100本で、一億マナ。……一本あたり百万マナですか」
「うむ。聖剣は貴重だからな。人間側との平和協定に基づき、余剰在庫を『適正価格』で譲ってもらっているのだよ。これもまた、相互理解の一環だ」
魔王は「良いことをしている」と言わんばかりの、慈愛に満ちた笑みを浮かべる。
だが、私の隣でゲーミングチェアをくるりと回転させ、黒タイツの脚を組み替えたアリスが、鼻で笑った。
「パパ、それ完全にカモられてるよ。……はい、これ見て」
アリスが銀髪を揺らし、宙に浮かせた石板(スレート)を指先で弾く。
[Code Audit] 製品原価・品質解析ログ
──────────────────────
Target: 聖剣『エクス・レプリカ』
Analyst: Alice_CTO
▼ 1. 原価構造 (Cost Structure)
[Sales Price ] ■■■■■■■■■■
(1,000,000 Mana)
↓
[Actual Cost] ■□□□□□□□□□
(50,000 Mana) ※原価率:5.0%
▼ 2. 品質判定 (Quality Check)
Material: 粗悪な鉄(Iron)
Effect: 光魔法コーティング(表面のみ)
Durability: 《Low (使い捨てレベル)》
──────────────────────
「げ、原価五万……!? それを百万で売っているというのか!?」
魔王が驚愕でティーカップを取り落とす。
私は銀縁眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、冷徹に告げた。
「ええ。聖騎士団が『これは聖なる武器である』とお墨付きを与え、不当に価格を吊り上げている……。いわゆる【価格カルテル】、および【独占禁止法違反】の疑いが濃厚です」
私は魔導計算杖を石板にかざし、魔王軍の財務データを赤く染め上げた。
「魔王様。貴方が『相互理解』だと思って支払っている金は、聖騎士団の豪華な宴会費に消えています。……出撃しましょう。魔王軍CFOとしての初仕事は、この【不当利益】の重い是正です」
「お、今度は武器屋にガサ入れか? 腕が鳴るぜ」
ガントが清掃員姿から、重厚な盾を背負った警備部長の姿へと変貌する。
「いいえ。ただのガサ入れではありません。……今回は【在庫隠し】を暴き、市場価格を物理的に崩壊させます」
私は、魔王軍CFOとしての最初の「不承認印(リジェクト)」を、請求書に叩きつけた。
「適正価格は一本十万。……差額の九千万円、全額【支払い拒否(カット)】させていただきます」
◇
数時間後。王都、高級武器商社『ロイヤル・アームズ』。
「これはこれは、魔王軍の新しいお財布……おっと、CFO様。……本日の納品分、一億マナをお支払いいただけますかな?」
恰幅の良い武器商人の男が、揉み手をしながら私を迎え入れた。
背後には、護衛を装った聖騎士たちが、威圧するように並んでいる。
私は、彼らが差し出した納品書を一瞥もせず、懐から一枚の青い紙を取り出した。
「いいえ。支払いではありません。……本日は、御社の不当な価格操作に対する【立入検査】に参りました」
「……はぁ? ドクセン……なんだって?」
商人がポカンと口を開ける。
私は彼らの背後、重厚な魔法封印が施された『第3地下倉庫』を指差した。
「貴方がたが『希少品ゆえに高価である』と言い張っているこの剣。……その倉庫の中に、市場価値を維持するために出荷を制限している【隠し在庫】が、一万本ほど眠っていますね?」
商人の顔から、一気に脂汗が噴き出した。
「な、なぜそれを……! あそこは聖騎士団の『不可視の結界』で隠されて……!」
「アリスのクラッキングと、私の監査(ログ)を甘く見ないことです。……さあ、開けなさい」
私は一歩前に出る。
「市場(マーケット)を歪める不当な利益……今ここで、まとめて【損金】として処理して差し上げますよ」
(続く)
[System Notification] 次回予告
―――――――――――――――――――
商人「結界を破れるわけがない! ここは聖域だぞ!」
クリフ「おや、それは『隠し資産』の存在を認める発言ですね? ガント、物理的に監査(ブレイブ)してください」
次回、『聖剣のバーゲンセール、始まります』
価格崩壊のカウントダウンが、今、始まる!
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